挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第五話「彼の地よりきたる」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

115/259

115/暴虐

 第一射の熱線を撒き散らし、最初の己の存在証明を終えた大巨神テンマは、元愛護大橋があった空間の北側に向かって歩き始めた。そのままだと、数歩で結界圏内から外に出てしまう。

「志麻、結界!」

 その言葉を残して、アスミは大巨神に向かって飛び立っていく。その残された最後の『ハニヤ』の力で、大巨神を葬る気なのだ。志麻はアスミを信じた。

(負けないで!)

 志麻には志麻にしかできないことが残されていた。場にはまだ、蝶女王が張っていた結界が残存していた。同系統の能力者である自分には、それを引き継ぐことができるはずだ。あの大巨神をS市中心部に行かせてはいけない。自分では美しいと思えない街明りだとしても、アスミが信じたその光景を守るんだ。

 両手を広げて結界にアクセスすると、蝶女王が構築していた結界の構造が伝わってきた。

(なんて豊穣な結界)

 しかし、その作り方が志麻に似てもいた。コンピュータ言語に例えるなら、より高度なプログラムではあるが、構成や文法の癖が志麻に似てる感じ。

 大巨神テンマが結界に触れるまで幾ばくか、という所で、志麻による蝶女王の結界の引き継ぎは完了した。強い意志で、大巨神を内側に閉じ込める。

 大巨神の指先が結界に触れると斥力が誘発され、大巨神の指は押し戻された。

 すると、豹変が訪れた。

「トウッキョーッッ! ニューッッヨォーックッ!」

 先ほどまでは雄弁に己の思想を演説していた大巨神テンマが、今度は子供のように叫びながら、ドンドン! とドアをノックするように、結界にその両拳を何度も叩きつけている。それは渇望の叫びであった。S市の駅近辺の中心部を破壊し、そのまま線路沿いに西へとこの国の首都まで駆け上がり、また破壊し尽くす。収奪し尽くす。その次は海外の豊かな都市だ。進行し、奪い、自身の糧にしてより強大になる、というあくなき願望の叫びであった。

 結界にすがり付く大巨神の背後に、アスミの大光球が放たれる。しかし何ということだろう、十メートル級の怪人だった時には少なくとも後退させたその連続した『ハニヤ』の光球を、今度は大巨神は避けようともしなかった。背中に着弾する連続光球は、今ではテンマにとって飛んできた石ころ程度であるかのよう。

 さらにまずいことに、アスミが放った光球は、ダメージは与えられなかったが、大巨神の意識を少しばかり結界の内部へと向けさせ、あることに気づかせてしまった。この自分を閉じ込めてる結界を現在制御してるのは、志麻だという点である。

 大巨神テンマは喜びに満ち溢れた顔で笑った。自分の願望へ向かって前進するのを、邪魔している者がいる。それを排除できる。そうすれば自分は先に進める。それは大いなる喜びであった。

 大巨神は飛んでる虫を叩き落とすような塩梅で空中のアスミを平手で吹き飛ばすと、ウキウキと既に片腕を失っているガンディーラに向かって歩き出した。

(ガンディーラさん!)

 せめて残された口からの放射火炎で迎え撃とうとした志麻だったが、火炎が口から出かけた所に、大巨神の拳の鉄槌が振り下ろされていた。空き缶にハンマーが振り下ろされたように、ガンディーラの上体はひしゃげてしまった。吐きかけた火炎は熱となり周囲に発散され、肩口に乗っていた志麻は熱波と衝撃の中、落下していく。

(ゴメンね)

 落ちていく志麻は、暴虐的な存在に引きちぎられ、そして捨てられた百合のようだった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ