挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第五話「彼の地よりきたる」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

111/259

111/ハンド

 陸奥を見送ったジョーの元に、地面を揺らす足音が近づいてくる。

(まだいたのか)

 方々の草が燃えている河川敷を歩いてきたのは、一体の三メートル級怪人であった。

 この怪人もまた、体の隅々に火傷を負っている。ジョーは正直、先ほど半身を焼かれて倒れ伏していた怪人を見てから、彼らに高ぶるような敵意は感じられなくなっていた。元はこの街で上位十二人に入る男達である。強い人間が弱い人間を傷つけたり、弱い人間から奪ったり。年齢のわりにはそういうことも見てきたジョーは、その強さに反発を感じないでもなかった。しかし、そんな彼らも今では焼かれ、より強い人間に色々なものを奪われている。ジョーはとても虚無的な気持ちになっていた。

(だが向かってくるなら、やるしかない)

 蝶女王の能力による束縛は強いらしい。他の三、四メートル級怪人はことごとく倒され、自身もその身が傷つきながらも、怪人はジョーを捻じ伏せんと、両手を広げて近づいてくる。

「おりゃっ」

 せめて一撃でノックダウンしてやると、ジョーは陸奥が置いて行った副砲の一球を、もう要領を得たとばかりに蹴り込んだ。

 しかし、顔面に向かったそのシュートを怪人は片腕でガードして弾き返す。今までのヤツよりも、わずかに動きが機敏である。

 ジョーはバウンドして跳ね上がった光球を、空中で無造作に右手でキャッチした。

(サッカーだったらハンドだが。これは戦いだからな!)

 そのまま、怪人の本体に手が届く距離まで踏み込み、むんずと光球を掴んだまま、掌底で押し込むように腹部にめり込ませる。

 副砲は周囲に光をまき散らしながら怪人にダメージを与え続けるが、怪人の方も引かない。それでも前進してジョーを組み伏せんとする怪人と、このボディー攻撃で決めてしまおうというジョーとの、力の勝負になっていた。

(倒れろ! 倒れろ!)

 念じながら、副砲を押しこむ右手に更なる力を籠めようとした時である。フっと相手の抵抗がなくなり、ジョーは勢いがついたまま前のめりに倒れそうになった。

 気が付けば、怪人の体から、重さが消えている。今まで岩に向かって押していたのが、急に羽でも押していたかのよう。ふわりと、そしてゆっくりと、怪人は倒れてしまった。

 ジョーは自分が押し勝ったのかと思いたい所だったが、何か様子がおかしい。電池切れ、というか、今まで怪人を動かしていたエネルギーのようなものが、急になくなってしまったような。

 そこでハっと気付く。倒れている怪人の胸から、何か光の糸のようなものが、いずこかへ向かって吸い出されている。

「おい。大丈夫か?」

 先ほどまで撃ち倒そうとしておいて何だが、何かこの怪人にとって、否、怪人の元となっているこの男にとって大事な何かが吸い出されているのを察知して、思わず声をかけた。

 吸い出されている光の糸が向かう先に目を向けると、それは愛護大橋があった空間の端まで続いており、そこには大怪人テンマの背中があった。大怪人テンマはアスミの光球に対して耐えている。しかし、体の前面で光球を抱え込んでいる一方で、背中には何処からか伸びてきている光の糸が集まって来ていて、羽のような形容に収束している。

 最初に気づいたのはジョーであった。巨大蝶が撃ち落され、大怪人テンマの肩に乗り移って以来、蝶女王は「何か」を行っている。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ