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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第一話「思いがけない助力」

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10/この国の

 午後の講習も数刻前に終わり。学内には夕日が射し込む時間になっていた。

 ここも、学校内の一人でいて心地よいスポットの一つ。グラウンドのネット裏に位置するベンチである。少し前まで部活中の野球部の掛け声が聞こえていたが、それももう静かになっている。ジョーは何だか家に帰る気分にもなれなくて、ボーっとしている。

 少し、アスミとの思い出を手繰り寄せていた。例えば、街の図書館で一緒に借りた本を読んだこと。一冊の絵本を、二人で覗き込むように読んでいた。幼い時間だ。

 本に描かれている空想は、ドキドキとワクワクに満ちていた。そんな夢物語に、胸をときめかせながら、ジョーとアスミは浸っていた。

 ひるがえって今、現実のここにいるジョーはどうだろう。

 心に帳が落ちていた。

 勝利者、英雄、リーダー、お金持ち、アイドル、成功者、何でもいいが、例えばそんな強い人たちが時折見せるネガティブさは世界にとっては暗く伝播する出来事で、大事(おおごと)なのかもしれない。でも今のジョーには、自分の心の奥にずっと美しいままで揺らめいていた灯のような存在(ヒト)が、久しぶりに言葉を交わしたら、自分に価値がないなんて言っていた。そのことの方が、とても悲しく感じられた。

 今日の講習が終わってからこの時間まで、ずっとスマートフォンで聴いていた『亡き王女のためのパヴァーヌ』の旋律が、またリピートされてイヤフォンから伝わってくる。

 夕日が、グラウンドを朱に染めていく。

 子供の頃に夢に見た近未来とは少し違う街と、国と、そこに生きる人々。

 二十年に渡る不況。疲れがちな表情。頑張るためのドリンク剤。大人たちはみんな、苦しそう。

 でも子供だって苦しいことが多い。空瀬アスミもきっと、そんな厳しい世界に投げ出されて悩める子供の一人なんだ。十五歳という年齢は、時代が時代なら元服(げんぷく)していたわけで、子供と呼称できるかは微妙かもしれないけれど。苦しくて辛いのなんて当たり前な世界。だからしょうがないのか。でもジョーの胸の内に誤魔化せないざわつきが残る。なんであいつは、自分を欠陥商品だなんて言うんだ。
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