無力と死
羊と狼 05「無力と死」
狼達はグルリと豪快な熊と探究心の強い羊を囲みます。
「かかれぇぇぇーーー!!」
その声とほぼ同時に狼達はいっせいに飛びかかります。
豪快な熊は大きい声を上げ、大きな右手を一振り、大きな左手を一振りと狼達を撃退します。
豪快な熊の攻撃は、一振りで2〜3匹をいっぺんに吹き飛ばす威力で、次々と飛びかかってくる狼達をたおしていきます。
しかしあまりにも多勢に無勢、いつしか腹を噛まれ、足を噛まれはじめました。
それでも豪快な熊は一歩もその場から動かず、次々と迫りくる狼達をなぎ倒していくのです。
「熊さん! 逃げよう、このままじゃ熊さんがやられちゃうよ!」
「でぇーじょーぶだ! おめーはそこを絶対に動くでねーど!」
「それじゃあ熊さんが・・・」
その時探究心の強い羊は、ナゼ豪快な熊が一歩も動かないのか、ナゼ自分の前にずっと立ち塞がっているのかに気づいたのです。
そのことに気づくと同時に自分の力が無力なことにも気づかされたのです。
「熊さん、熊さん、熊さん・・・・。」
「大丈夫! もう少しだべ!」
探究心の強い羊は、ただ泣くことしかできません。
それでも狼の群れは、豪快な熊に対する攻撃をやめようとはしません。
しかしあまりにも強い豪快な熊に恐怖を感じたのか、狼のリーダーは後ろへ下がりました。
「おい! 一旦引き上げるぞ!」
狼のリーダーがそう言うと、他の狼達は今度もいっせいに引き上げました。
「やったよ、熊さんやったよ!」
「ああ・・・やった・・・べか・・・」
「ドスン!」
大きな音と一緒に豪快な熊は前のめりに倒れました。
よく見ると豪快な熊の体は噛み傷だらけで、噛まれていない場所を探せないほどです。
「け、怪我は・・・ねぇだ・・か?」
「ないよ! 僕の心配より自分の心配しろよ!」
探究心の強い羊は豪快な熊に抱きつき、泣き叫びながら必死で傷を舐めました。
「なんで、なんで僕なんかのためにここまですんだよぉ」
「言っただべ・・おめーさ気にいったって・・・」
「だからって・・・」
「おめーの目さ・・・いい目してるだよ・・・、その目とその気持ちさ・・忘れ・・んなよ・・・」
豪快な熊はそのまま目を閉じ、二度と目を覚ますことはありませんでした。
「熊さん! だめだよ目を閉じたら!」
探究心の強い羊は何度も何度も豪快な熊の体をゆすり、いつまでも豪快な熊の傷を舐めます。
「残念ですが、その熊はもう死んでますよ」
探究心の強い羊の後ろから声がしました。
振り向くとそこには崖の上にいた真っ白い狼が一匹で立っていました。
「また彼らが来ます、早くここから逃げないと・・・」
つづく・・・ |