再開を
羊と狼 17「再会を」
時間で計ればほんの4〜5分ほど探求心の強い羊はうつむいていました、しかしその間の沈黙は、お互いには何時間にも感じられました、そして探求心の強い羊は顔を上げ、何かを決意したように言います。
「わかったよ・・・、君の言う通りかもしれない・・・」
探求心の強い羊は沈黙に終止符を打つように顔を上げ言いました。
「ごめんなさい・・・」
今度は白い狼がうつむきました、うつむいて白い狼は謝ります。
一度謝ると、今まで我慢していた体の中の波を抑えることができなくなりました、抑えていた波は津波となって押し寄せ、大粒の涙となって白い狼の目から溢れ出します。
「ごめんなさい・・・ほんとに、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
最後のごめんなさいは、声がかすんで聞き取れないほどでした。
白い狼はその言葉以外にかける言葉が見つからず、何度も何度も探求心の強い羊に謝りました。
その謝った数に比例するかのように大粒の涙も止まりません。
そんな白い狼を見ていられない探求心の強い羊は、笑顔を作りました。
「君は何も悪くはないよ、むしろスゴイと思う、他の狼達の事を考えてこの森に残る事を選んだんだ、それは誰にでも出来る事じゃない、悪いのは僕の方さ、君の立場や事情を理解せずに安易に誘ったんだから・・・」
「そんなことないわ」と言いたかったのでしょうが、白い狼にはそれを声として出すことは出来ませんでした、しかし探求心の強い羊には、白い狼が何を言おうとしたのかハッキリと伝わっていました。
探求心の強い羊は笑顔で何度かうなずき、この森の出口に通じている洞窟の入り口へと歩き始めました。
探求心の強い羊の後姿に向かって、白い狼は一生懸命涙をこらえ、震える声でさよならを言います。
「あ、ありがとう、少しの間だったけどとても楽しくて、とても幸せだったわ・・・、さようなら・・・」
その言葉を聞いた探求心の強い羊は、立ち止まり振り向きました。
「さようなら・・・」
さようならを言った後に、探求心の強い羊はうつむき、何か迷っているようです。
白い狼は何も言わず、探求心の強い羊の次の言葉を待ちました。
「また・・・、また会おう!」
そう言い終えた探求心の強い羊は、洞窟の入り口へと飛び込むように入って行きました。
「また会おう」、この言葉が二匹にとって決して叶わないであろう言葉というのはお互いよくわかっていました、しかし別れ際に探求心の強い羊はあえてこの言葉を白い狼に残して行ったのです。
白い狼にその言葉は、「いつか会える日が来る」と信じさせてくれるような言葉でした。
白い狼は、探求心の強い羊の姿が見えなくなってもしばらくそこから動こうとはしません。
それは「もしかしたら探求心の強い羊は帰ってきてくれるかも」っと言った「未練」ではなく、ただ探求心の強い羊が、黒い森を出るまで見送っていたかったという「感謝」だったのでしょう。
その頃探求心の強い羊は、ひたすら走っていました。
一度も後ろを振り返る事はせず、ただ出口に向かって走っています。
やがて洞窟の中に月明かりが差し込んできました、いよいよ黒い森の出口です。
つづく・・・ |