理由
羊と狼 16「理由」
白い狼は一度大きなため息をします、そしてゆっくりと喋り始めました。
「もう見たでしょうけど正直に全部言うわ・・・、じつは新しい神の使いはすでに生まれているの、その時に古い神の使いは新しい神の使いに少しの生き血を与えるの、そうすることによって血を受け継いでるのよ、私もそうしてきたわ」
「そっそれは・・・いつまで続くんだい?」
探求心の強い羊は重い声で白い狼に聞きました。
「新しい神の使いが生まれてから二十日間よ、もちろん満月の夜を除いてね」
「昨日の夜で何日目だい?」
「十・・・六日目・・・」
その後お互い何も言わず座り込み、キラキラと輝いている湖を眺めていました。
白い狼はその先を伝えるのが恐ろしく、探求心の強い羊はその先を聞くのが怖かったのでしょう。
しかし探求心の強い羊は立ち上がり、白い狼の方を向き言いました。
「その先は・・・、その先の君の未来はなんだい? ないんだろ?だからこそ僕と一緒に未来を考えようよ!」
「・・・・」
白い狼は沈黙したままです。
誘えばすぐに首を縦に振ると思い込んでいた探求心の強い羊は、なぜ白い狼が「うん」と言ってくれないのか、どんな理由で首を縦に振らないのか不思議でたまりません。
「なぜだい? なぜ僕と一緒に外へ出てくれないんだい!?」
探求心の強い羊は、迫り来る時間と、思いもしなかった白い狼の態度にイライラしてきました。
「僕とじゃ嫌かい? それとも外に出る事が不安とかかい?」
「そうじゃないの、そうじゃなくって・・・」
探求心の強い羊は大きなため息をつき、黙って白い狼の返答を待つことにしました。
「これまで彼等は、神の使いという存在を自分の上に置いてやってきたの、最初はその存在の意味がわからなかったわ、ううん今もハッキリとはわからい、だけど少しづつわかるようになったの、もちろん他の狼達と同じように神の存在を信じているのではないわ、彼らは私と言う存在を上に置いて、その下の者達は平和に過ごせているのよ」
「言ってる意味がよくわからないよ・・・」
「ごめんなさい、私も言葉ではうまく言えないの・・・、でもこれだけは言える、もし私がこの森から出れば、必ず狼達はなんらかの争いや、騒動が起きるわ」
「そんなのこと・・・」
「あるのよ! 私にはわかるの」
探求心の強い羊の言葉を止めて白い狼は強く言いました。
探求心の強い羊はガックリとその場に座り込みます。
それを見た白い狼は、探求心の強い羊を抱きしめるように首を絡ませさらに続けます。
「私はあなたとこの森を出たくないのではないの、むしろ今すぐあなたと外の世界を見たいわ・・・、だけど争いが起きて、一番傷つくのは何の罪も無い子供やお年寄りなの、私にはそれを置いて外には行けない、ごめんなさい・・・わかって・・・」
「・・・・」
白い狼の言葉に何も言えない探求心の強い羊は、黙りこんでしまいます。
白い狼は落ち込んでいる探求心の強い羊にやさしいキスをし、精一杯の笑顔をつくり言います。
「あなたはこんな場所で止まらないで、あなたのするべき事はここで私と一緒に死ぬことじゃないハズよ」
探求心の強い羊はうつむいたままでした。
つづく・・・ |