決意
羊と狼 15「決意」
探究心の強い羊は、洞窟の外に出て真っ暗になったのを確認した後、ぐっすりと眠っている白い狼の側へ戻ります。
戻ると白い狼はゆっくりと目を開きます。
「おはよう・・・、おはようてのは変かな? 外はもう真っ暗だよ」
「ずっと起きてたの?」
「いや少し寝たよ、なんだかすぐに起きちゃったけどね」
「私はなんだかいつもよりよく眠れたわ」
「うん、なんだかよく眠ってたみたいだね」
「ヤダ、見てたの?」
「いつもは僕が先に寝て、君が先に起きてるからね」
「そんなこと今までなかったからなんだかテレくさいわ」
「フフフ・・・、そろそろ行くかい?」
その後二匹は外へと出ました。
外には白い狼が言っていた通り、狼の姿はなくとても静かでした。
雲一つない夜空には真ん丸い月が森を照らし、とても美しく少し寂しい雰囲気を作りだしています。
白い狼の案内で二匹は今まで行ったことのない場所に足を運びました。
黒い森と恐れられているこの森は、他の動物はあまり入ろうとはしません、しかしそれがこの森の美しさを維持している大きな理由なのだと、今更になって探求心の強い羊は気づくのです。
色々な場所へと散歩をして最後にはいつものように白の湖へとたどり着きました。
「今日は色々な場所をあなたに見せたけど、やっぱり私はこの場所が一番のお気に入りだわ、特に今日みたいな満月の夜にはさらに綺麗な姿になるしね」
白い狼の言う通り、今夜の白の湖はいつも以上に美しい姿に変わっています、月の光が湖をキラキラと輝かせるばかりではなく、湖に反射した光が辺りの草や木までもをいつも以上に輝かせているのです。
二匹は少しの間、その美しい静けさの中で寄り添って座っていました。
そして探求心の強い羊が静かな声で白い狼に言います。
「あのね、今日君を散歩に誘ったのには理由があるんだ・・・」
それを聞いた白い狼は、探求心の強い羊に寄り添ったまま言います。
「わかってる、あなた今夜この森から出るつもりなんでしょう?」
「気づいてたのかい?」
「うん、なんとなくね・・・、いいわ、私はあなたにこの森でずっといて欲しいけど、でも無理なのもわかってる」
「君は一つ勘違いしてるよ」
「えっ!?」
白い狼は寄り添っていた体を起こし、探求心の強い羊の方に体ごと向けました。
「確かに今夜この森を出るつもりだよ、だけどそれは僕だけじゃない、君も僕と一緒に出るんだよ」
「なっ何を言ってるの? そんなこと・・・」
白い狼が「無理」と言おうとするのを遮って、探求心の強い羊は言います。
「無理じゃないさ、他の狼達は今夜は出てこない、出口もハッキリわかってる、明日の朝までにできるだけ遠くに行くんだ、そのために昼間眠っておいたんだよ」
白い狼は探求心の強い羊のその言葉を聞き、一度この森の出口がある洞窟で、探求心の強い羊が「僕は君とこの先も一緒に居たい」と言った時の事を思い出しました。
その言葉の意味を、白い狼はこの時初めて気づいたのです。
白い狼はうつむき無言になりました、しかし探求心の強い羊は構わず続けます。
「君は僕とこの先もずっと一緒に居たいと言ってくれたね、それは僕も同じだ、だけどそのためにはこの森を出る必要がある、ここにいても君は身を滅ぼすだけ、僕達に未来はないんだ」
「・・・・」
白い狼は何も言えずペタリと座り込みました。
「知ってるんだ・・・、君が毎晩僕が眠った後にどこかに行っているのを・・・」
ドキッとした白い狼は素早く顔を上げ、探求心の強い羊の方を見ました。
「知ってたの・・・」
「悪いとは思ったけど、一度後をつけさせてもらったんだ」
「そう・・・知ってたんだ・・・」
ガックリとなった白い狼はまたもうつむいてしまいました。
つづく・・・ |