満月
羊と狼 14「満月」
それからの探求心の強い羊は、この森を出る方法を聞いたのにも関わらず、森を出る素振りもみせずに、いつものように白い狼との生活を続けました。
白い狼はあのときの探求心の強い羊の言葉の意味と、なぜこの森を出る道を聞いてきたのかわからないままでした。
今日も二匹は白い湖へと散歩へ出かけ、湖の辺でお喋りをしています。
「そういえば今日は満月の日だよね?」
「そうよ、私達狼にとって良くない日よ」
「えっ!? そうなの、なぜだい?」
「他の森にいる狼達はどう過ごしているのか知らないけど、私達狼は満月の夜になると、血が騒ぎ出すの」
「血が騒ぐ・・・?」
「そう、そうなるとちょっとした事で殺し合いをしてしまう恐れがあるの、だからこの森にいる狼達は満月の夜になるとそれぞれの家から一歩も出ないようにするのよ」
「そうなんだ・・・、だったらなおさら今夜がうってつけだな」
探求心の強い羊がそうボソリと白い狼に聞こえないほどの声で言いました。
「ん、何か言った?」
「いいや、それよりもさこの森に来てから今まで夜に歩いた事ってないでしょ? 他の狼が出てこないんなら散歩でもしない?」
「・・・そうね、いつも他の狼達に会わないように白の湖ばかりだしね、たまにはいいかも」
「君は、満月の夜に・・・その・・・血が騒いだりは・・・」
探求心の強い羊が、言いにくそうに聞こうとすると白い狼は、探求心の強い羊を気遣い、全部言わせることはしませんでした。
「私も他の狼達と同じよ・・・、でも安心して、あなたを食べたりしないわ」
クスクスと笑いながら白い狼はそう言います。
探求心の強い羊は、その冗談とは取れない冗談に苦笑いで応えることしかできません。
探求心の強い羊は気を取り直、白い狼に言います。
「じゃあ、食事が終わってから少し寝ておこうか」
探求心の強い羊がそう言うと、白い狼は笑顔で大きくうなずきました。
「ただ夜に散歩するだけなのに、なんだかとても楽しみだわ」
「僕も同じだよ」
「あなたといると、私にはこの森が違って見えてくる、今までこの森をどうしても好きにはなれなかったけど、あなたとならどこだって楽しく感じれる気がする」
「それも同じさ」
その探求心の強い羊の返事を聞いて安心したのか、白い狼は初めて探求心の強い羊よりも先に眠りにつきました。
グッスリと眠っている白い狼を見ながら探求心の強い羊は、そっと白い狼に言います。
「大丈夫、これからずっと一緒さ、ずっとね・・・」
そう言い終えた後、探究心の強い羊も眠りにつきました。
つづく・・・ |