あるひとつの時
羊と狼 12「ある一つの時」
それを聞いた白い狼は、探求心の強い羊の側へ歩み寄りました。
「それは今はわからないわ、でもあなたが生きなければならない理由はきっとわかる日が来るハズよ」
白い狼は探求心の強い羊の目から溢れ出ている涙をペロペロと舐めて拭いました。
「僕は君を助けたいんだ、でも僕には知恵も力もない・・・、それが悔しいよ」
「でもあなたには優しさがあるわ、その涙が何よりの証拠よ」
「それだけじゃダメなんだ・・・、それだけじゃ誰も守ることができない」
白い狼は湖の側へと歩み寄り、湖に写っている自分を見ながらさらに続けます。
「私は歴代の神の使いの中できっと一番幸せだと思うわ、だってあなたのように涙を流しながら悔やんでくれる存在なんて他の神の使い達には居なかったと思うから」
そう言うと白い狼は、探求心の強い羊の方をみてニッコリと笑顔を見せました。
その白い狼の姿は、湖に反射した光が白い狼の白さをより際立たせ、神の使いなどではなく、神そのもののように探求心の強い羊の目には写りました。
その後二匹は、神の使いのことについて一切触れようとはしませんでした。
どれくらい二匹は湖の側で寄り添いながら話したでしょう、辺りはすっかり暗くなっていました、それに気がついたのは探求心の強い羊のお腹です。
グウグウと鳴るお腹を満たすため、二匹は白い狼の洞窟へと帰り、それぞれの食事を終えました。
その次の日から二匹は毎日生活を共にします、いつか別れの時が来る事を知りな
がら、いやそれを知っているからこそ二匹はひと時も離れようとはしませんでした、ある一つの時を除いて・・・。
それは毎日探求心の強い羊が眠りにつくと、白い狼は洞窟を出て何処かへ行っているのです。
探求心の強い羊がそれを見つけたのは、二匹が一緒に生活を始めてニ週間後のことでした。
その晩探求心の強い羊は、その事を白い狼に聞かず、こっそり後をついて行くことにしました。
次の日、探求心の強い羊はその事を白い狼に問い詰めることはせず、いつもと同じように過ごします。
いつものように昼食を終えた二匹は、白の湖へと散歩に出かけました。
そこで探求心の強い羊は、いつものように過ごしながらも白い狼にある質問をしました。
「あのね、聞きたい事があるんだ・・・」
「なぁに?」
「この森を出る道を教えてくれるかい?」
戸惑うことなく探究心の強い羊は聞きました、白い狼はその突然のことに戸惑いながら答えます。
「えっ!? うん・・・いいよ、案内してあげる」
「いや、今すぐに出て行くんじゃないんだ、ただ知っておきたくて、それだけなんだけどいい?」
白い狼は探究心の強い羊がなぜ急にここを出る方法を聞いてきたのかわかりませんでした。
つづく・・・ |