運命
羊と狼 11「運命」
白い狼は湖の前までゆっくりと歩を進め水の中を覗き込みながら続けます。
「この森で「白」は神の色とされているの、だからこの湖は神の領域なのよ」
「じゃあ君は・・・」
「そう、私は他の狼達から「神の使い」とされてるの」
「へぇ、そりゃあスゴイ! だからあの時他の狼達は頭を下げてたんだ」
「別にスゴクなんかないわ・・・」
白い狼はうつむき、寂しそうにそう言いました、そしてうつむいたままさらに話
を続けます。
「私達の群れから何年かに一度私のような真っ白い狼が生まれるの、そしてその
狼は神の使いとして崇められて育てられるわ、食べ物も住む場所も他の狼達から
与えられてね」
探究心の強い羊は、白い狼のその悲しい表情を見て何か言わなければならないと
思うのですが、言葉が見つからずそのまま白い狼の話を聞くことしかできません
でした。
「おかげで私はこんなに大きくなっているのに、獲物一匹捕らえることができな
いのよ、笑えるでしょ」
「そんなことないよ」
白い狼は、探究心の強い羊の言葉に構わずまだ続けます。
「心おきなく話せる友達もいないわ、そりゃそうよね、なんたって神の使いなん
ですもの」
「もういいよ、わかったから」
「ううん、まだあるわ、次に神の使いが生まれた時、それまでいた神の使いはど
うなると思う?」
「えっ・・・?」
「新しい神の使いの生け贄となるの、それを彼らは「転生」と言うらしいけどね」
探究心の強い羊は、白い狼が何を言っているのか理解できません。
「それは・・・死ぬってことかい?」
「結局の所そう言うことね」
「そんなバカな!! そんな勝手な事があってたまるか!!」
「仕方ないの、それが私の運命なのよ、それでこの群れは成り立っているの!」
探究心の強い羊の頭の中に長の言葉が浮かびました。
「わし達は何十年間ずっとそうやって生きてきたんじゃよ、それを一匹の勝手な
考えによって潰さすわけにはいかんのじゃ」
「無力」・・・、その言葉がまたも探究心の強い羊の体を包みます。
この不幸を解決する知恵も、狼達をねじ伏せる力も探究心の強い羊にはありませ
ん。
白い狼は、探究心の強い羊を見て言います。
「泣かないで」
「なっ泣いてなんか・・・」
いつの間にか探究心の強い羊の目から、大粒の涙が流れていました。
「熊さんの事を思い出しているのね、そんなに自分を責めないで」
「僕は・・・僕はあまりにも無力だ、熊さんも君も僕にはどうする事もできない」
「私は神の使いとして死んでいく、熊さんはあなたを守って死ぬ、それが運命な
のよ」
探究心の強い羊の涙は、止まるどころかさらに溢れだします。
震える声を精一杯殺しながら喋り始めました。
「それじゃあ、僕は何のために生かされたんだ・・・熊さんを犠牲にまでして」
つづく・・・ |