BUMP OF CHICKENメドレー〜タンポポ編〜(6/6)縦書き表示RDF


BUMP OF CHICKENメドレー〜タンポポ編〜
作:タンポポ



最終話〜Ever lasting lie〜


ーー砂の上で錆びたシャベルを持って、まるで戦うように夢を掘る人。

いつしか地元の人からそう呼ばれるようになった。


暑い日も、寒い日も、毎日休む事なく、何かに取り付かれたかのように、必死で…必死で掘り続ける。


…え? なぜ掘ってるかって…?









〜ever lasting lie〜






     ***

「兄さん、寄ってくかい?この薬…初めは安くしとくよ?」

『人を探しているだけだ…』

全く…ここは腐っている。

人と人が欲を出し合い

…と言っても売る側が有利になっているんだが。

俺は今、裏のルートでしか通じない闇取引会場〈REM〉に来ていた。

目当ては金でも物でもない。

人を…愛している人を探している。

昨日、ようやくこの場所に連れて来られていたと聞き付けやってきたのだ。

「さぁ、本日のメインイベント☆人間オークションが始まるよ♪急いだ急いだぁ〜!」

ドスの聞いた声で呼び込みをしているガラの悪い男。

俺はここぞとばかりにそのオークション会場に足を踏み入れた。


「ようこそいらっしゃい。さぁ、少々値は張るが、こいつはかなりの上玉だ☆

『生まれた時から天涯孤独!毎晩淋しいの…』買っちまえば夜な夜なウハウハだ♪」

まるで園児が見るような戦体ヒーローのナレーションみたいな声で場を盛り上げる司会者。

そして両手に手錠をかけられ、体格の良いガードマンに連れてこられる女の子。

『ゆ…雪!!』

しかし、俺の声は会場の歓喜とも言える野次に掻き消された。


あの売り物にされている子こそ、目的の人物。

借金に追われる身で金融屋のヤバイ連中に拉致されてしまった。

俺が今あの子を買い取る!
それが俺が考えた最善の手段だった。
そしてまた幸せな日々を暮らす。

しかし、その考えは法外な値段を目の前に簡単に崩れ去った。

話を聞けば、何度もオークションをスルーされていた。

…と言うのも、雪の借金が多すぎて値段が高すぎ、買い取り手がなかなか見つからないのだ。

ここ数カ月は売られないだろう。

俺は会場を飛び出し、すぐさま金融屋に金を借りに行った。

「お客様、ご職業の方は?」

『絵かきの藤本って知らないか?』

「え!?あの有名な…?しかし、今は絵を描くのは辞めたと聞きましたが…?」

『辞めたよ。仕事は後からまた始めるつもりだ』


「残念ですが、そのような不確定な収入の方にはこちらが精一杯でございます」

結局借りられたのはたった三万円…。

その後も片っ端の金融屋を駆けずり回った。

しかし、どこも同じ様な事を言われ、今ある現金は五十二万円…。

まだまだ足りないどころじゃない。

次に知り合いの全てに当たった…

が、そう簡単に貸してくれるわけがなかった。

『なぁ、金が必要なんだ!十万…いや、五万でいい!必ず返す!お願いだ!!』

「無理だ。それに…みんなからそんな金を借りたってお前の借金が増えるだけだぞ?」

『頼む…!貸してくれ…』

「ってかよぉ、タンポポ丘を売った金はどうした?」

この絵を売って雪が助かるなら、それが最速の策だろう。

しかし、城も飛び出したからには、あっさりと乗っとられ、今となっては帰る家もない風来坊。

さらに追い打ちをかけるように以前タンポポ丘が飾られていたスペースにダミーのタンポポ丘が飾られていた。

俺の財産を使い、鑑定氏の口を封じたのだろう。

もし俺がこの絵が本物だと持ち掛けても、そんなのは権力で押さえ込まれるのがオチだろう。

『えっと…その…』

「そんなに金が欲しいなら、ーー石油でも掘るしかないんじゃないの?」

ガハハと笑う知り合い。

俺はそんなーー皮肉を本気にして飛び出した。

(…そうか、石油か)

俺はシャベルを持ち出して海に来た。

     ****

そう…そんな事があったんだったな…。

でも…こうして毎日掘っているが、ーー掘り出したのは長い年月。

何も出てきやしなかった。

『ゲンさんは…ーー人の命を動かして大層楽しいだろうな…。笑えよ、見てるんだろ?この俺がジタバタもがいているのを…』

俺はそう呟いた。俺には力がなかった。

ゲンさんには人を支配する力があった。

ただ…それだけの事だ…。

悔しい話じゃないか…。

やっぱり雪を救いたい!

俺は再び闇商売の場所へ足を踏み入れた。

あれから長い月日が経っていたが、まだ売られていない事を信じていた。

『おい!この前オークションにかけられていた子はどうした!?』

俺は以前司会者を担当していた男を見つけると怒鳴るように問い掛けた。

「あんた、いきなり何なんだよ!あの子ならもう売れちまったよ!」






〜ドクン〜



…え?



売れた…?



心臓がうるさい。

「ありゃきっと大金持ちだぜ?確か…石油王とか言ってたな。

まぁ、これであの譲ちゃんの借金も返ってきたし…」



石油王…?



嘘だろ…?






〜ガッ〜

俺は司会者の胸倉をつかんだ。

『そいつらはどこ行った?』

「離せよ!タダで教えるわけねぇだろ」

こいつら…トコトン腐ってやがる…。

『これでどうだ!』

俺は前に金融屋から借りた金を全部払った。

「おぉ!こんなに☆

あいつらはこの町に住んでるぜ。住所は…」

俺は司会者から住所を聞き出すと勢いよく飛び出した。



     ***


俺は住所通りの場所へ来た。ここでは、男は金を、女は体を…。

死んだ街…そう表現するのが正しいだろう。

本当にこんな所に雪は連れて来られたのだろうか。

「ほら、こっちだ」

人気の少ない裏道で、男が女をホテルに連れ込もうとしていた。

ーー死んだ街で夜のドレスまとって、作り話のような愛を売らされる人。

『…ゆ、雪!!』

そこで見たものは…雪がドレスを着て、裕福な格好をした男といっしょにいた。

「なんだぁ〜?その目は?高い金払ったんだからよぉ〜。いい加減あきらめろな。誰も助けになんか来ねぇんだからよ!」

裕福な格好の男が脅し気味で彼女に言い放った。

でも雪は、男のーー胸に腕に、身を任せても心はただ一人を待つ。

そんな気…雪からのSOS。助けを求めている。

俺を頼っている。今は俺しかいない。

それはただの勘違いだったのかもしれないが、気がつくと俺の体が先に動いていた。

『…おい』

俺は男と彼女の前に立ちはだかった。

今の俺にこんな事をする権利がないのは分かっている。

でもジッとしていられず行動に移っていた。

『彼女は俺の物だ…!手を出すな』

俺は男を睨み付けた。

「はぁ〜?いきなりなんだお前は!
こいつは俺が買ったんだ
だから俺のだ」

彼女についた値段をこいつが買った。

俺は買えなかった。

だから彼女はこいつの物だ。

分かってんだよ…そんな事ぐらい…!!

『うるせぇ…!』

俺は殴りかかろうとした。

「待って!」

彼女の声が俺の拳を止めた。

「ーー二人は大丈夫。明日を信じて待っていて」

そう言うと彼女は男と共にホテルへと入って行ってしまった。

男は俺を睨み付け舌打ちをしていたから、相当頭にきてたのだろう。

しかし俺は何と情けない。暴力で解決できると思っていたのか?

カーッと熱くなり、つい情だけで動いちまったようだ。

夜風に当たり、頭を冷やす。

『明日を信じて待っていろ…だと?』

相変わらず無茶しやがって。死んだ魚の目みたいに光を失った瞳でよく言うぜ。

そんな言葉ーー信じられる要素なんてドコにあるの? って、思いながらも、その言葉をおまじないのように呟き続けた長い年月。


あの優しい嘘を想って。

ーー運命より、互いを信じていた。

金があれば救える…。

今日も俺は石油を掘り当てる為に海に来ている。



長〜い月日が経った…。

身が凍るような日も

身が焼かれそうな日も

もう何回迎えたっけかな?

ーーーーーーー。


ーーとある街の小さな教会で優しい長生きおばあさんが眠りについた。

「雪ばぁちゃん!…うわぁーん!」

「雪や…長生きしたのう…藤本は今日来ないのか?」

「あぁ、あいつはまだ掘り続けてるよ」

「馬鹿な男じゃのう。雪の最期の笑顔くらい、見ておけば良いものを…」


「そうじゃな…。雪はーーろくに動けなくってからも毎朝何かを呟いて微笑んだ。
きっと藤本を待っていたんじゃろ…」


ーーーーーーー。


ヨボヨボになった俺の手には折れたシャベルが握られている。

そして今日も穴を掘り続ける。






…あれ?









なんで俺は穴を掘っていたんだっけ…?

この長い年月…大事な何かを待たせていたような…。

いや、そんな事よりも早く掘らなきゃ…掘らなきゃ…掘らなきゃ…。


完結しました。なんか最後微妙な終わり方ですいません。 これは私なりの解釈なので、本当の意味とは異なる部分もあると思いますが、大目に見てやって下さい。 BUMPが大好きで、歌詞を小説にできそうかな…と思ってこの小説を書き始めました。 短編ではなく連載をしたいと思い、歌詞中にタンポポが出てくる唄を繋げてみたんですが、いかがでしたでしょうか? 「太陽」と「Ever lasting lie」には出てきませんが、私自身、この歌詞が気に入っているので書かせていただきました。 長くなりましたが、今までお付き合いいただき、感謝してます。ありがとうございました!













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