BUMP OF CHICKENメドレー〜タンポポ編〜(5/6)縦書き表示RDF


今回は雪視点です。
BUMP OF CHICKENメドレー〜タンポポ編〜
作:タンポポ



第4話〜太陽〜


ーー二度と朝には出会わない。窓の無い部屋に動物が一匹。

ここはドコだろう…?
真っ暗だ…私…どうなるんだろう…?












〜太陽〜









道を歩くだけでガヤガヤと煩い話声。都会とはここまで人が多いのか。

『絶対音感』…それを持つ人は、都会での音が全て雑音に聞こえると聞いた事がある。

そんな場所に私は来た。

田舎からはるばる来たのは美容師になるためだ。

ゲンさんから借りたお金。景気良く多めに貸してくれた事が心温かい。

まだ余裕がある。
金銭的にも…それは精神的にも繋がる。

唯一の心残りと言えば…藤本君の事かな。

私も彼が好きだった。でも、これから都会に出てくる新人の身。彼の事ばかり想っていたら私自身が成長しないと思った。

もし…もしもう少し経って許されると言うなら…次は…私から言おう…。

そうこう考えている間に今の勤め先、美容室゛アルエ゛に着いた。

『おはようございまーす!』

「おう、おはよう!」

この人は店長さん。歳は四十近いと聞くが、もっと若く見える。無理のない落ち着いた茶髪で、長さは短め。普通にオシャレだと思う。

「あら、雪ちゃん。今日も元気ね」

この人は店長さんの奥さん。この人もまたオシャレ。そして美しい。

「ニャアァ〜」

「フフ、ニコルはまだ眠いみたいね」

ニコルとはこのアルエで飼っている猫の事だ。真っ白な毛で黒い瞳。そして店長さんの案らしく、いつも赤いマフラーを首に巻いている。とにかく可愛い。

『はいはい、そろそろ奥の休憩室に行きましょうねぇ〜』

私はニコルを抱えて、着替えるために休憩室に向かった。

ここの美容室は二階で、一階はこの夫婦さんの家。
あと一人従業員がいて、総員4人で営業する小さな店だ。

正直な話、最初は私はこの店で働くのが嫌だった。

わざわざ都会に出てきてなんでこんな小さな店なんだって…もっと大きな店で働きたいって…そんな不満が満ち溢れていた。

二年間、美容学校に通い、上位の成績を修めた私が推薦された店。

しかし、勤めてみれば最初の不満を謝罪したくなるほど。

この店長さんは実にテクニックが巧み。それもそのはず。昔、その美容が外国からも認められ、海外までその知識を講師しにいっていたらしい。

そして三年前に日本に戻ってきて、大型店を建ててくれると言われた所を、あえて拒否。

「自分の家の二階を美容室にしてくれ」

富と名誉を受け入れなかった店長さん。

だからこの人のテクニックを知っている人はほんの一部。

…だったが、噂が広がり今や隠れた名店となっている。

その証拠に、アルエは完全予約制度で、一日中お客さんが絶えない。

優しい夫婦に、確かな実力。まさに良い人。私の都会生活はまさに充実していた。

新米の美容師は当たり前だが、かなりの修業と月日が経たなくてはお客さんの髪を切らせてもらえない。

ここに勤めて三年経つが、今だにシャンプーや会計、準備くらいしかさせてもらえないが仕方ない。

さらにコツコツと練習も重ね、二年の月日が経った。

ーーーーーー。

五年間、私が都会に出てきてまだ元気にやっている時だ。

店の入口に新しい絵が飾ってあった。

『店長さん、この絵…綺麗ですね』

「だろ?俺は風景画が好きだから買っちまったよ。確か…作画が…藤本って言ったかな…?」

え…?
この絵…藤本君が描いたの? そうか、彼も頑張ってるんだ。よし! 私も頑張ろう!

「そうだ、そろそろ雪ちゃんも実戦しても良い頃だな。…今日、お客さんの髪、切ってみるか?」

『え…?あ、はい!やらせてください!!』

嬉しい…その反面、緊張する。
気が気でならない…でも、藤本君は成功したんだ。

今日が、私のスタート第一歩。五年間積み重ねた努力の披露宴。

とにかく…やるしかない。

ちょうど12時、予約を入れた婦人が来店する。時間ピッタリだ。

『い…いらっしゃいまへ』

…噛んだ…。

「緊張しないで、大丈夫だからね」

ポンと肩に手を置かれ、集中させる。

「実は、今日この子は初めての実戦なのですが、宜しいでしょうか?」

店長さんが婦人に交渉を持ち掛ける。

「あら、初めてなの?でも、構わないわ。いつもあなたが頑張ってる姿見てるもの」

こうして、私は了解を得て、髪を切らせてもらう事を許可された。

ーーーーしかし……

「キャアァァア!!」
「お客様!おい、救急車だ!」
「は…はい!」

…私は誤って、ハサミを落としそうになってしまった。

美容に使うハサミは一度床に落とすと刃がわすがに変形してしまうので、二度と使えなくなる。

それを庇おうと…焦ってしまい…

婦人の耳を…切ってしまった…。

医師に見てもらった結果、軟骨切断。

もちろん私は…クビだ。





ーーーーーー。



そうだ、そんな事があったんだ。
あんな新聞にも乗るような事をしてしまった私を雇ってくれる美容室などなく、ゲンさんに借金も返せず、REMと言う金融グループに捕まり、拉致られたんだった。

なんとかここから抜け出さなくちゃ…何をされるか分かったもんじゃない。

とりあえず辺りを見回すが、暗くてよく見えない。
薄い明かりの電球が吊り下げてあり、毛布がわりの布、何が入っているか分からない木箱。たったそれだけ。

壁を手探りで一周回り、ドアを捜す。…あった。

…しかし、ーードアノブが壊れかけていて触れたら最後、取れてしまいそうだ。

ドアノブが取れてしまえば、窓もない部屋だ。もはや出られる術をなくす。

私の行動は封じられた。

しかし、寒い季節は冬だ。そんな中、薄くボロい布なんかで、寒さを凌げる訳がない。

でも、ーーこのくらい寒い方がいい。本当の震えに気付かないで済む。

…あの木箱は何が入っているのだろうか。ジッとしていても仕方ない。不安だが、勇気を振り絞って開けてみた。

中には…缶詰…?
それと缶切りもある。

開けてみると、食料だ。食べられそう。

考えてみれば、閉じ込められて、結構経つと思うが、何も口にしていない。

缶パンと缶シーチキン…おいしくはないが、腹の足しにはなった。

常に真っ暗、時計もないためにどのくらい時間が経ったかも分からない。

携帯も圏外だし、充電も切れれば時間も分からない…ただの荷物。

腹が減れば缶詰を食べ、眠くなれば寝る。起きたい時に起きる。

ーー不愉快も不自由もない。その逆も初めからない。

いつまでこうしていれば…
そう思った時、ドアが開いた。外は薄暗い。今は夕方らしい。

黒いスーツを着た体格の良い男が数人。

そして眼鏡を掛け、いかにも頭の良さそうな人が二人。
一人は人相が悪く、もう一人は歳も若く、好青年の印象。

そして最後に、ボスであろう老人が入ってきた。

「…おい」

老人の声とともに、眼鏡の人と青年が、私の前に立った。

手にはシャーペンとメモ帳を持っていた。

「いいか、こうやって判別するんだ。ーー例えば…笑ってみろよ!」

老人に杖で頬を刺され、私は仕方なく笑ってみた。

「肌のツヤは落ちているが、素質自体は悪くない。両頬にえくぼ。元美容師だけあって服装、髪型もキチンと正せばオシャレだろう…おい!分かったか!ちやんと書け!」

「は…はい。すいません」

眼鏡の人が大声を張り上げ青年を殴った。

それにしても今のは…?
私はチェックされていたのだろうか。

「よし、今日は顔を見たかっただけだ。おい、ちゃんと保存しとけよ」

「はい!」

そう言い残し、皆は帰って行った。一体何だったのだろうか…?

そして次の日からも毎日の様にそいつらはやってきた。

しかし、老人を除いてだ。

これは私の推測だが、私はきっと売られる。老人は去る間際、私を『保存』しておけと言っていた。

もはや人として見られていない証拠だ。

チェックをされているのは私にいかほどの値がつくかだろう。

だから老人…つまり会長は来なく、後は部下にまかせているのだ。

チェックも徐々に厳しくなってきた。泣けと言われ、泣いた時には連中は笑っていた。
値が決まったのだろうか。いずれにせよ、売られるのも近い。

女の勘がこのままじゃマズイと訴えている。
何とか抜け出さなくては…。


唯一ドアが開く時、常外は夕方。時間が決まってにいるのだろう。


現在の時刻は分からない。私は連中が部屋を出た後、すぐに木箱の中に隠れた。
ここに隠れて…何とか隙を見て逃げ出せれば…そう考えたのだ。

ーーかくれんぼしてた。日が暮れてった。
見つからないまま、暗くなっちゃった。
皆、帰ってった。

よし、後は次に奴らが来るのをここで待って…


〜ガチャ〜

え…!? 誰か来た?
足音は…一人だ。私を探してる。

今しかない…今しかない…今しかない!!

ガタン!

私は勢いよく木箱から飛び出すと、そいつに缶詰を投げ付けた。

ガシャン!!

よし、懐中電灯に命中。それはもう役目を失った。

外は暗い。明かりなしなら逃げ切れる可能性が高くなった。

倒れかけた男は青年だった。私に何かを言いかけていたが、逃げる事に夢中な私に声が届くはずもなく、私は部屋を出ようとした。

しかし、部屋を出た時に…見つかった…。黒のベンツが数台…ライトを当てられた。

車のライト…久しぶりに見た光だった。そして機械の熱だから嫌な暖かさを感じる。それが逆にーー暖かくて寒気がした。

もう待ってはくれなかった。その場で強制拉致。

手足の自由を奪われ、車の中に連れ込まれた。

隣には、さっきの青年。同じく手足を縄で縛られている。

「お嬢ちゃん、残念だったな。せっかくそいつは君を助けに行ったと言うのに…自ら逃げ道を詰んじまうとは」

…え? ど…どうゆう意味? 私を…助けに…?

「そいつは新人でね、騙されてこの職に就いたんだよ。犯罪はしたくないと言ったところかな?まぁ、そいつがいないのに気付いて、まさかと思ってここに来てみたら案の定さ」

あ…言葉が見つからない…。おそらく組織を裏切ったこの青年も、ただては済まされないだろう。申し訳ない事をした。

ーー君のライトを壊してしまった。

私は…この青年の未来…光を壊してしまったのだ。

ーーそれが過ちだと、すぐに理解した。

でももう遅い。彼にとっても…私にとっても。
かくれんぼしてた私を探しに来てくれていたのに。

これから私はどこに連れていかれるんだろう?

一つ、はっきりと言える事は…この部屋からーー出れたら最後、もう戻れやしない。












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