表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロリィタちゃんと漫画家志望君  作者: 花野 りり
番外編 千鶴と小枝子のなれそめ
19/27

校庭で走り回ってると、小枝子はたまに視線を感じた。 女の子が、こっちを見ていた。顔しか見えないけれど、長い黒髪の色の白い美少女だった。小枝子の脱色された金髪とは、ちがうな、と思った。比べるもんでもないけど、小枝子は自分で金髪にしていたから髪の毛は痛み気味だった。

「安藤! とまるなよ! マラソン対決してんのに!」

「いいけど、このままだと田中負けるけど、おごりの話おぼてる?」

 男子と引けを取らない身体能力の小枝子は、よく色々な部活の助っ人をしては結果を出してきた。あと、お給料もこっそりもらっていた。


 裕福じゃないし、服装も結構崩しているのにお金持ちが多い私立には入れた理由は、それだ。小学校から、有名だったから。『賞金ハンター小枝子』なんて呼ばれていた。

 弟が入院しているから、お金が必要だった。今はもう退院しているけど、もしまた体調を崩したらと思うとまだ稼ぎたかった。でもお洒落もしたかったから、髪の毛の色を抜いた。


「はい、ゴール」

 トン、と小枝子がゴールである楠の木をたたいた。

「あーちくしょー!! お前はやすぎんだよ!」

「知らないわよ。あんたが勝負しかけてきたんだから。負けたら、夕飯おごってくれるんだっけ? 駅前のラーメン屋さん。あこ一杯千円するけど」


 中学生の小枝子たちには、高めの値段。でもおいしいらしい。

「わかってるよ! おごるよ!」

 ため息をつきながら、小枝子はさっきから美少女の視線が気になって仕方がなかった。入学して1カ月。彼女の顔には見覚えがない。


「ねぇ、田中。あの綺麗な子誰?」

「あ? しらねーよ。上級生じゃねーの? あんな綺麗なの1年にはいねーよ」

 そもそも歩いてるだけで皆男なら見るわ、あんなの。と田中は不機嫌に吐き捨てる。

 美少女がこっちこっちをしている。

「安藤、呼ばれてっぞー」

「ラーメン……」

「明日おごってやっから」

「逃げない?」

「同じクラスでどうやって逃げろってんだよ……」

 それもそうか、と小枝子は草をかき分けて、美少女のいる窓際にいった。


 近づいて見れば、白さは少し病的なほどだった。独特の、薬のようなにおい。

「なんですか?」

 先輩だろうと想定して、小枝子は敬語を使った。

 ら、彼女はにっこりと笑って……そのまま小枝子に口づけた。それも、思いっきり唇。

 あっけにとられていると、にこにこしたままゆっくりと唇を離した。

(……女の子にキスされた……)

 別に今まで彼氏がいなかったわけじゃないから、キスぐらいいけど。

 何でまた、女子に。

「千鶴さん! 何やってんですか!!」

 美少女の後ろから低い声がした。

「小枝子に、ちゅー」

(名前しってんの? なんで?)

「馬鹿ですか!? 初対面で何やってんですか!? すみません……この子おバカなんです」

 声の主が現れて、真っ先に胸元に目がいった。なにこれでかい。

 小枝子だって、でかいはずなのに、それよりでかい。G以上はある。

 巻き髪の黒髪の、目の大きな女性だった。赤いリップがすごく似合う。でも、なぜかツインテール。結構お姉さんっぽいのに。


「?? 何で姉さんは怒るんだ? よくオレに可愛い可愛いってしてたのに。チューって可愛いと思ってる人にするんじゃないのか?」

 美少女の一人称はまさかのオレだった。そして変なしゃべり方だった。なんだこれ。

「それは身内だけにしてください! 小枝子さんに謝りなさい!」

「ごめんなさい……」

「あ、別に女の子にキスされるぐらいなら……あたしは気にしないんで。普通は嫌かもですけど」

 謝る美少女に、小枝子は言った。

「オレ男だが?」

 美少女(仮)は言った。すごく不思議そうな顔で。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ