プロローグ〜魔法使いたちは旅をします〜
昔々、ある所に、というのは御伽話の定番の台詞です。
最近さー渋谷でさぁー、とか、昨日さー原宿でぇーなどという文句で始まる御伽話は存在しません。あったら教えて欲しいものです。
さてさて、この前振りからしますと、まるでこの話は御伽話のようかもしれませんが、実際、これは御伽話なのでしょうか?
御伽話の定義はイマイチよく分かりませんが、この話も始まりは、昔々、ある所に、という文句で始まります。
昔々、ある所に、一人の魔法使いがおりました。
魔法使いはまだ若く、外見から判断しますと、年の頃は十代後半くらいと思われます。背は低く、ひどく痩せています。黒髪は少し長めで前髪を分けないと目が隠れてしまうくらい。瞳の色は冬の昼空のような透き通った青ですが、少し冷たい印象を受けます。
その魔法使いは広い広い北の海を小型の船に乗って旅しているのでした。
魔法使いの乗る小型船は細長い形をしていて、船尾には蒸気機関で動く水車のような形の外輪|(外車ともいいます)というものがあって、それがくるくると回って船は動く仕組みになっています。
魔法使いは、ある日、それに乗って故郷である北の半島の先端にある最北の港町を旅立ちました。
それからは、毎日の気分によって西へ東へ南へ北へと、ぶらぶら目的も無く船旅をしているのでした。
北の海には多くの島が浮かんでいます。島の大きさはそれ自体が国であるほど大きいものや、家一軒建てれるかどうかほどの小ささまで様々です。
島の正確な数は数えた人がいないので詳しくは分かりませんが、おおよそ三百くらいと云われています。
魔法使いは、たまにそれらの島に上陸したりしなかったりします。
ある時は島に何日も泊まったりしますし、ある時は一分もしないうちに島を出ることもあります。本当に思い付きと気分だけで旅をしているのです。
このお話は、そんな気侭な魔法使いと、その仲間、彼らと関わった人々のお話です。
昔々、ある所の、御伽話です。 |