十八話 海軍航空技術廠
こんばんは^^
同じ日―
「これがメリケンのエンジンかあ」
堀越のような完全体のF4Fの機体ではないがエンジンだけ此処には届いていた。
もちろん鹵獲機のエンジンである。
「これバラしていいですか?」
一人の技術官が挙手し述べた。
「勿論です、そのため此方に運んだ次第です。他にもありますので是非実証のほどの結果を奏上していただきたく・・・」
説明をしていた士官はそこまで言って言うのをやめた。
最早我先にとエンジンを解剖してやると意気揚々と道具に手を掛け仲間と共に話し合いながら進めているので自分の声は彼らには届かないだろうと思ったからだ。
それを見ていた廠長がまあ自分の部屋にでも、と促してくれたのが唯一の救いだった。
「此処の技術者達は凄いですね・・・皆目が生き生きとしています。ここは、航空機を開発する所ですか?私は如何せん初めてのもので・・・」
廠長の部屋でそう言いつつ士官は出されたお茶を飲んだ。ちょっと苦味が効いてて普通のお茶とは違うんじゃないかな?と思った。
ああ、それ粗茶ですよと前に付け足し廠長は喋った。
「いえいえ、ここは航空機といっても一括りではないんです。」
所長は目が乾燥するのかしきりに目を擦りつつ言った。失礼、といって語り出した。
「ここはエンジン・・・まあ、発動機ですかね。その開発や今回依頼されたように実証、航空兵器の開発が専門なんですよ。他にもありますが、それが我々海軍航空技術廠の役目なんです。」
なるほど、と士官は思いもう一度苦いお茶を飲んだ。
「皆この日本の中でも選りすぐりの技術者達です。自分が好きな事をやってるんですからそれは意気の入りようが違うんですよ・・・軍人さんの前で言うのもなんですが・・・彼らは本来こんなことをしていてはいけないんです。」
廠長はちらりと彼、士官を見た。だが彼は何も言わずただお茶を飲んでおり、聞いて聞かぬふりをしていたのだ。
「本来なら・・・彼らの技術力は平和なことに使うべきなんです。それも兵器ではなく・・・もっと皆が喜ぶために・・・」
その声は彼に重く響いた。それもそうである・・・今航空産業はうなぎのぼりであり、郵便も国から国へ船ではなく飛行機で郵便するという話題も上がっているのだ。彼らの腕なら航空機だけでなく他のことにも通用するであろう・・・そう彼は考えていた。
そこから廠長と彼は黙り込んでしまった。
「いやはや、申し訳ない。おっともうこんな時間か、おそらく実験も終わって結果が出ている頃でしょう。そろそろ行きましょうか。」
その重い空気を払うかのように所長は少し大きい声で区切った。
彼は軍帽を手に取りもう一度実験室に足を運んだ。
そこにあったのは一度分解され整備し、組み立てられたエンジンがあった。
「これは・・・もう終わったのですか?」
彼は唖然とし、机の上に置かれたエンジンを指差しつつ聞いた。
「ええ、わずかに手間取りましたが何とか出来ました。」
他国のエンジンでもあっという間にバラして実証してしまうのだ、彼は技術者達の力に脱帽した。
「非常に簡略化されてたのですがね・・・これだけなのに良く高出力が出るもんです。」
そう言い、技術官はもう一度ゆっくり解体しだした。
「簡略化?」
彼は簡略化という文字を聞き返した。実際には彼は零戦のエンジンをテスト飛行の時に見せてもらっていた。数年前になるが幾度にも巡らされた回線、複雑な構造を僅かながら覚えていた。
だが目の前にあるのは確かに素人の目でも分かるかの様な簡略化が見受けられた。
「此処を士官殿、見てください」
彼はよく見えるよう覗き込んだ。見てくれ、といわれた所には黒地には白で、白地には黒で矢印が書かれていた。
「このようにこの製品はここに入れるように、と言われる感じで矢印が見受けられるのです。実際に恥ずかしい事ながら我々もそれを当てにして分解と組み立てをした次第なんです。」
そういいつつ技術官はバツが悪そうにオイルで汚れた手で頭をかいていた。
「もっと、もっと教えてくれ。なんでもいい、気づいた事をどんどん言ってくれ」
その士官の言葉を不思議に思い技術官たちは顔を見合わせたが、それは彼ら、技術官の職人魂に火をつけることになった。
「「はい!」」
そう言い士官を中心に発動機について質問と回答を続けていた士官の背中が、廠長には自分の部下のように見えていた。
お久しぶりです。遂に十八話になりました、皆さんいつもご愛読ありがとうございます。未だに戦闘シーン、次の展開に入れない信濃です。
他の小説家の方のを読ませていただいているのですが皆さんの小説はすぐに次の展開に入っていっているのに私のはネチネチ・・・そろそろ行かないと、けどここはきっちりしとかないと後々・・・と計画性0で進めている今日、私風邪を引きました。
コラ!そこ笑わない!皆さんに楽しんでいただけると大変嬉しいです。
話は変わり、次回投稿は・・・出来たら今日、出来なかったら明日ぐらいに投稿予約をしておきます。ご意見・ご感想お待ちしております!!