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思春期少年
作:一球入魂



曲がり角の先には……


家に帰ると、いつも通り母親と妹がリビングでくつろいでいた。

「ただいま」
「おかえり」

いつも通りに帰宅のあいさつをすると、母親のみ返事をしてくれた。
……妹はこっちを見る様子は全くない。
本当に無愛想な妹だ。そんなんじゃモテないぞ?俺も人のこと言えないけど。

「何かいい事あったの?」
「……別にないよ。何で?」
「にやけてるから」

俺のほう一度も見てないのに何でそんなことが分かるんだ!?
それより、俺そんなにうれしそうか?特に良いことはなかったはずなんだけど。

とりあえず、妹のことは無視して二階にある自分の部屋に向かう。
ベッドに寝転ぶとなんだかどんどん眠くなってきた。
俺、今日そんなにつかれるようなことしてないのに……





目が覚めるとすでに朝だった。
しかも時間は――

「8時!?やばい、遅刻する!?」

今まで一度も遅刻したことないのに!
うちから学校までダッシュで行けば五分で着く。遅刻扱いになるのは8時10分だから、8時5分に出ればぎりぎり間にあう。
昨日用意できなかった教科書類をランドセルに入れ、朝食は無しで家を出る。
時刻は……よし!8時5分、予定通りだ。
そして勢い良くドアをあけて出る。

「おはよう」
「うわっっっっ!」

……今日も保坂がいた。
ストーキングは犯罪だぞ。保坂。

「そんなにゆっくりしてていいのか、保坂。もう8時5分だぞ?」
「……今日学校休みだよ。」

何いぃぃぃいぃぃぃぃぃ!?
そんなこと一度も聞いてないぞ!?
……っていうか今日土曜日だった。

「……忘れてたの?」
「うん……」

何か保坂うれしそうだな。
ちょっと笑ってるっぽくなってる。
そういえば保坂が笑ってるとこ初めてみたな。

「そういえば保坂どうしたの?」
「何が?」
「……ちょっと郡司君に話があって」
「ん、じゃあうち上がりなよ」
「……ここのほうがいい」

何か保坂の顔赤い。さすがに男の家に上がるのは抵抗あるか。

「……じゃあ聞くけど、郡司君って自分が瞳ちゃんのこと好きだって分かってる?」
「別に俺は高橋のことは好きじゃないぞ!?」

ずいぶんいきなりだな!?別に俺は高橋のこと好きだ何て思ったことないぞ!?
かわいいと思ったことはあるけど!

「本当?」
「……うん」
「分かった、じゃあね」
「それだけ?」
「うん」
「じゃあね」

そんなこと聞きにうちまで来るなんて随分暇だったんだな。まぁ、家近いからそんなに手間はかかんないけど。





暇だ。
暇だ。
暇だ。
暇だ。
暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇だぁぁああああぁぁぁあああぁ!
朝に保坂に会って以来何もしてないから、もう本当に暇。全くやることもないし、勉強なんてやる気全くないし。友達と遊ぶ約束もしてないし。
もういっそのこと馬場とでも遊ぶか?
うん、そうしよう。

「今日遊ばない?」
「いいよ」
「じゃあ、あと三十分ぐらいしたらお前んち行くから」
「分かった」

時間にして十秒もかからない会話を終え、受話器を置く。
随分簡単に約束ができた。
まぁバカだからな。失礼、馬場だった。勉強をしようなんてことは頭にはないんだろう。僕もだけど。
でも、絶対に馬場と同類にはされたくない。
まぁでも、そんなやつと俺は仲がいいんだけど。
とりあえず財布だけを持ち家を出る。家を出る際に母親に行き先は言わない。言う必要ないし。

馬場の家は、僕の家から徒歩十分ぐらいのところにある。
正直歩いてくのはめんどくさい。
というわけで、自転車で行くことにした。



自転車をこぐこと二分、未だに馬場の家にはつかない。
少し自転車をこぐのが面倒になってきた。
まぁ、あと三分もすればつくだろう。
そして、家を出てから五つ目になる曲がり角を曲がる。
すると、昼間とは思えない光景が目に飛び込んできた。

少し遠くてよく分からないが、小学生か中学生ぐらいの女の子が、二、三人の中年の男に絡まれているようだった。
少し近づいてみると、中年の男は酔っ払っているようで、少しふらふらしている。
っていうか、昼間から酔っ払ってるって、どんだけ暇なんだよ。
仕事しろよ。
で、さらに近づいてみると、女の子の顔がだんだんはっきりしてきた。

……高橋だった。

これは、どうすればいいんだろう?
まぁ、高橋ぐらいの顔だと、そんなこともあるとは思うけど。

なんて悠長なことを考えている暇じゃない。
何より、あの中年が高橋に触れているのが何だがむかつく。
ってことで、どうしよう。手段はあるといえばあるけど、何かかっこ悪いんだよなぁ。
……善は急げ、っていう言葉もあるし、しょうがないか。

「お巡りさーん!すいませーん!何かあそこで変な声が聞こえるんですけど、来てください!!」

あいつらに届くくらいの声で言ってやった。
うん、やっぱりかっこ悪い。
俺があっちに行って、あの中年の男共をぶっ飛ばせたらかっこよかったのにな。

少し経つと、中年の男共は逃げるようにしてどこかに行ってしまった。
実際はお巡りさんなんていないのにな。
そんなことより高橋は大丈夫なのか?

近づいてみると、高橋は少し服が乱れていて色っぽ……じゃなくて、酔っぱらいがどこかに行ってほっとしたのか、放心状態だった。

「大丈夫か?高橋」

反応無し。
軽く頭をたたいてみる。
反応無し。
今度はちょっと強め。
反応無し


バシバシバシビシビシビシバシビシバシビシバシビシ


「いったぁぁぁあい……!」

正気に戻ったか、と思いきや、いきなり目をうるませて、僕に飛びついてきて泣き出した。
僕の胸元で大声で泣いている高橋を見て思う。






……どうすればいいんだろう?













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