帰り道
保健室に入ってきたのは――高橋だった。
そして、僕の姿を確認すると同時に
「大丈夫!?」
と言って……抱きついてきた!
もちろん、女子に対して耐性がない僕は、爆発寸前だ!
しかも、未だ保健室にいる保健の先生は、にやけながら僕達を楽しそうに見ている。
あの性悪先生め……と思いながらも、高橋に抱きつかれて爆発寸前の僕は、何もいえない。
……なんか悔しいな。
なんて思ってもこの状況はどうにかなるわけではなく、高橋が僕に抱きついている状況は変わらない。暴力は、女性に出来るわけがない!と言うわけで却下。ならば、言葉で高橋をなだめさせ、この状況をどうにかする作戦でいこう!
……何か無駄に作戦名長いな。
ってことで、言葉で高橋をなだめさせ、この状況をどうにかする作戦決行だ!
やっぱり長いので、以下作戦で。
まず、手始めに高橋の目を見て、落ち着かせよう。
そして、僕の首ぐらいにある高橋の頭を見る。
「高橋」と呼ぶと、高橋はゆっくりと僕のほうを見た。
そうなると、自然と高橋は僕のほうを見上げるようになるわけでして、まぁ、その……上目遣いなわけでして、で、その上目遣いで僕を見ているのは、僕の学年で一番美人な女子なわけでして……
……かわいすぎる。ちょっと、かわいすぎて、めまいが……
「郡司君どうしたの?」
あぁ、もう……無理♪
次の瞬間には、僕は高橋と一緒に保健室の床に横たわっていた。
っていうか、高橋、お前教室の時とキャラ違いすぎないか?
そんなことを考えられたのもつかの間で、次の瞬間には自分と高橋の状況に気付いて、自分でもびっくりするほどの速さで立ち上がった。
「じゃ、じゃあ、俺もう帰る」
照れ隠しなのが見え見えなのだがこの際気にしない。
「じゃあ、私も一緒に帰る!」
「!?」
何を言っているんだこの小娘は!
……僕も小僧だけど。
「いいよ、大丈夫。一人で帰れるから」
「私と一緒に帰ってくれないの?」
またもや上目遣い!それは反則だろ!しかし、ここでOKと言ってしまったら最後、僕は帰り道どうなるか分からない。ここは僕の理性をなんとしても死守せねば!
「僕は一人で帰らなくちゃ死んでしまうんだ」
「郡司君、何言ってるの?」
「……すいません」
「じゃあ、一緒に帰ろう」
「……はい」
弱ぇな、僕の理性。
そんなこんなで高橋と一緒に帰ることになってしまったようです。
気分は上々、テンション普通、理性は壊れかけです。
ついでに、会話はなし。朝、保坂といっしょにきた時くらいに静かですねぇ。
そのわりには僕と高橋の距離は30センチという、近いのか遠いのかよく分からないくらいの微妙な距離を保っています。
しかも、周りは家一つなく、静ぅーかな場所を歩いています。
中々に気まずい状況ですねぇ。
なんて、実況風に今の状況を説明していますが、
……誰に説明してるんだ?まぁいいか。
実際は気を紛らわせようと現実逃避しているだけなんだけど。
何か話そうとして話題は考えたんだけど、こんなに静かじゃ話しかけづらい。……チキンと言う無かれ。
「郡司君って好きな人いるの?」
これは困った。本当に困ったぞ。
高橋が、俺よりも早く話しかけてきたことよりも困った。
いない、って言っても絶対に信じてくれないし、正直にしゃべったら、女子のネットワークにより三日後には全ての女子に広がることは分かりきってるからな。
って言っても、実際好きな人なんていないんだけどね。
だから、必然的に
「いないよ」
「そお」
「……嘘だよね、郡司君」
……ん?今俺と高橋以外の声が聞こえた気がするぞ?
誰だ!誰だ!誰だー!!(結構昔のテレビアニメの主題歌)
なんてふざけている場合じゃなくて、本当に誰だ?
「誰!?」
高橋、まじでびびってるね。
そういう俺もちょっとびびってるけど。
もしかして、幽霊?ここ、静かだし、暗いし。
「……私、保坂」
「あ、真弓ちゃんか……よかったぁ」
なぜに保坂!?
保坂さん、あなたはもっと早くに帰ってるんじゃないんですか?
もしかして、僕達の後ろにずっといたの!?
「こっちは、保坂の帰り道じゃないのにどうしたの?」
そう、今僕は、高橋を家まで送っているところなのだ。
女の子をこんな時間に一人で帰らせちゃ、何があるか分からないし。
今の時代は物騒だからねえ。
「……郡司君たちの後ろをついてきたの」
尾行ですか、保坂さん!?
っていうか、よく気付かれずにずっと後ろついてきたな。
もしかして、スパイ!?
「何で?別に僕と高橋は特別な関係じゃないから心配しなくても大丈夫だよ」
ここはあえて紳士的に優しく言っておく。
「……瞳ちゃんのこと好きなくせに」
ヒュンッ
保健室のときより僕は早く動いた。
それはもう風のように速く。
そして、保坂を連れて高橋から少し離れたところに移動。
そこで小声で話す。
「僕は別に高橋のこと好きじゃないぞ!?」
「……嘘、いっつも瞳ちゃんのこと見てるくせに」
「ミテナイヨ?」
「……告っちゃえば?」
「だーかーら、俺は高橋のこと好きじゃないって!」
「……」
「……あ」
思わず大きい声でいっちゃった!
絶対高橋に聞こえてるよ!Oh No!
「なにー?私が何だって?」
「あ、いや、高橋って何人ぐらいに告られたことあるんだろうなぁって」
「!?」
さすがにちょっと言っちゃいけなかったか?
高橋が口をパクパクさせてる。金魚みたいだ。
「な、何言ってるの!?私、告白なんてされたことないよ!」
「……うそついちゃ駄目だよ、瞳ちゃん」
おい、保坂お前ちょっと怖いぞ。口が、にやぁ、って効果音がつきそうな顔になってるし!
「高橋、お前が色々な人に告られたことがあるのは皆知ってるよ。っていうか、皆知ってるの知らなかったの?」
「……うん」
高橋って学校のこと、全然知らないんだなぁ。
何か、高橋が知らないこと教えてあげられてうれしいな。
……ん?何でだ?
まぁ、いいか。
そういえば、もうずいぶん周り暗くなってきちゃったなぁ。
「もう、ずいぶん暗くなってきたし、帰ろうか?」
「あ、うん。そうだね」
「……逃げたね?郡司君」
いちいちうるさいぞ、保坂。
この後、高橋を家まで送ってから保坂と一緒に帰った。
なんだか今日は妙に疲れたなぁ。
そういえば、高橋の好きな人って誰なんだろう?
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