つらかった。
つらかったんだ、ほんとうに。
見るに耐えない。もうあんな光景は、見たくなかった。
見たかった光景――居たい世界。
僕だけの望みじゃ創り上げられないなら、諦めるしかない。叶わぬとは、そういうことだ。
がんばって理解しようとした。でもできなくて、結局、こうなってしまった。
――たとえ誰が望まないのだとしても。
抑えられないほどの熱量をもって、無理強いする。
我を忘れて、愛をぶつける。
誰かが傷ついてしまうだけだとはわかっている。それでも、幸せになりたい――そのためなら誰が傷ついたって構わない。
「キミが一番嫌う人間に、なってしまったよ」
残酷が板についてしまった。今じゃ、キミは絶対に振り向いてくれないだろうな。
でも、キミは手元にいる。手の届く場所から遠くならない。キミは、もう壊れてしまった人形みたい。
安心感。それを上回るほどの虚脱感。世界が、自分自身すらも淡白。望んだのは確かだけれど、こんな形ではなかった。
もう何もかも、戻せないところまで着てしまった。
「なぜ、こうなってしまったのだろう」
キミが僕を選んでくれなかったからか――否。安でもある。
キミが僕以外に特別な笑みを浮かべるからか――否。安でもある。
総てが安で、でもどれかひとつでは否。全部が、どれか一つが欠けることなく募ったから、だからこうなってしまった。
キミは、あまりしゃべらなくなったね。でも、僕にはわかっている。いつだって、今だってキミはころころと微笑んでいるよね。
以心伝心。でも、たまにはキミの声が聞きたくなる。
――それが本当の願いだったのに。
いったい、どこで間違えてしまったのだろう。
「はいと言ってはいけないゲームをしよう。心理テストみたいなものだからね」
キミの頬にかかる髪を避けてあげながら、一問目を訊く。あのさ――
「僕のこと……好き?」
『はい』
――落ち着いたキミの声が、微笑とともにそう言葉を紡ぐ。摂理を破ってまで、キミはいいえと言わない。
目の前のキミは、答えを返さないし、表情ひとつ変えなかった。頬の髪を掻き揚げてあげた拍子に、安定が崩れて横にぐらつく。彼女の背があった位置で固まる赤い血の臭いも、今では気にならない。
ゴトッと、躯が無機質で重量のある音をたてた。
いつだって僕はキミに、押し付けてしまっている。
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