『はい』縦書き表示RDF


『はい』
作:水瀬愁


 つらかった。
 つらかったんだ、ほんとうに。
 見るに耐えない。もうあんな光景は、見たくなかった。
 見たかった光景――居たい世界。
 僕だけの望みじゃ創り上げられないなら、諦めるしかない。叶わぬとは、そういうことだ。
 がんばって理解しようとした。でもできなくて、結局、こうなってしまった。
 ――たとえ誰が望まないのだとしても。
 抑えられないほどの熱量をもって、無理強いする。
 我を忘れて、愛をぶつける。
 誰かが傷ついてしまうだけだとはわかっている。それでも、幸せになりたい――そのためなら誰が傷ついたって構わない。
「キミが一番嫌う人間に、なってしまったよ」
 残酷が板についてしまった。今じゃ、キミは絶対に振り向いてくれないだろうな。
 でも、キミは手元にいる。手の届く場所から遠くならない。キミは、もう壊れてしまった人形みたい。
 安心感。それを上回るほどの虚脱感。世界が、自分自身すらも淡白。望んだのは確かだけれど、こんな形ではなかった。
 もう何もかも、戻せないところまで着てしまった。
「なぜ、こうなってしまったのだろう」
 キミが僕を選んでくれなかったからか――否。安でもある。
 キミが僕以外に特別な笑みを浮かべるからか――否。安でもある。
 総てが安で、でもどれかひとつでは否。全部が、どれか一つが欠けることなく募ったから、だからこうなってしまった。
 キミは、あまりしゃべらなくなったね。でも、僕にはわかっている。いつだって、今だってキミはころころと微笑んでいるよね。
 以心伝心。でも、たまにはキミの声が聞きたくなる。
 ――それが本当の願いだったのに。
 いったい、どこで間違えてしまったのだろう。
「はいと言ってはいけないゲームをしよう。心理テストみたいなものだからね」
 キミの頬にかかる髪を避けてあげながら、一問目を訊く。あのさ――







「僕のこと……好き?」





『はい』

 
 ――落ち着いたキミの声が、微笑とともにそう言葉を紡ぐ。摂理を破ってまで、キミはいいえと言わない。
 目の前のキミは、答えを返さないし、表情ひとつ変えなかった。頬の髪を掻き揚げてあげた拍子に、安定が崩れて横にぐらつく。彼女の背があった位置で固まる赤い血の臭いも、今では気にならない。


 ゴトッと、キミが無機質で重量のある音をたてた。





 いつだって僕はキミに、押し付けてしまっている。


地の文が無いイクナイ 駄文です。すみませんでした。
明度の不足した密室? との認識、よろしくおねがいします。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう