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雪を継ぐモノ達

作者:二月羊
 少し昔、とある田舎に小さな村がありました。
 村は大きな山の麓にあり、年に数回大雪が降りました。
 しかし不思議なことに、毎年大雪で遭難する人も怪我をする人もいませんでした。
 寧ろその雪は春の訪れと共に雪水へと変わり、村人の生活を支えていました。
 そんな村に、雪が大好きな少女がいました。
 普段は人見知りであまり外に出たがらない少女でしたが、雪が積もった日は別でした。
 少女が7才になった年の冬も雪が積もりました。服を着込み、手袋をし、お気に入りのニット帽を被って外へ駆け出します。
 視界一面銀世界。毎年見ている景色であっても、少女は満面の笑みで雪に飛び込みます。
 ふわふわな雪の上を転がり、雪ウサギを作り、小さな雪ダルマも作りました。
 一年の退屈を爆発させるように、少女は雪遊びを楽しみます。
 精一杯楽しみます。
 何かに気づかないように楽しみます。
 それでも、遊び疲れてふと顔を上げたとき、少女は気づいてしまいました。

 周りに雪かきをする大人、遊んでる子供達がいるのに、自分は独りぼっちだということにです。

 わいわいがやがやと、みんな自分が居ないかのように話して働いて笑っています。
 なんとなくは分かっていました。いつも家に籠っている自分に友達どころか知り合いと呼べる人すらいないことに、少女は幼心ながら分かっていました。
 それでも家には両親がいましたし、愛情不足というわけではありませんでしたが、一歩外へ出ると自分の異質さや疎外感を強く感じざるを得ませんでした。
 さっきまで感じなかった寒気が、一気に体の芯まで襲います。
 冬の寒さとは違う、心から来る寒さでした。
 逃げるように、避けるように少女は後ずさりをし、
 とん、と誰かにぶつかってしまいました。
 つい悲鳴を上げてしまい、謝ろうと相手の顔を恐る恐る見ると、そこには眠たそうな顔をした少年がいました。
 少女は少年を知っていました。向かいの家に住む、幼馴染の男の子でした。
 少年も少女を知っていました。あまり外に出ない少女を、少年は前から心配していました。
 だから少年は言いました。
 ―― 一緒に遊ぼう?
 それは、何か意図があった言葉ではありませんでした。
 ただ少女と遊びたいからと、少女の心中を察した訳でも、大人からそう言うように言われた訳でもありませんでした。
 純粋な言葉は単純に少女の心に届き染み渡りました。
 誰かに見てもらい、認めて貰える暖かさを知りました。
 嬉しくても涙が流れることを知りました。
 その日、少女に友達ができました。



 少女が10才になった年のある冬の日。その年の冬は例年稀に見る大雪が連日降っており、大人でさえ躊躇する吹雪となっていました。
 夜も更け、暖炉の近くでうたた寝をしていた少女は突如鳴り響いた玄関からの音に飛び起き、恐る恐る玄関へ様子を見にいきました。
 玄関にはすでにお父さんとお母さんがおり、急なお客さんと話をしていました。
 そのお客さんは少年のお父さんでした。
 相手が知っている人だと分かり、少女も話に加わりに行きます。
 少年と遊ぶようになってからお互いの家に行き交うことも多くなり、少女の人見知りも和らいでいました。
 ――どうしたの?
 そう聞かれた少年のお父さんは、いつものゆっくりした口調とはうって変わり、早口にこう捲し立てました。
 ――息子が急に熱を出した。
 ――村のお医者さんを呼んだが、草薬がなければ治療のしようがないと言われた。
 ――だから他の家に薬草がないか訪ねて回っている。
 驚いた少女はすぐに薬草を上げるようお父さんお母さんに頼みました。
 お父さんお母さんも渡したいのはやまやまでしたが、この連日の吹雪で山に入ることができず少女の家にも薬草は残っていませんでした。
 他の家にも行ってみようと、身支度をした少女のお父さんは少年のお父さんと一緒に吹雪の中出ていきました。
 少女は少年が早く治りますようにと祈りながら、お父さんの帰りを待ちました。
 ………………。
 …………。
 ……。
 どれだけ待ったでしょう。いつもならとっくに眠っている時間になっても、少女は起きて待ち続けました。お母さんも心配そうに玄関を今か今かと見つめます。
 まさか、お父さん達に何かあったんじゃ、と不吉な予感が過った時、玄関のドアが大きく開かれました。
 二人の帰りを喜び半分薬草の期待半分で出迎えた少女は、帰ってきた二人の顔色から薬草は貰えなかったことを察しました。
 ひとまず凍えかけた二人を暖炉へ連れていき、どこの家も薬草が尽きていると知らされました。
 ――こうなったら山に行くしかない。
 少年のお父さんがどこか思いつめたような声で呟き、少女のお父さんが無茶だと止めました。
 整備された村を歩き回るだけでも凍えかけたのです。山へ入ったら生きて帰れるか分かりません。
 少年のお父さんも必死でした。可能性がそれしか残されていないなら、どんなに危険でも賭けるしかないと。
 少女のお父さんもその気持ちは痛い程分かります。逆の立場なら自分も迷わず駆け出しただろうと。
 二人のお父さんの口論にお母さんが落ち着くようにと加わり、少女は置いてきぼりになりました。
 いてもたってもいられず、少女はばれないようにこっそりと身支度をし、家を抜け出しました。行き先は少年の家です。まずは少年の様子を確認したかったのです。
 裏手のドアを開け外へ一歩踏み出すと、暴風が吹き荒れていました。
 いつも見慣れた風景がほとんど隠れていましたが、辛うじて見える屋根の色や街路樹を目印にしてなんとか少女は少年の家に辿り着きました。
 しかしこのまま玄関から入っては少年のお母さんに気づかれ、うつったらいけないからと少年に合わせて貰えないかもしれません。
 少女は少年の家の裏口へ向かいました。遊びに来る時、玄関は閉まっていても裏口が開いていることを知っていました。
 なるべく音がしないようにこっそりと開け、小さくお邪魔しますと言い少年宅に上がります。
 少年の部屋はすぐそこです。抜き足差し足で進み、目的地の扉を少しだけ開けます。
 隙間から覗き込むと、少年の部屋にはこっくりこっくりと寝てしまっている少年のお母さんがいました。
 夜通しの看病で疲れたのでしょう。
 これ幸いと少女は思い切って部屋に入り、少年が眠るベッドまで近づいて、息を飲みました。
 初め、少女は大きなリンゴかと思いました。
 それくらい顔を真っ赤にした少年が、苦しそうに汗を流していました。
 少女の目からしても、普通の風邪ではないのが分かりました。
 今までもお見舞いに来たことはありましたが、ここまで酷いことはありませんでした。
 「死」という言葉が脳裏を過りました。
 ――何とかしなくちゃ。
 振り払うようにそう思っても、少女は医者ではありません。
 魔法使いのように今すぐ治すことなんてできません。
 だから、

 少女は今の自分にできることをするために、一人夜山へと行く決意をしました。

 例えそれが少年の望まないことであっても。
 もしかしたら、先に自分が死んでしまうかもしれなくても。
 あの日貰った暖かさのお礼を返すのは、今しかないと心に刻んで。



 薬草が生えている場所は知っていました。
 以前少年と山へ遊びに行った時教えて貰っていました。
 そこまで距離はないはずでした。
 少年と会う前の少女ならまだしも、外で遊ぶようになり体力がついた今ならと自信もありました。

 そんなものは、ものの数秒で消え去りました。

 いつもより多く着込んできたはずなのに、一歩進む度に体から熱が逃げていきます。
 前も吹雪でほぼ見えず、四方八方から叩きつけてくる礫が襲ってきます。
 寒くて痛くて辛くて、自分が何をしにきたのか分からなくなりそうでしたが、苦しむ友達の顔を思い出して重い足を上げた、
 その時でした。
 ひと際大きな横殴りの風が少女の小さな体を吹き飛ばし、少女は為すすべなく雪原を転がっていきました。
 もうここがどこだか分かりません。薬草の在処も、帰り道すら分かりません。
 すっかり疲れ途方に暮れ、何だか少女は眠たくなってきました。
 二度と起きられないだろう夢に落ちる直前、少女は誰かに謝らなければいけない気がして、でも誰かは思い出せずに眠ってしまいました。

 夢の中で、少女は一匹の鹿に会いました。
 夢の鹿は言いました。
 ――雪が嫌いになったかい?
 少女は答えます。
 ――いいえ。
 理由は聞かず、鹿は別の質問をします。
 ――生きたいかい?
 ――うん!
 さっきより強い口調に、鹿は嘲る様に続けます。
 ――死ぬのが怖いかい?
 ――それもあるけど。
 揺蕩う意識の中、朦朧としてるからこそ嘘偽りの無い言葉を少女は吐き出せます。

 ――友達を、大切な人を助けたいから。

 嘲りを消し、鹿は聞きます。
 ――君は、友達を助けるためならどうなってもいい覚悟があるかい?
――あるよ。
その答えに陰りがないことは、鹿にも分かりました。だからこそ、鹿は聞きました。
――何故そこまで言えるんだい? 結局、他人は他人でしかないだろうに。
――決まってるよ。
この問答になんの意味があるんだろうと思いながらも、少女はただ当たり前の言葉を紡ぎます。

――この助けてもらった暖かさが、何よりの理由だよ。

鹿にはなんのことか分からなかったはずでした。
でも、鹿にとっては十分な説明でした。
――わかったよ。
――え?
――もう、おやすみ。
その言葉を最後に、少女は再び闇の中へと落ちていきました。

目が覚めると、少女は暖かいベッドの中にいました。カーテンの隙間から朝日が射し込んでいます。
ずっと側にいてくれたのでしょう。酷いクマをつくったお父さんとお母さんが真っ先に抱きつき、良かったと泣き出します。
しばらくぼーっとしていた少女は、少年のことを思い出し慌てて起き上がろうとしましたが、叱られながらベッドに戻されました。
――彼ならもう大丈夫だよ。
お父さんが落ち着かせるように言いますが、少女は何が大丈夫なのか分かりません。
困惑する少女を見て、記憶が混乱してるんだろうと思ったお父さんは、ゆっくりと昨晩のことを話してくれました。
お父さん達が言い合っている中、最初に少女がいなくなっているのに気づいたのは少女のお母さんでした。
慌てて家中を探しましたがどこにもいません。それどころかいつも着ている防寒具がなくなっています。
お母さんは少女が山へ薬草を取りに行ったんだと、すぐに察しました。
お父さん達も気付き、もう言い合っている場合ではないと山へ入る準備をし始めた時でした。
ゴッ、ゴッ、と玄関からノックが聞こえたのです。
まるで棒で小突いたようなノックに首を傾げながらドアを開けると、そこには踞り眠っている少女がいました。
何故やどうしてという疑問は捨て、両親はとにかく少女をベッドに連れていき暖めてあげました。
一息吐いてから、お母さんは少女が何かを持っていることに気付きました。
それは何かの植物のようでした。
それはよく見る薬草に良く似ていました。
少年のお父さんが何か言う前に、少女の両親は薬草を早く持っていくように急かしました。
ありがとう、ありがとう、と繰り返しながら、少年のお父さんは自分の家に帰っていきました。
夜が終わり、朝日が差し始め、あの狂暴な吹雪が嘘の様におさまっていたとのことです。
そこまで聞いて、少女は余計に混乱しました。
少女が山へ行ってから帰ってくる時間と、大人が少女がいないことに気付いてから見つけるまでの時間に大きな差があるように感じたのです。
正確な時間は分かりませんが、少女が薬草を探してさ迷っている間に大人達が気付いて探し始めていそうなものです。
また、大人達は少女が自力で戻ってきたと思っているようですが、そんなはずがないことは少女自信が良く分かっていました。
――誰が自分を家まで送ってくれたんだろう。しかも薬草まで持たせてくれて。
正直に言うと心当たりはありましたが、まさか夢の話をするわけにはいきません。
このことは胸の中にしまっておこうと決めた、その時でした。
もう何度目でしょう。そろそろ外れるんじゃないかと不安になるほど強く開かれた玄関から、少年のお父さんが泣きじゃくりながら現れました。
その泣き顔の中にある喜びを見つけて、少女は安心しながら瞼を綴じました。
夢の鹿に小さくお礼を言って。



 少女が15才になった年の冬。少女は同年代の子供達より大人びて見えるまで成長していました。昔からの落ち着きと、少年と出会ってから生まれた行動力がそう感じさせたのかもしれません。
それでも未だに雪好きは変わらず、その年も今か今かと自室から窓越しに雪を待ちわびていました。
しかし、その年は一向に降る気配がありません。
 いつもならとっくに積もっているはずの雪が一粒もありませんでした。
 妙な胸騒ぎがしました。
――このまま雪が降らなかったらどうなるんだろう。そういえば最近雨すら降ってなかったんじゃ?
何らかの不吉さを抱えたまま、少女は少年に相談しようと立ち上がりました。
 身支度が整った後、外へ一歩踏み出し雲1つない晴天を恨めしそうに睨みながら歩き慣れた道を行きます。
そんな思いが通じたのでしょうか。青い空から、一粒の雪が降ってきました。
わっ、と喜ぶ少女でしたがすぐにそれが不自然でおかしなことに気がつきました。
普通一粒だけ雪が降るでしょうか? そもそも何故少女はそんな小さな雪に気付けたのでしょうか?
まるで少女へ向けられたメッセージのように、儚い雪は降りてきます。
導かれるように両手を差し粒雪が辿り着いた瞬間、少女はその声を聞きました。
――お願いがあるんだ。
頭に電流が駆け抜け、昔の夢が呼び起こされます。
――ああ、そうだった……。私は、
それは、忘れてはいけないはずの思い出でした。
――山へ、山へ行かないと。
何かに導かれるように、足早に山へ向かいます。
不思議と恐怖はありませんでした。
寧ろ早く行かなければと、焦燥感ばかりがはやりました。
辿り着いたのは古びた祠の前でした。
ずっとほったらかしにされているのでしょう。
少女が瞬きをした瞬間、祠の主は現れました。
夢の中と同じ、鹿の姿でした。
――やぁ、久しぶりだね。
――お久しぶりです。あの時は、本当にありがとうございました。
まず、少女はお礼を言いました。
返しても返しきれない感謝を伝えました。
――構わないさ。役目だからね。
役目? と首をかしげる少女に鹿は一つ頷いて、こう言いました。

 ――ああ、山の神たる、僕の役目さ。

 目の前に神様がいると知っても、少女は特に驚きませんでした。
 これまでの不思議な出来事が、神様という存在の証明だからです。
 ――それで、その神様が、私にどんなお願いがあるんでしょうか……?
 神託と呼ばれる使命を授かった少女は、神様から目を逸らさず聞きました。
 祠を守るように茂る木々が風もないのにざわざわと揺れます。何かを待ちわび、期待し、待ちきれないように見えます。
 それに答えるように神様は間を置かずに話を進めます。
――ああ、まずは、話を聞いてほしい。僕を、神という存在のことを。
今にも消えてしまいそうな儚さに、言い知れぬ不安を感じながら、少女は神様の言葉を聞きます。
 ――僕は、いや僕達神様はね。不死じゃない。いつかは力を失い存在が消えてしまうんだ。だから、歴代の神様は次の神様を選んできた。
 鹿の姿をした神様は四足で乾いた地面の上をゆっくりと歩き始めました。
 何かを名残惜しむかのようにゆっくりと、です。
 ――でも、誰でも神様になれるわけじゃない。神様になるには強い、とても強い自己犠牲の心が必要なんだ。神様の役目はこの山と周辺の生き物の生態系を管理することだからね。何よりも周りのことを考えなきゃならない。自分のことを省みないくらいにね。でも、そんな生き物ってめったにいなくてね。口ではいくらでも言っても本音じゃ真逆を思ってることなんていくらでもあるんだ。
 今までどれだけの生き物を尋ねたのでしょう。神様はすっかり疲れ切っていました。  
 ――見ての通り、僕も力を失い始めているからね。取り返しがつかなくなる前に後継者を探してたんだけど、全く見つからなかった。そんな時だった。友人のために一人雪山をさ迷いながら薬草を探す女の子がいた。君のことさ。
 やっぱりあれは夢じゃなかったんだ、と少女は再確認します。
 ――あの時はすぐに助けてあげられなくて悪かった。どうしても君の自己犠牲心を確認したかったんだ。許してほしい。
 とんでもないです、と即答する少女をじっと見つめ、神様は初めの場所に戻りました。
 ――それで、本題なんだけど。君の心は本物だ。是非僕の後継者として神になってほしい。
 どう反応していいかわからない少女は、そこで二度目の疑問を口にします。
 ――神様って、具体的にどんなことをするんでしょうか?
 ――普段は何もしなくていいさ。ただこの山が危険にさらされたり、山で無意味に命を落としそうにしている生き物がいたら救ってほしい。そのための力は与えてあげられる。
 力と聞いて少女には思い当たる節がありました。
 ――力、ですか。それってもしかして天気を決めることも……?
 ――その通りだよ。今年雪が降らなかったのは僕の力が弱くなり制御できなくなったからだ。あの時の大雪も僕の至らなさのせいだ。
 その責任感の大きさからくる自己嫌悪が、神様を追い詰めていました。
 懺悔するように、後悔を吐き出します。
 ――だから、本来僕はお礼を言われるような立場じゃないんだ。やるべきことをやらずに、幼い命を危機にさらすばかりか、自分の都合で試すようなことまでしたんだ。当の昔に、神様失格だったんだ。
 ――違います!
 耐え切れず、少女は叫びました。
 ――神様は、あなたは私を私達を救い続けてくれていたんでしょう? 自分が辛くて苦しくても、助けてくれたんでしょう? だったらそれで十分です。あなたはあなたを責める必要なんかないし、誰もあなたを責める資格も権利もないんです。
 神様は何も言えませんでした。何も言えず、ただその言葉を受け止めました。
 ――あと、もう一つ勘違いがあります。私に自己犠牲心なんてありません。
 少女は止まりません。一度溢れた思いを止めることはできません。
 ――私にあるのはきっと、皆で笑って生きていくっていう我儘です。そのために、そんな自分勝手のために、私は動いているんです。
 それは、自己犠牲とはほど遠い考えでした。
 ――それでもいいなら、私は神様になります。なってこの我儘のために使います。
 ――……ふふっ、そうか。そうだったか。やっぱり僕は愚かだったよ。
 失望させたかな、怒られるかな、と今になって怯え始めた少女でしたが、
 それは杞憂でした。
 神様は嬉しそうに、本当に嬉しそうに口を開きます。
 ――君なら、君ならきっと、皆を、僕の大切な命達を救ってくれる。自己犠牲なんて綺麗事で満足していた歴代の誰よりも、その大きな志を持つ君の方がよっぽど神様らしいよ。
 神様の体がキラキラと光り、消えていきます。存在が消える前兆でした。
 驚き駆け寄ろうとする少女でしたが、その前に神様は一つの贈り物を降らせました。
 それは雪の結晶を模したペンダントでした。
 雪のようにゆっくりと降ってくるそれは、少女の目の前でふわふわと漂いました。
 ――そのペンダントは神の力を形にしたものだ。好きに使うといい。
 ペンダントを手に取る少女を見て、満足気に頷き、
 ――お別れだ。皆をよろしくね。それと、

 ありがとう。

 とびっきりの感謝を最後に消えていった神様に、
 少女もとびっきりの笑顔と感謝と、少しの涙を添えて、同じ言葉を呟きました。



 とある星のとある地方にある小さな村に、幸せそうな夫婦がいました。
 夫は物静かで落ち着いた男性。妻は元気で活発な女性でした。
 二人は幼馴染で、なるべくして夫婦になった、運命で結ばれた二人でした。
 その村には大きな山があり、村人は生活のため頻繁に山へ入っていましたが不思議と死人も怪我人もいませんでした。
 ある冬の日、散歩の途中夫は妻に尋ねました。
 ――いつも大事そうに持っているそのペンダントは、どこで買ったんだい?
 妻は笑って答えます。
 ――買ったんじゃないわ。恩人に貰ったの。
 ――そうだったのか。君の恩人なら僕の恩人でもある。是非お礼を言いたいな。
 夫の言葉にそうねと返し、妻は空を見上げました。
空からは、優しい雪が降っていました。
妻のペンダントがキラリと光り、
二人は雪の中を笑いながら歩いていきましたとさ。
物語は初投稿です。
変な所は多目に見てやってください。

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