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目指す地位は縁の下。 作者:ビス
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04



そんな経緯を経て、私は今此処におります。回想終了。


「…まぁ、そうなんですの。」

「おほほ…」

「そういえば、お聞きになりました?先月ご結婚なされたカナイ家のご令嬢が…」

「おほほほ…」

「本当ですの?…まぁ、恐ろしい。」

「おほほほほほ……痛っ!!」

「「………?」」

「…お、おほほ」


興味無さ過ぎる話題に飽きた私が、ただひたすらに、壊れた機械の様に笑っていたら、見かねたアヤネ様にテーブルの下で足を踏まれた。…サーセン姐さん。


痛みに呻いている私に、一瞬視線が集まりましたが、適当に笑っていると、またも存在が空気に戻る。地味メイク万歳。


元々私って、平凡な顔立ちの地味子なので、頑張って気配消さずとも存在薄いんですけどね。


目立たない為にも、衣装も化粧も地味めにしましょうと言ったら、アヤネ様とシャロン様は、何故か残念そうだった。


本当は、華やかな色が似合うとか誉めて下さるのは嬉しかったのですが、誉められ慣れてないので、むず痒くて仕方なかったです。


特にアヤネ様は、『後で改めて、着せ替えしましょうね。貴方は化粧映えもするわ、絶対。』と大変良い笑顔でおっしゃってました。…少し寒気がしたのは気のせいでしょう。


………ところで、お茶会というのは私の想像と少し違いました。
結構平和というか…奥様の井戸端会議といいますか。まだ女の冷戦、嫌味合戦は繰り広げられてません。


…………あくまでも、『まだ』ですが。


私が相変わらず一歩引いた場所で傍観していると、一人の美少女が何かを思い出したと言わんばかりに、『そういえば、』と話を切り出した。


「ホノカ様のお父様、安璃州(ありしゅう)に異動なさるとお聞きしたのだけれど。」

「っ!」


彼女の言葉にホノカ様は息を詰めた。

ホノカ様は、癒し系なほわほわ美人さんです。シャロン様の様に目を引く華やかさは無いけれど、少し垂れ目がちなところと、ぽってりした唇がチャーミング。
憧れの隣のお姉さん的魅力とでもいいましょうか…。……え?分かり辛い??


「州牧補佐となられるんでしょう?ご栄転おめでとうございます。」


ニッコリとお手本の様な笑みを張り付けるのは、ルリカ様。シャロン様とお年は同じ位ですが、真逆なタイプですね。
ルリカ様は、勝ち気な美少女です。ばっかじゃないの!と是非罵って頂きたい感じ。……え?変態臭い??


「…………あり、がとうございます…。」


ルリカ様の言葉に、ホノカ様は唇を噛み締めた後、俯く。
その様子は、喜んでいる様には見えなかった。


「…………?」


私は話についていけなくて、戸惑ってしまったが、改めて言葉の意味を考えてみた。


…確か、安璃州というのは、西の方にある小さな州だった筈。で、州牧(しゅうぼく)というのは、県知事みたいな地位、でしたよね?


その補佐…というのが、どの程度の地位かは分かりませんが、ホノカ様の反応を見ると、………もしや左遷なのでしょうか。


「安璃州でしたら、西国の『マトリ』との境の州ですわ。お取り寄せしていただかなくても手に入りますわね。…羨ましいわ。」

「………………。」


おほほほ、と甲高い笑い声が響く。それに耐える様に、ホノカ様は益々俯いていた。


…左遷決定ですね。

ルリカ様とお取り巻きの連携プレーが凄い。そして怖い。

確かルリカ様のお父上は、吏部(りぶ)…つまり人事部のお偉いさんだと教えてもらいました。
つまり人事部部長の娘が、地方にとばされた方の娘さんを笑い者にしている、と。


……世界が変わっても、こーゆーのは大差ないものなのですね。

私もやられましたよ。同級生に、父の同僚の娘さんがおりまして、転勤の際に、今のルリカ様的セリフをいただきました。

ニッコリ笑って、『白い○人』食べ放題です。と返しておきましたが。
父は今も、北の大地で逞しく単身赴任生活を頑張っているでしょう。次は『萩の○』がいいです。と言って泣かれたのは蛇足です。


「ご立派なお父様ですわね。」

「そうですわ。州牧補佐なんて。」

「………………。」

重なる高笑い。身を縮めるホノカ様。

隣にいるアヤネ様の目が、スゥ、と細められた。
侮蔑を隠さない彼女の視線に、お嬢様達は気付きもしない。


アヤネ様…綺麗なお顔が迫力満点ですよ。

……まぁ、お気持ちは良く分かりますが。


ねぇ、お嬢様方。

働いているのは、貴方じゃない。私でも無い。


「…本当に、ご立派です。」


突然会話に参加した私に、皆の視線が集まる。

アヤネ様だけは、諫める様な視線でしたが、他の方は驚いていらっしゃる様です。


ですが、私が同意した事で、ルリカ様達は味方…というか、私が長いものに巻かれた様に見えたらしい。

ニンマリ、と満足そうにルリカ様は笑んだ。


「…そうでしょう?州牧補佐…しかも安璃州のなんて…」

「凄いです。西国との国境の州でしょう?…責任重大です。」

「…え?」


ルリカ様の吊り上がった猫の様な瞳が、瞠られる。
私の言葉の意味を、計りかねる様に。


「西国とは、最近輸出入が増えたと聞きます。これから安璃州は、商業の要となるやもしれません。」


前もって勉強会で教えていただいた知識では、織物等だけで無く鉱石も輸入しているらしい。


今の所友好関係にあるので、商業の要、と言ったけれど、その関係がどう変わるかによって、軍事的な意味合いも含んでくるでしよう。


「…そんな場所に派遣されるなんて、とても信頼されていらっしゃるのですね。」

「…っ!」


ルリカ様は、一瞬呆気にとられた後、ギッ、と私を睨み付け、ホノカ様は、泣きそうに顔を歪めた。


…父に仙台行きをすすめ、泣かせた私が言えた義理ではありませんが、


頑張って働いて下さっている方を、貶めるのはいけませんよ。


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