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02



「…はい、火傷しないようにね。」



アヤネ様はそう注意を促しながら、白い陶器のカップを私とシャロン様の前に置いた。


取り敢えずお茶にしましょう。とアヤネ様が連れてきてくれたのは、書庫に隣接する部屋だった。

元々談話室として設けられていたのか、小綺麗な其処にはアヤネ様が持参したと思わしきお茶セットと茶菓子が置いてある。その隣に丁寧に積み上げられた本があるあたり…実は書庫のヌシだったりしますか、アヤネ様。


「ありがとうございます。」


お礼を言って私がお茶を飲むと、シャロン様も、慌ててお礼を言っていた。
書庫に来るのが初めてらしいシャロン様は、何処を見ても興味津々で可愛い。


おどおどしながらも瞳を輝かせる様が、微笑ましいです。こんな妹欲しかったなぁ…。


「…こぼれるわよ。」

「へ。…あわわっ、」


シャロン様を愛でていたら、手元が疎かになっていたらしい。
呆れを隠しもしない口調でアヤネ様に注意され、私は慌ててカップを持ち直した。


…姉気分に、十秒すらも浸れませんでした。
流石、私。期待を裏切らない粗忽者っぷり。


「…ところで、そちらはレダの王女様よね。貴方の交友関係はどうなっているのかしら?」

「…えーと。」

「………し、シャロン・ロッド・ダリアと申しますっ。」


私が何と返そうかと悩んでいる間に、テンパり気味のシャロン様が頭を下げた。

私相手だと『知ってるわ』とバッサリ切り捨てそうなアヤネ様は、シャロン様にニッコリと笑む。


「ご丁寧にありがとうございます。私はアヤネ・サイリと申します。」


「…私はサラサ・トウマと申し…」

「知ってるわ。」

「……………。」


…なんか仲間外れで寂しかったので、さりげなく混ざってみたら、案の定バッサリと切り捨てられました。

流石、アヤネ様。突っ込みの切れ味半端無い。


…では無くて。


「シャロン様とは、つい最近お友達になりました。…といいますか、待ち伏せして、仲良くなってもらいました。」

「……何をしているのよ。貴方は。」


ぶっちゃけてみたら、アヤネ様は、がっくりと肩を落とした。
本当に、残念な子ね…と言わんばかりの視線が刺さります。


「…わたくしを、待っていて下さったんですか?偶然ではなくて。」


……う。

キョトンと瞠られたシャロン様の目が痛い。
すみません…純真無垢な乙女を待ち伏せなんてして。


「……ごめんなさい、シャロン様。……怒ってます?」

「いいえっ!…ですが、何故そのような事を…?」


シャロン様のもっともな問いに、アヤネ様の視線も私へと向けられた。


私は悩みつつも、事の成り行きを説明する事にしました。
…別に隠す様な事じゃありませんしね。少なくとも、この二人には。


陛下を好きになった事や、あの方の為に何かしたいと思った事、

それから、後宮の皆に仲良くしてもらいたいと思った経緯を、掻い摘んで説明した。


二人は、とても驚いていました。シャロン様は大きな目が更に大きく。

アヤネ様は、呆れとも驚嘆ともつかない顔で、ため息をついた。


「…貴方の一途さには恐れ入るけれど……それは中々無謀な話よ。」

「はい。」


私は苦笑を返すしかありませんでした。
確かに、誰が見ても無謀な事です。


側室の方々は、単純に相性の問題だけで仲違いしている訳ではありません。其処にはどろどろとした政治の問題すら絡んで来るでしょう。

後宮入りした理由も様々で、

私やアヤネ様はたぶん、父の出世の為で、

シャロン様は、藩属国の王女様ですから、人質…とまではいきませんが、牽制の意味合いがあるんでしょうね。


他の方々も、それぞれに背負っているものがある、きっと。


「…で、ですが…とても素敵な事だと思います…!」

「…シャロン様。」


シャロン様は、真っ直ぐに私を見つめ、懸命に訴えた。


「話し掛けていただいて、私が嬉しかった様に、…他にもいらっしゃるかもしれません。仲良くしたいと思っている方が。」


わたくしにも、協力させて下さい。

強い瞳で、シャロン様はそう言った。


懸命な言葉に、胸が暖かくなる。…なんて良い子なんでしょう。


じーん…と私が感動していると、向かいの席からため息が聞こえた。


顔を向けると、理知的な美貌に、苦笑いを浮かべたアヤネ様と目が合う。


「……しょうがない子ねぇ。」

「……アヤネ様?」

「…貴方達だけじゃ、どんな危険な事になるか分からないわ。…お姉さんも、一緒に考えてあげる。」

「…!」


悪戯っぽくウインクして見せたアヤネ様は、とても優しく微笑んでくれた。


私は嬉しくなって立ち上がり、二人に向かって勢いよく頭を下げる。


「…よろしくお願いします!」


…なんて私は幸せ者なんだろう。



無茶無謀な計画に付き合って下さる大切な仲間が、二人もできました。


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