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側室(仮)の提案。



「………………。」

「………………。」


私達は互いに無言のまま、暫し見つめ合った。

…ただしその様子は真逆です。


緊張で倒れてしまうんじゃないかという位、頬を赤らめるシャロン様。


…そして、そんなシャロン様をガン見する私。

だって、可愛い可愛いシャロン様が、こんな間近に!!しかも緊張で涙目なんですよ!?

そりゃガッツリ見るでしょう。こんな機会早々ありませんからね。


「……………、」


ああ、可愛い…。

ピルピル震えている…多分此処で私が『わっ!!』とか大きな声を出したら泣いてしまうんじゃないかと思います。

……ああ、駄目よ沙羅。やってみたい…超やってみたいとか思っちゃ。


「……………ぁ、の」


悶々としている私に、シャロン様は小さな声で話し掛けてきた。
それによって私は、危うい方向に行きかけていた頭を正常に戻す事が出来ました。


…危ない危ない。
仮にも側室でありながら、開けてはいけない扉を開けるところでしたよ。


「はい。何でしょう?」


ヘラリと笑みかけると、シャロンは漸く、少しだけ肩の力を抜いた。

よかった。近所のちびっ子相手に鍛えた『警戒心を抱かせないスマイル』が有効な様です。
私安全、コワクナイヨー。


「…昨日、此処にいらした方ですよね…?」

「…………はい。」


シャロン様の質問に、今度は私が挙動不審になる。

誤魔化しようが無いから頷いたけど、変質者扱いされないよね…?


シャロン様は、少し躊躇った後、決意した様に面をあげた。
長い睫毛に縁取られた空色の瞳が、懇願する様に私を見る。


「……黙っていては、下さいませんか…?」

「……はい?」


………え?何を??


予想外の言葉に、私はキョトンと目を瞠る。
だがシャロン様は、そんな私の間抜け面が目に入っていないのか、泣きそうな顔で言葉を続けた。


「……餌付けなんて、してはいけない事は分かっているんです。…侍女にも止められておりますし。」


…えっ!?駄目なの?
私いま、思いっきりやろうと思っていましたが。
ていうか今現在餌を持っているんですが。

自分の事に必死なシャロン様は、私の手元のハンカチが何を包んでいるかまで思い至らないようです。


「……規則には、」

「…規則には書いてありません。ですが、皆様が暮らしている場所で、その様な勝手は許されませんでしょう?」


控え目に口を挟んだ私に、シャロン様は力無い笑みを浮かべる。


「…私は王女とはいえ、辺境の国に住んでいた田舎者。…皆様が当り前に出来る事さえ聞かなければ分からない、常識知らずなのです。」

「…………………。」


悲しそうな表情には、諦めや卑屈さが混在していた。
予想でしかないけれど、それらの言葉は、此処にきてからシャロン様が、誰かに言われた事なんじゃないでしょうか。


少し外れた行動を、こうも恐れるのは、何かをする度に、誰かに嘲笑われたから。
所詮、田舎者と、影口をたたかれたからなのでは。


「………………。」


規則に書いてないなら、いいんじゃないですか、と開き直るには、私くらいの図太さが必要ですからね…。
繊細で大人しいシャロン様には無理かもです。


……………うーん。

どうしましょう。


「……………………………………あ。」

「……?」


…忘れていました。

東屋の欄干に、昨日シャロン様が餌をあげていた小鳥たちがとまったのを見て、私は手元の餌の存在を思い出す。


シャロン様から視線を外し、私は小鳥たちに向かって餌を差し出した。


…………しかし当然の事ながら、近付いてくれません。
私無害。コワクナイヨー。


しょんぼりとしながらも、欄干に少しだけ餌を置いた。


そして離れると、小鳥の一羽がちょこちょこ近寄ってきて、それを啄む。


よかったー。


一羽、一羽と増えてゆき、みんなで私の餌を食べてくれる。
本物の小鳥さんは、警戒をといてくださった様。


「…………………。」


振り返ると、綺麗な青い瞳を瞠るシャロン様。

此方の小鳥さんも、警戒をといてくださると嬉しいのですが…。


私はもう一度、シャロン様にヘラリと笑い掛ける。


「…これで同罪です。」


更に大きく瞠られた瞳を見つめながら、『二人きりの秘密にしましょう』と小さく呟くと、


見開かれていた青空から、雨粒みたいな雫がこぼれ落ちた。


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