挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
目指す地位は縁の下。 作者:ビス
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

10/120

側室(仮)の反省。


 皇帝と、そんな話をした翌日。
またも早朝から東屋へ向かった。


 ……懲りないなぁ、って思うでしょう。
ですが一応、私なりに考えての事なのです。


 私の迂闊な行動によって、すっかりシャロン様を警戒させてしまいました。
元々繊細な御方です。あのご様子からすると、数日は此処に近寄らなくなってしまうんじゃないかと思いまして。


「…………」


 現に、いらっしゃいません。
前日の時間を、過ぎているにも関わらず。


 無言で立ち尽くす私の頬を、少し冷たい風が撫でていく。
聞こえるのは小鳥の囀りと、風が梢を揺らす音だけ。辺りを見回しても、可憐な少女の姿は見当たらない。


 ……やはり、私が不用意に驚かせてしまったせいですよね。


 自己嫌悪に、私の頭は下がってゆく。近くの柱に手を突いて、項垂れそうになったのを堪え、私はぐっと前を向きました。


 私が今やるべきは、反省会ではありません。それはまた今夜にでもやろうと思います。
今まず優先しなければいけない事は、別にあります。


 懐に手を入れ、ハンカチに包んだものを取り出す。
ジャジャーン!と効果音を入れながら。……勿論心の中でですよ。



 丁寧に包まれたそれを開くと、黄味を帯びた粒が姿を現した。穀物の一種ですが、私には種類までは分かりません。たぶん粟とか稗とか、そんな感じ。
私のせいで、シャロン様にご飯を貰えなくなってしまった小鳥さん達の朝ご飯です。


 さぁ、おいでませ!


「……………………………………………あれ?」


 広げたまんまのハンカチを手に、私は立ち尽くす。
……朝なので、小鳥さんの囀りは聞こえてきますが、全く下りてくる様子が無いですね……なんでだ。


「……うーん」


 たぶん何かがいけないのでしょう。一生懸命頭を捻り、昨日の光景を思い出してみる。
白く細い手を差し出し、手の平や肩で戯れる小鳥を愛でるシャロン様、マジ天使。

……ではなくて。


もう少し前………あ。
そういえば、口笛で呼んでました!


なるほどなるほど。


では!


「……………………………………」


 口を窄め、息を吐く私の唇からは、空気の洩れる物悲しい音がするだけ。
……そういえば、私、口笛吹けないんだった。


 ……なに?お前、なんなら出来るの?って顔で見ないで下さい!


 例え口笛さえも吹けない裁縫も出来無い、ないない尽くしの団子蟲でも、生きているんだから一応!!


 ……自分で言って哀しくなりました。でも一応、私にも特技的なものはあるんですよ。
シャロン様みたいに、女の子らしさを期待されると大変困りますが。


「………あの、」


 あ、でもお掃除は好きです。雑巾の絞り方には定評があります。
窓掃除とか、ピカピカになっていく過程が超楽しいですよね……身長がチマいので、脚立は必須ですけど。


「………あ、あの」


 料理は……壊滅的に下手ではありませんが、上手とは言えませんね。何というか、とても微妙なものが出来上がります。
砂糖と塩を間違えるベタさは無いものの、ウスターソースとオイスターソースを……薄口と濃口醤油を等、地味なミスを繰り返す為、食べられない事は無い……が、美味いとも言えない、という、大変反応に困る仕上がりとなります。

 幼なじみの男の子にはよく、『お前の料理はじんわりマズい』と評価されてましたっけ……。


「…………あ、あのっ!!」
「ひょっ……!?」


 遠い目をして過去を懐かしんでいた私は、背後から大きめの声をかけられ、息を飲む。
普段出さないような、妙な声が出てしまいました。
バクバク早鐘を打つ胸を押さえながら、後ろを振り返ると、そこには……


 白皙の美貌を、緊張の為か赤く染めた、

 可憐な天使…ではなく、今日も可愛らしいシャロン様が立っておりました。


.
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ