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ミコトの再誕

「リカーナ殿、かたじけない。カムイだけでなく、ヤマタまで救っていただいて」

 リカーナは時空にレムリア王国を作り、マナをほとんど使っていた、しかし残ったマナの呪力を、オロチに焼き払われたカムイやヤマタのヒトに使い、回復させたのだ。


「いいのです、マオ様。元はと言えば『オロチ』は私たちを追ってきたのに違いない。私は『ルノクス』のマナの力を全て受け継いでおります。娘たちは『ゴリアンクス』のヨミ様の力を受け継ぐ父を持ちます。マナとヨミ、光と闇、生と死を司る力は娘たちの方が優れておりますわ」

そういうリカーナの身体は消えかかっていた。それでもなお、彼女はミコトの再誕を決意したのだ。

「マンジュ、アロマ。よく聞きなさい」

石化したミコトを前にして、リカーナは娘にそう言った。

「転生の禁呪を今、あなたたちに伝授します」

「転生の禁呪……」

二人は同時にそうつぶやいた。


「そう、転生の禁呪は、巫女の命と引き換えに行う事ができる一度きりのものです」

リカーナがミコトの身体に触れた。光に包まれミコトの身体が浮かんだ。


挿絵(By みてみん)


「ストラルーダ・カムイ・ブ・ミコト、レムリカーナ!(カムイの王ミコトよ、レムリア王国へ飛べ)」

一瞬の七色の光に包まれたミコトの身体が瞬く間に消え去った。額を抑え、リカーナは倒れ込んだ。それをシラトが抱きとめた。

「シラト、あなたの回復はアロマがしてくれる、マンジュはオーロラの鏡からカムイの嵐を抜きなさい」

「こうですか、お母様?」

不思議な事にマンジュが柄を握ると、カムイの嵐は七色の大剣に変わった。彼女はそれを鏡から抜いた。

「今、カムイの嵐は『七龍刀』となりました。ミコトの魂がその剣に転生したのです」


マンジュがその『七龍刀』をリカーナに渡す。逆手に持ち、リカーナは自らの胸を貫いた。滴り落ちるはずの血はその刀に吸い込まれていった。

「お母様、なんてことを」

マンジュリカーナが叫んだ。

「いいのです、禁呪とはこういう事です」

そしてリカーナは刀をレムリアに送った。

「エスタブーラ・カムイ・リ・ミコト、レムリカーナ!(カムイの王ミコトよ、レムリア王国に産まれ変われ)」

『七龍刀』はミコトを追う様に時空に消えた。

「マンジュ、追いなさい!ミコトの石化した体を刀が貫き、新たな魂が入ります。ミコトはすでにレムリアに甦っています。ただ前世の記憶はほとんどありません、時が経ち過ぎました。アロマはシラトの体を回復させるのです」


 そう言い残すとリカーナはオーロラの鏡に吸い込まれ始めた。

「愛する娘たち、マナもヨミの力も併せ持つ立派な巫女たちよ。今よりあなたたちは『マンジュリカーナ』『アロマリカーナ』と名乗るがいい。私はオーロラの鏡の中に入りましょう。そしてずっと見ています、レムリア王国もカムイもそしてアガルタのことも」

「リカーナ殿」

「マオ様、オロチは私たちを狙ってこの星に来た、大いなる闇の悪魔に違いありません。レムリア王、ビートラが宇宙空間で打ち砕いたナツメの石の一つが『ヤマタノオロチ』に化身したのです。もしかするとアガルタにもそれは、飛んできているかもしれません……」

リカーナが消え去ると、マンジュリカーナはレムリアに戻った。アロマは覚えたての回復術をシラトに使った。そのため深く傷ついていたシラトを完全に回復するのには数日もかかった。


 リカーナが言い残した通りにミコトはレムリアで別の若者に生まれ変わっていた。


「ここは?」

「フローラ国、トレニアの丘です」

レムリアの母星、ルノクスと同じ花がフローラ国の丘に咲いていた。ミコトは次元を越えたレムリア王国で転生を果たした。

「美しい人、そなたの名は何と?」

「マンジュリカーナ。あなたは?」

「すまん、思い出せない……」


 彼の記憶が消去されているのを確かめると彼女はこう言った。

「あなたは、カムイ・ブ・ミコト、『カブト』そう伝え聞いています」

彼女はとっさにそう答えた。男は笑った。

「カブトか、そうだった気がする。ありがとう、マンジュリカーナ。心地よい響きだな」

「姫、リカーナ様が命と引き換えに禁呪を使うほどのものかどうか、その男を試させてもらう!」


 ルノクスの三騎士の一人『ミルノータス』が大アゴを開きカブトの腹を挟んだ。

「ムン、いきなり何だっ!」

カブトはそのアゴを掴み広げると、数度振り回し投げ飛ばした。

「力はあるようだな。どれ、ゲル・ピック!」

ゲルノータスが鋭い切っ先で彼の額を狙った。それを寸前でかわすとカブトは回転後ろ蹴りをコガネ型のムシビトに食らわせた。

「身体は頑丈か、電磁ムチ!」

チョウ型のクルノータスのムチが長く伸び、カブトの首に巻き付き、数万ボルトの電気がカブトの体に流れた。いやな匂いがした。しかしひるみもせず、カブトはそのムチを引きよせると、ムチを握った指から煙を出しながらもクルノータスを地面に叩き付けた。三騎士はカブトの屈強さを見て、目を見合わせた。


「お止めなさい、三騎士」

マンジュリカーナが言うまでもなかった。ミルノータスがカブトに笑って言った。

「さすがは、リカーナ様の選んだ男。ふふふっ、ビートラ様に久し振りに会ったようだ」

 カブトはこの後、三騎士とともに修行をし、マンジュリカーナとともにレムリア王国をまとめあげる。それはアガルタからは遠い、異界の歴史だ。シラトはもちろん、まだそれを予見するものはいなかった。


第二章 了

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