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砂漠の用心棒

「うえー、この暑い中。人魚はどこにいるのかしら?」

ラナはモンゴルの砂漠は見たことがあったが、サハラの砂漠はまるで規模が違う。赤道直下の陽射しは容赦なく二人を射抜く様だった。二人はオアシスを旅する商隊の用心棒として雇われた。盗賊達が荷物を狙って襲いかかるため、大きな商隊はオアシスごとに次のオアシスまでの用心棒を雇う、それは危険な仕事だが食費がいらないのがいい。大きな商隊が腕自慢の用心棒を集めている。その話しを二人は聞いたのである。


挿絵(By みてみん)


「なかなかやるわね。私のアイアンハンマーをそんな棒切れで受け止めるなんて」

隣のらくだに乗った用心棒の一人、『エリナ』と名乗る大槌使いが里香に近づいた。里香は黄色い棒を自在に使い、彼女と戦ったのだ。ラナはプラチナ・チェーンで対戦相手をことごとく縛り上げた。他に腕自慢の用心棒が既に四、五人雇われている。商隊の荷駄は厳重に縛り付けられていた。盗賊が現れればすぐに逃げ出せるように大きならくだが二頭立てで、それを引いていた。


「オアシスが見えたぞ」

さすがに用心棒のいる商隊には怖れをなしたのか、盗賊は現れない。用心棒としては楽な仕事だった。

「お陰で、無事に着きました。ささやかな宴を開きますので今宵はこちらにお泊まりください。もしよろしければ次のオアシスまで用心棒を続けていただくと心強いのですが?」

里香は黒パンとヤギの乳を取ると、ラナとエリナの間に座った。他の用心棒は酒を飲んで陽気に歌まで唄っていた。


「あーあ、あんなに酔っぱらって。今、盗賊に襲われたらどうするのかしらねぇ」

黒パンを口に放り込み、ごくりと飲み込むとラナは笑って言った。エリナはヤギの乳を一息で飲み干すと立ち上がり、つぶやくようにこう言った。

「これからきっと恐ろしいことが起こる、私はそれを確かめにここに来た」

「里香、エリナの言う通りなの?」

「ええ、ラナ姉さん。眩しい閃光の後、あの用心棒たちは皆消滅する」

「まさか、そうは見えないけれど」


 さっきの商人が荷駄を引いたらくだに乗ってきた。荷の綱はほどかれていた、その天幕を降ろすと巨大な水槽が現れた。水槽内には猿ぐつわをされた人魚が入っていたのだった。人魚は目隠しをされていた。商人の身体がぐにゃりと歪んだ。


「魚人、チョウチンアンコウ、メルトドス」

そう言うと魚人は用心棒たちに頭上の発光器からまばゆい閃光を放った。

「目、目が……」

人魚の目隠しを取り、眼球が沸騰して、次々と倒れる用心棒たちを無理矢理人魚に見せつけると、メルトドスはぞっとする声でこう言った。

「さあ人魚のかけらを早く出しな。今なら聖水で目を洗えばこいつらは助かるぞ、ゲハハハッ」

 聖水は「エスメラーダを救うためだ」と言っていた魚人の嘘は全ての人魚に知らされていた。聖水を集めるため、今まで魚人は人魚の優しさを利用していたのだった。


挿絵(By みてみん)


「わかりました、これが聖水です。早くあの者達を助けてあげてください」

聖水の小瓶をメルトドスに渡すと、人魚は指を組み祈るように言った。メルトドスは赤い目を黒いサングラスで覆うと、再び人魚に目隠しをした。

「心優しい人魚よ、これから起こる事は見ない方がいいだろう」

 そう言うと、さっきの閃光よりもさらに強力な光が魚人の発光器から今度は彼らが蒸発するまで照射された。人の焼ける匂いが辺りに充満した。こらえきれずに、ひとつの影が飛び出した。


「この化け物め、たたき殺してやる!」

「エリナ、だめぇー」

「何の真似だ。わしが誰か知っているのか、おまえの目玉も焼いてやろうか?」

再び閃光が光った。その瞬間エリナのアイアンハンマーが魚人の左肩に打ち降ろされた。一撃で魚人の左腕が吹き飛んだ。

「ぐげぇあ、な、何故だ!」

目隠しをしたままのエリナが言った。

「おあいにく様。あなたの匂い、ここに着くまでにもう完璧に覚えたわ、真っ暗闇でもぶっ叩けるわよっ!」


そのエリナの後ろから別の魚人の匂いがした。

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