神様、どうか一瞬だけ勇気下さい。
お願い、5分でいいから私と彼のためだけに時間を止めていて。
神様の声が聞こえた気がした。
「ダッシュ!」
もう夜明け。
空は真っ暗なのに私は真っ白い粉や甘いチョコレートたちと見つめ合ってる。
「何でふくらまないんだろ〜…」
格闘中。
食べるだけなら簡単なのに。
甘くて美味しいスイーツも、作るとなると甘くはない。
もうすぐママやパパたちが起きてくる。
急がなきゃって焦れば焦るほど微妙な仕上がり…。
「もうやめちゃおっかな…」
この夜中何度思ったんだろう。
でも私はやめなかった。
絶対作って、彼に渡すんだ!!
「痛っ…!あ〜切った。」
チョコレートがかたい。
チョコレートきざんで指切る私が情けなかった。
私にはきっとはっきり言ってスイーツ作りの才能はないんだと思う。
でも彼を想う気持ちなら絶対誰にも!
…負けないのかって聞かれるとはっきりそうだって言える自信がない。
私なんかっていっつも思ってる。
私は自分に自信がないの。
でも彼は言ってくれたんだ。
「可愛いね♪」って。
彼だけは、こんな私をいっつも褒めてくれる。
頑張った日にはよく頑張ったねって。
失敗しちゃった時もえらかったねって。
この子たちにはそんな私の彼への想いがいっぱい詰まってる。
それだけは確実に自信を持って言える。
ありがとうって言いたいんだ。
これからもよろしくねって伝えたいの。
それから本当は、大好きだよって君に言いたい。
「…出来た!!」
ふと窓の外を見たら空が明るかった。
午前8時56分。
いつも彼が乗る電車。
だからホームで待ち伏せして渡そうって。
だけど彼が来ない。
来ない。
来ない。
来ない。
来た!
だけど私の足は動かなかった。
柱の陰に隠れたっきり顔も出せない。
せっかく…作ったのにな。
神様、どうか一瞬だけ勇気下さい。
お願い、5分でいいから私と彼のためだけに時間を止めていて。
神様の声が聞こえた気がした。
「ダッシュ!」
冬の冷たい、でも春のやわらかな風に背中を押され私はダッシュした。
「…あの!これっ」
スイーツは食べると甘くて、作るのは甘くない。
そしてスイーツは、あげるとめちゃめちゃ甘い!
「ありがと。」 |