僕は、辻山のことが嫌いだった。
自分の知識を披露することを最大の喜びとしていて、
それはいつも、僕に対して行われた。
僕が、この上なく無知なことをあざけ笑い、自分がいかに知識を持っているのかを喋るのだ。
そういう時の彼の目は、悲哀に満ちていて僕のことを哀れむのだ。
それが堪らなく嫌で、僕は時々、胃の中のものを全て吐き出さなければならなかった。
僕には、知識で辻山を圧倒することが出来ないことはよく分かっていたし、
彼が、博識な知識人だということも認めていた。
でも、僕は辻山が嫌いだった。
その日も、僕は朝から胃がムカムカしていて、出勤する前に薬屋に寄った。
しかし、いつも胃薬を買っているドラッグストアは改装中で、仕方なく近所の薬薬局に開くのを待って入った。
急いでいたが、なかなか目当ての薬が見付からず、店内を見て回っていると、妙な薬が見付かった。
「頭が良くなる」
という、いかにもなネーミングで、売れてますシールが貼ってあった。
僕は迷わずこの薬を買った。
さっそく、いつも薬を飲むために常備しているミネラルウォーターで、薬を飲み下した。
しばらくすると、みるみる頭が冴えてきて、頭の中がすっきりと明瞭になっていった。
その日の僕は何もかも上手くいったし、つまらないミスもしなかった。
ただ一つ誤算だったのは、辻山に薬を見せたことだった。
彼は、僕を哀れんだような目で見て言った。
「これは、ただの頭痛薬だ。」
僕はさらに、辻山の事を嫌いになった。
最近は頭も痛くなってきて、頭痛薬を常備している。
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