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賢者の弟子を名乗る賢者 作者:りゅうせんひろつぐ
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219 全員集合

さて、コミカライズ12話目の無料版が公開になりましたね。
こちらもよろしくお願いします!
二百十九


 空からの景色を楽しみながら口にする食事というのは、空飛ぶワゴン専用の贅沢である。だが、青空の下、自然に囲まれた中で食事をするというのも、ピクニックのようでまた楽しいものだ。
 そして、そんな贅沢な二択を幾らでも選べるミラは今回、後者を選択して爽やかな草原の只中にある大きな湖の畔で、優雅な昼食と洒落込んでいた。

「こうして長閑に過ごすのもまた、乙なものじゃな」

 遠くには雲が浮かび、空には燦々と太陽が輝く。周囲一帯は草原で、傍らには透き通るほど綺麗な湖。まるで絵に描いたような風景が広がるそこで、ミラはほかほかのソースカツ弁当を堪能していた。
 また、ミラから少し離れた場所には、ガルーダの姿もあった。ガルーダもまた休憩がてら、湖の魚を嘴で器用に捕まえての食事中だ。しかし、油断は一切ない。常に周辺の気配を警戒し、またミラの周囲に涼風を送るという細やかな気配りも忘れてはいなかった。



「さて、今が丁度良さそうじゃな」

 そうこうして和やかな昼食を終えたミラは、すくりと立ち上がり草原を見回す。人里離れたこの場所には人影は皆無で、ド派手な事を目立たずにやるには打ってつけといえた。
 そのような場所で、ミラがしようとしている事。それは、昨日改めて思った事の実現。つまり、未だ召喚していなかった者達への挨拶だった。

「まずは……」

 一番手として誰に挨拶をしようか。そう考えたミラは、案外直ぐに誰かを決めた。それは、ここ最近でとても世話になっている者。古代地下都市だけでなく、つい昨日の夜も大活躍した者である。

【召喚術;ウンディーネ】

 ミラが術を発動すると、水面が揺らめくように魔法陣が出現し、そこから一人の美しい女性が姿を現す。どことなく気の弱そうな瞳に、深海のような群青の長髪。露出の少ない純白の衣をまとい、首元には魚を模ったペンダントが下げられていた。
 この女性こそが、水の精霊ウンディーネだ。

「久しぶりじゃな、ウンディーネや」

 どこか俯いた様子のウンディーネに、ミラはそっと覗き込むように声をかける。少々気弱な性格のため、久しぶり過ぎて驚いたのだろうか。そう思ったミラだったが、直後にぎゅっと抱きつかれた、というより抱きしめられた。
 しかしミラは、慌てない。生まれた時から育ててきたので、ミラにとってウンディーネは娘のようなものだからだ。

「おっと、そうかそうか。すまんかったな。わしも会えて嬉しいぞ」

 ミラは、子供をあやすように、ぽんぽんとウンディーネの背を叩いてから、そっと離す。ウンディーネの表情は、とても嬉しそうだった。言葉はまだ話せないが、ミラは直感で何を言っているのかを理解する。顔を見ればわかるという、深い絆が成せる業だ。
 そう、ウンディーネは、まだ言葉を話せない。それは知能がないというわけではなく、単純に人へ言葉を伝える手段が、まだ未成熟というだけだ。それが成熟するには、ばらつきはあるが概ね生まれてから数十年ほどの時を要する事となる。
 しかし、精霊同士であるならば、幼精霊の頃からコミュニケーションは可能だった。人と精霊との情報伝達手段が別物であるという事だ。
 なお、ワーズランベールなど、既に会話が出来る精霊を間に立てれば、ウンディーネとも会話は可能だったりする。しかし、今のミラにそれは必要ない。深い絆による以心伝心が……などという曖昧なものでなく、もっと単純で確実な方法があるからだ。

『お父様がお母様になってる。凄いサプライズ。でも可愛い。それに温かい。もっとぎゅってしたいな。駄目かな。どうかな。──と、言っているぞ』

 そのようにして、ウンディーネの声を精霊王が伝えてくれるからだ。そう、ミラが契約している全ての精霊達と、その絆を通して繋がりを持つ精霊王にとって、ウンディーネの言葉など容易に聞けるもの。そして、それを通訳の如くミラに伝える事もまた簡単なのだ。

『そ……そうか……』

 気弱で、まだ少し甘えたい様子のウンディーネ。その言葉を、精霊王はそのまま再現し伝える。最近は何かと奔放だが、精霊王というだけあって、その声は確かな威厳に満ちたものだ。思わずひれ伏したくなるような重厚で渋い、いわばとても、らしい声である。そんな声で精霊王は、ウンディーネの言葉遣いまでをも見事に再現した。
 もはや、ミラには苦笑するしかなかった。出来れば、同じ事が出来る立場にいる、マーテルに代わってほしいという言葉を呑み込んで。
 ただ、その想いは聞き届ける。ミラはウンディーネを、そっと抱きしめた。それと同時に感謝を伝えた。シャワーやら風呂やらで世話になっていると。

『お母様の役に立てて嬉しい。もっともっと頑張るから、もっともっと頼ってほしいな。──と、言っているぞ。やはりミラ殿は愛されているな。我の目に狂いはなかったという事だ』

『そうよね。私もミラさんを見た時、直ぐにわかったもの。皆に愛され、また皆を愛してくれているって』

 再び精霊王の通訳が入ると共に、マーテルまでもが介入してきた。そして精霊王とマーテルは、そのまま各精霊達の言葉を踏まえて、語らい始める。人と精霊の関係が、このままずっと近く、温かいものになっていくと良いのに、と。ただミラにとって、その状況は余計な情報が多く、脳内で混線しているかのようだ。

『あーっと……それは、光栄じゃな』

 そうとだけ返事をしたミラは、脳内の会話を一度遮断してから、今一度ウンディーネに向かい合った。そして「これからもよろしく頼む」と、優しくその頭を撫でる。するとウンディーネは嬉しそうに微笑んで、またミラに抱き付いた。

「やはり、挨拶をして正解じゃな」

 ウンディーネを送還した後、ミラは何だかんだで後回しにしてしまっていた事を後悔しつつ、契約している者達全てに挨拶をしていった。
 虹精霊のトゥインクルパムを始め、数多くの精霊達、癒しの白蛇アスクレピオスや大蛇のウムガルナ、強面過ぎたため空の足として落選したヒッポグリフ。また、双子でありながら妹の姿が大きく垢抜けていたコロポックル姉妹に驚き、二回りほど大きくなっていた霊獣、氷霧賢虎のジングラーラに驚愕したりと大騒ぎであった。



「皆、とても優しい者ばかりじゃ。わしは随分と恵まれておるのじゃな」

 挨拶を交わした全ての者達は、ずっとほったらかしだった事を責める事なく、その再会を心から喜んでいた。ミラは、そんな皆の温かさに、ほろりと涙を浮かべながら、本物となった縁に感謝する。
 そうして一時間以上に及んだ挨拶を全て終えたミラは、朗らかな表情を湛えたまま出発するべくワゴンに乗り込んだ。

「これでもかというほど、ぐっすりじゃのぅ……」

 チラリと端に目を移すと、そこではまだアンルティーネが眠っていた。その熟睡具合からして、まだまだ起きる気配はなさそうだ。新しい契約は暫くお預けである。
 だが既に合流しているので、何の問題もない。目が覚めるまで、ゆっくりと待てばいいだけだ。

「さて、どっちにしたものか」

 目的地を目指して飛び立ったワゴンの中。ミラには、幾らでも時間を潰す手段があった。炬燵の上に並べた二つのそれだ。片方は、最新の技能までを網羅した『技能大全』。もう片方は、合成術を始めとして術関連について特に詳しく書かれている、ソウルハウルの研究書のコピーである。
 どちらも、ものに出来れば今より強くなれる事は確実だ。
 技能は、『ミラージュステップ』や、『魔導の観察眼』『転界心法』などなど、多様に富んだ効果が魅力である。直接的な戦闘よりも、それをサポートする効果が多いのが特徴だ。中には、特定の匂いを視覚化するものや、寝溜めが出来るようになる、などといった変わり種もある。
 対して研究書のコピーは、主に合成術についてと、それを追及する際に集めた各術の情報が書かれていた。更に、死霊術で使える新たな技能など、術中心の構成だ。

「ふむ……。今回は、こちらにするとしようか!」

 技能大全か、研究書か。悩んだ末に、ミラは後者を選んだ。どちらも非常に興味の尽きないものばかりである。ただ、ミラの中で少しだけ差異があった。
 既に半分ほど読み進めていた技能大全と、まだ入手したばかりの研究書。つまり、目新しさが勝ったのだ。加えて研究書は、召喚術に直接影響のある内容がちらほらとある。マキナガーディアン戦で活躍した灰騎士。それは、この研究書の知識によって完成に至った。召喚術の進化の可能性を大いに示したのだ。
 更なる力、更なる高みへ。召喚術こそが最強である。そんな事を考えながら、ミラはマッドな笑みを浮かべ、研究書を精査し始めるのだった。


「おお、これは……」

 研究書を読み耽る事、一時間と少々。そこに記された知識をじっくりと吸収していたミラは、途中、非常に気になる記述を見つける。それは、各術における使役系術式の共通点、というものだった。
 使役系。つまり、自分以外の存在を扱う術の事であり、召喚術の召喚、死霊術のゴーレムや不死操作、陰陽術の式神などがそれに当たる。
 召喚術は、契約を起点として、協力者を瞬時に呼び寄せる術である。なお、人工精霊の召喚は若干勝手が違う。人工物に宿るこの精霊は、契約時にその依代を術者に移す。そして召喚時、自らの力を術者のマナに写して存在を形作るのである。つまり武具精霊召喚は、召喚というより精霊の分身の創造に近い。ゆえに、ダークナイトやホーリーナイトは、複数を同時召喚可能なのだ。

 死霊術は、仮初の魂を生み出し、それを死者の肉体や無機物に宿らせ、意のままに操る術である。一見すると恐ろしく、邪悪に思える術だ。しかしその本質は違う。むしろ、聖術よりも神聖であるというのが、銀の連塔での考え方であった。
 死霊術で生み出された魂は、正の力を秘めている。これによって動く死者は、不死系統の魔物とは違い、聖属性で浄化される事はなく、太陽の光に弱いという事もない。更に元となった肉体によっては、聖なる力さえ振るえる。
 仮初とはいえ、これだけの魂を生み出してしまう死霊術。ゆえに最も神の領域に近いとして、神聖な術とされているのだ。
 ちなみに、ダークな雰囲気だから選んだというソウルハウルが、この考えを支持していないというのは余談である。

 陰陽術の式神は、想像を思い通りに具現化する術である。思い描いた存在と、それにまつわる要素を一つの術式にまとめ上げ、式神とするのだ。ゆえに、想像力と発想力が重要な術となる。
 式神を構築する仕組みは単純で、器となる存在と、そこに込める力を、陰陽術の基礎である五行より選ぶだけだ。しかし、この五行が重要で一番厄介な部分だった。
 器については、それなりに人生経験を積んでいれば問題はない。何を器として、どのような存在として形作るかは想像次第。既存の動物であったり、幻獣であったり、はっきりと脳裏に描ければいい。難しいのは、その次の段階だ。
 器の特徴づけである。俗に、キャラ設定などとプレイヤーの間で呼ばれていたこの要素は、式神の特性を大きく決める大事なものだった。得意不得意をあえて定める事で、突出した能力を生み出すのである。
 そして、その能力を生み出すために必要なものが、五行となる。木火土金水からなる様々な素養を式神に組み込む事で、自由にカスタマイズ出来るのが式神の特徴だ。ステータスの強化や特殊能力の習得など、五行の効果は多岐に渡る。ただここで気を付けなければいけないのが、特徴づけによる相性だ。気性を荒く設定した式神と火の相性は良いが、水との相性は悪いなど、五行に基づいた多くの要素が複雑に絡み合う。
 この事で、初めから新たな式神を作り出すというのは、相当に困難を極める作業となっている。だが、ここで何もかもを自分で、などと考える必要はない。多くの先代達が試行錯誤した式神の構成が、しっかりと遺っているからだ。
 その中でも、最高位とされているのが、カグラも大いに活用している四神である。長い年月の研鑽を得て、器と五行の要素を最大限にまで引き出す事に成功した式神だ。とはいえ、相当に高難度の術式によって組まれているので、余程の熟練者でなければ、これを扱いきる事は出来ないだろう。
 と、このように、大きく分けて式神には二種類存在する。一つは、歴代陰陽術士の知識と経験が積み重ねられた歴史ある式神。もう一つが、術者の想像力のみで作り出す、新生の式神だ。
 なおカグラは、四神に負けず劣らずの強力な式神を新たに生み出す事に成功している。それは、虎よりも一回り大きな姿をした、マンチカンベースの猫又だ。全身で猫をもふりたいというカグラの願望により誕生した、罪深き式神である。

 以上三種は、使役系といっても術種が違うため、全くの別物として扱われている。しかし、ソウルハウルの研究結果によると、そこに使われている術式に、幾つかの共通点が見つかったという事だ。

「これは、興味深いのぅ……」

 その共通点を利用した合成術というのは、まだ研究途中のようで、色々と問題があるらしい。だが、この仕組みを詳しく調べたところ、幾つかのクラス専用技能の基盤が同質のものであると判明したそうだ。
 召喚術や陰陽術、死霊術のどれにもある技能、対象の回復や強化など似た性能のものは、名称は違えど仕組みは同じだという。
 その意味するところを即座に理解したミラは、ぞくりと肩を震わせる。つまりこの研究は、これまで似た性能がなかった技能の中に、他にも流用出来るものがあるのではないか、という内容だったのだ。
 そこでミラは、改めて、死霊術士と陰陽術士の技能を思い出す。そして、その中から、類似した性能でない技能を思い浮かべていく。

(遺体の記憶を読み取る……、遺体を長期保存する……、五行相生の影響を高める……、五行相克の影響を高める……。ふーむ……これは専用過ぎて流用出来そうにないのぅ。他には──)

 と、そこまで考えたところで、ミラはある日の事を思い出す。それは、セントポリーの街での出来事。五十鈴連盟の支部で、朱雀の式神ピー助を通し、カグラと会話をした事を。
 その技能の名は《意識同調》。効果は、マナで生み出した従者限定で、自分の意識を憑依させる事が出来るというものだ。そしてそれは、死霊術でも有効だったとカグラは言っていた。
 使役関連で、尚且つ陰陽術と死霊術で可能というのなら、ソウルハウルの研究結果からして、召喚術でもまた可であるはずだと、ミラは直感する。
 そう思い立ったが吉日とばかりに、ミラはメモ帳を取り出した。そこには、カグラから聞き出した《意識同調》についての詳細が記載されている。
 ミラは技能大全で知った技能の他、時間がある時には、この《意識同調》の習得にも力をいれていた。しかし、それは未だ形になってはいない。それどころか、メモ通りに練習しているものの、とっかかりすら掴めてはいなかった。
 もしかしたら、召喚術では無理なのか。研究書の記述を見つけたのは、そう思い始めていた矢先の事だ。

(これは、精査する必要がありそうじゃな)

 同じような効果の技能とはいえ、召喚術士と死霊術士、そして陰陽術士とでは、その習得方法も違ってくる。死霊術士と陰陽術士は、きっとその方法がたまたま似ていて、召喚術士では違っていた。ミラは、そんな考えに至る。
 そして、その考えは正解であった。カグラから聞き出した詳細と、ソウルハウルがまとめた研究成果。ここまで情報が揃った今、もうそこから先は早かった。
 出来なかった原因は、いったい何だったのか。ミラは、それぞれの術式の特徴に、技能の習得条件と、その差異、そして共通点などを事細かくメモ帳にまとめていった。





毎日、冷ややっこを食べているのですが、
今後続けていくにあたり、味にバリエーションが欲しいなと思い始めてきました。
今は、すき焼きのわりしたとチューブのにんにくや、ごま油で食べていますが、いつ頃飽きてくる事か……。
なので次に目を付けたのは、サラダ用ドレッシング!
豆腐サラダとかにも、ドレッシングってかかっていますよね。
なら冷ややっこでも美味しいんじゃないだろうか? なんて思ったわけです。
先日、叙々苑のドレッシングもあるという情報をいただきまして、
スーパーで探してみました。
するとありました!
他よりもずっと割高なドレッシングが!

……贅沢してみちゃおうかなぁ。ふふふふふ。
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