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賢者の弟子を名乗る賢者 作者:りゅうせんひろつぐ
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149 勝利宣言

先週、活動報告に記しましたが、もう一度宣伝しちゃいます。
五巻ドラマCD付き限定版の予約が開始しております。
数量限定との事です。よろしくお願いします!
百四十九


「ところで、アーロンよ。あの、空の民とかいう男はどうしたのじゃ? 宴会などやっておったのじゃから、基地にいた最高幹部の一人とは決着済みなのじゃろう?」

 荷降ろしが終わった後、五十鈴連盟の幹部と、名のある冒険者に続き飛空船に乗り込んだミラは、その甲板から周辺一帯を見回しつつ、アーロンに問いかけた。
 制御基地の管理を担当していたという最高幹部の一人、ゼル・シェダル。その者を追っていたという空の民の男。両者が戦ったとすれば、制御基地内か、その周辺である。この辺りを担当していたアーロンなら把握しているだろう。

「なんていえばいいんだろうな。一先ず、最高幹部は死亡という形で確認出来ている。だが、あの男については、どうにも不鮮明でな」

 飛空船が徐々に高度を上げていく中、アーロンはどこか困惑したような表情を浮かべたまま、焼け落ちた村の更に先の方を指し示してみせた。

「あの辺りの岩場に、黒く焼け焦げたような跡があるだろ? 幹部は焼死体として、そこで発見された。で、どういう訳か、あの空の男が身に着けていた服や眼鏡、あと折れた剣に壊れたクロスボウなんかも、その近くに落ちていたそうだ。まあ、そのどれもが酷く焼け焦げていたという事で、脱ぎ捨てていったのでは、という見方が多かったな。と、そういう訳で、あいつがどこに消えたかは分からん」

 見れば広がる岩場の只中に、黒く変色した場所がある。村からそこそこ離れており、なぜその場所で戦ったのかは不明だが、それは遠目からでも激戦だったと確かに分かる痕跡だった。

「そうか……。ゆっくりと話してみたかったのじゃがな……」

 次第に遠ざかっていく黒い岩場を見つめながら、ミラはぽつりと呟く。精霊信仰の里について、その関係について、暮らしについて。
 精霊と召喚術は縁が深い。役立つ知識を得られるかもしれない。そんな期待もさる事ながら、ミラにはもう一つ聞いてみたい事もあった。

「いずれまた、どこかで会えるだろ。折れた剣や壊れたクロスボウを置いていったって事は、直す必要がないって事だ。つまり復讐が終わったって意味だろうからな」

「ふむ……そうじゃな。なら、またその時にするとしようか」

「で、その時になって、誰だお前、って言われるかもな」

「……充分ありえそうじゃ」

 黒く変色した岩場はもう見えない。けれど二人は、その方向を見つめたまま笑い合い、初めて遭遇した時の事を思い出していた。憎悪に燃えながらも冷徹な目をした、空の民の男の事を。

(復讐を遂げた今、あ奴はこの先どのように生きていくつもりなのじゃろうな)

 それが、聞いてみたいもう一つの事だった。復讐に囚われていた空の民の男にとって、それはある意味、酷な質問である。しかし、だからこそ大事なのだ。もしもこれからの目的もなく抜け殻のようになってしまうのなら、放ってはおけないとミラは考えていた。ただ、何が出来るかといえば、それは不明であるが。一人でいるよりは、ずっとましだろう。
 この慌しい決戦の発端ともいえる男、精霊信仰集団フィフスアニマの一派、空の民のグラド・シェダル。ミラは最期までその名前を知る事はなかったが、その存在は、記憶の中に残り続ける事だろう。


 飛空船は一時間もかからずセントポリーの街上空に到着する。その前にミラは、カグラからの要請どおり、なるべく目立つ存在という事でガルーダを召喚済みだ。大いに目立てというミラの指示を忠実に実行するガルーダは、朝日を受けて極彩色に煌く翼を誇示するように悠然と羽ばたかせ、飛空船の周りを周遊している。
 時刻は早朝を少し過ぎたあたり。朝の騒々しさが少し収まる頃。そして、仕事を始めようという冒険者が外に出始める時間帯。
 誰もが、突如やってきた大型の飛空船と、神鳥にでも見紛うほどに輝く怪鳥を見上げ、何事かと騒ぎ始める。それにつられるようにして、家屋に引っ込んでいた者達も徐々に顔を出して、空を見上げる。

「そろそろ始めましょうか」

 騒ぎが街全体にまで伝播したところを見計らい、アリオトが船首に立つ。そして精霊達に「では、よろしくお願いします」と、何かを頼んだ。
 打ち合わせ済みだったのだろう、精霊達は頷き応え精霊魔法を発動した。するとどうした事だろうか、飛空船の直上に厚い雲が広がっていく。だが、それだけでは終わらない。

「なんと……。これはスクリーンか」

 ミラは飛空船の片隅で、驚嘆と感心を半々に、それを見つめていた。水の精霊が生み出した霧の幕。そこに光の精霊が光を操り、まるで映写機の如く、飛空船の船首に立つアリオトを映したのだ。
 地上が更にざわめき始める中、またも精霊魔法が行使された気配を感じたミラ。そして、その魔法の効果は直ぐに判明した。

『本日未明。秘密裏に決行された作戦により、かの巨悪、キメラクローゼンとの長きにわたる戦いが、我等討伐隊の勝利を以って決した事をここに宣言する』

 力強い勝利宣言が、街中に拡がっていった。船首に立つアリオトの声が、まるで隣にいるかのように聞こえたのだ。

(風の精霊の力を拡声器代わりにした訳じゃな。こんな空の上からどうするつもりかと思っておったが、精霊達の協力があれば、これ程の事も出来るというわけか)

 空に映し出されたアリオトの姿と街中に届く声。更にその宣言内容からして当然というべきか、アリオトはセントポリーにいるほぼ全ての者達の注目を集める事に成功していた。とはいえ地上はまだ、宣言内容よりも、周りで起きている現象に対する驚きが勝っているようだ。半信半疑といった様子の者や、純粋に「なんだあれすげー」と、不可思議現象に心躍らせるだけの者が主である。
 だが、ここまでは既に予想済みの反応。満を持して、アリオトは次の言葉を口にした。

『以下、今作戦に協力いただいた者達の内、代表の名を伝えよう。まず、竜殺しとして名高い冒険者、『一刀竜断のジャックグレイブ』!』

 その紹介と同時、飛空船の甲板に堂々と佇む戦士の姿が、大空に映し出された。

『このたび、討伐隊一班を担当しましたジャックグレイブです。遂に悪の組織キメラクローゼンとの戦いに終止符を打てて、正直ほっとしております』

 歳は二十の中頃か、長大な太刀を背負い、紅蓮の鎧に身を包んだ美青年ジャックグレイブ。その見た目とは裏腹に物腰は柔らかく、彼は小さくお辞儀したあと、はにかむように微笑んだ。
 瞬間、飛空船の浮かぶ上空にまで届くほどの黄色い声援が地上から響いてきた。
 竜を倒せてしまえるほど強く、一目で分かるほど顔も良く、それでいて母性をくすぐるような笑顔を見せる男、ジャックグレイブ。いってみれば彼は、正真正銘のアイドルであり、英雄の物語の主役に相応しいといえる人材だった。

(なるほどのぅ……。トップバッターに相応しい人選じゃな)

 ミラは、黄色一色に染まっていく街並みを見下ろしながら、その効果覿面振りに苦笑する。
 こういった場面において、人心掌握は重要である。それはキメラクローゼンが消えたあとに生じるであろう騒動に対する布石のようなものだ。
 後々騒動が起こった際、ジャックグレイブ達がやった事は正義であり、キメラクローゼンを討伐した事は間違いではないという方向に世論を持ち込むのである。そしてこの事は、本人達も了承済みであった。
 ミラがそう納得している内にも、討伐隊代表の紹介は次の人物に移っていく。

『続いて、オークジェネラル率いる軍団を討滅し、見事一国の首都を開放した英雄達、ギルド白月騎士団。その団長、『月光十字のエレオノーラ』!』

 ジャックグレイブの時と同じようにアリオトが名前を呼んだ後、甲板に並ぶ猛者達の中の一人である女騎士が、大空のスクリーンに映し出される。

『初めまして、皆様。白月騎士団を与らせていただいてますエレオノーラですわ。私達騎士団は今作戦で、討伐隊の二班として戦いましたの。憎むべき巨悪キメラクローゼンは強大で、その抵抗も激しいものでした。けれど、ここにいる頼もしい仲間達と協力し、誰一人欠ける事無く任務を全う出来た事を、とても嬉しく思っております」

 エレオノーラは、そう言ったあと優しく微笑み、そっと手を振る。その直後、今度は男達の熱い声援が、地上から遥か上空にまで轟いてきた。

(まあ、そうじゃな。男がいるなら女もいるじゃろうな)

 ジャックグレイブだけでは、全ての人民を掌握するのは難しいだろう。女性人気の高い彼は、反面、男からの嫉妬も買い易い。そこで二番手に登場したのが女騎士エレオノーラという訳だ。

(男達が騒ぐのも無理はないのぅ)

 振り向いたミラは、スクリーンではなくエレオノーラ本人を見た途端、まるで聖女のようだと、その美しさにため息を漏らした。
 女騎士エレオノーラは、長い金髪をなびかせ、意志の強そうなきりりとした緑の瞳のまま、温和な表情を浮かべている。モデルのようにすらりと背は高く、何よりも胸部の主張が実に激しい。身に着けた白銀の鎧は、腰から膝上までがスカート状で、その下には黒のレギンス。そして足元は白銀のグリーブだ。
 露出は高くないものの、動き易さのためか、知ってか知らずか、所々で減らされた装甲は、フェチな性癖をいちいち擽るような部分ばかりで、代わりに繋ぎとして使われているエナメルのような素材がエレオノーラの肌をむしろ強調するという、実に見事なものであった。

「……これは、たまらんのぅ」

 絶妙に隠された胸と太もも。ミラは、その二点に注目してほくそ笑む。そんな中、地上から沸き起こる声援に交じる、ある言葉をミラの耳は捉えた。「女王様」「踏んで下さい」「その目で蔑んで」などなどといった類の言葉。更には「お姉様ー」という女性の声もちらほらとあった。

(この世界にも、やはりそういう性癖はあるのじゃな……)

 笑顔で手を振るエレオノーラを見つめながら、ミラはただただ苦笑する。
 そうして協力者紹介は次の人物へ移り、空のスクリーンが切り替わったところで、ミラはそれを目撃した。Sっ気溢れる表情で地上を見つめるエレオノーラの姿を。

(これはまた、とんだ女王様じゃな……)

 ごく一部の声援は、的確に彼女の内面を表していたようだ。そう思えば、エレオノーラが浮かべる微笑が、また別のものに見えてきて、ミラはぞくりと不思議な感覚に背筋を震わせるのだった。
 その後もアーロンを含め、高名な冒険者達の紹介が続いた。先の二人のような華はないものの、誰もがそれに代わる何かしらの魅力を持っている。紹介の都度、人々の認識が増していき、それに比例するように喝采が上がった。
 紹介も進み、エカルラートカリヨンの団長セロの名が呼ばれる。スクリーンにセロが映った時、ジャックグレイブに負けず劣らずの歓声と声援が響き、ミラは、ここまで人気だったのかと、エカルラートカリヨンの有名ぶりに改めて感心する。
 こうしてセロの挨拶を最後に、甲板にいる者達全ての紹介が完了した。と、ミラが思った時だ。

『最後に、もう一人。冒険者としては無名ながら、今作戦で多大な戦果をあげた者を紹介しよう。かの英雄、賢者ダンブルフの技を受け継ぐ者。アルカイト王国のソロモン王が唯一認めた九賢者の弟子。召喚術士、ミラ!』

 アリオトの無駄に力強い紹介の声が響くと同時、空のスクリーンにミラの姿が大きく映し出されたのだ。
 これまでと違い地上が、ざわめいていく。ソロモン王公認の賢者の弟子。これまでいなかった相当に特異な存在の登場に、どう反応したらいいのか分からない。といった様子だろうか。
 だが、もっと分からなくなっていたのはミラ自身であった。

(なんじゃなんじゃ!? こんな流れは聞いておらんぞ! どうしろというのじゃ!?)

 完全に不意打ちだった紹介に慌てるミラだったが、スクリーンに映る自分の姿を見て、どうにか体裁だけは整える。だが、何と言えばいいか思いつかず、かといって多くの視線に晒されたまま、黙っている事も出来ない。

「ミラじゃ。まあ、あれじゃな。わしの召喚術にかかれば造作もない事じゃ!」

 なのでミラは、いつも通りの言葉を口にして、勢いそのままにふんぞり返った。するとどうだろうか、不意に街は静まり返り沈黙に包まれる。
 何かやってしまったか、そういった考えがミラの脳裏を過ぎった時、これまでと同じくらいの歓声が空にまで届いた。とはいえ、その内容は少し違い、これまでの「よくやってくれた」や「ありがとう」という言葉は少なく、「可愛い」だのといった声が大半を占めていた事にミラは気付かなかった。
 どうやら初めからミラの紹介もする予定だったようで、見れば同船する冒険者達は温かい目でミラを見つめており、アリオトもどこか満足そうな表情をしている。

(まったく、心臓に悪いのぅ)

 初めから教えてくれていれば。ミラはそんな事を思いながら、少しだけ唇を尖らせる。
 その次の瞬間だった。突如としてミラの全身に精霊王の加護の紋様が浮かび上がり、静かに輝き始めたのだ。

「ぬ? これは!?」

 もしも血流の感触が分かったなら。そんな感覚が全身を駆けるが、不思議と苦しさは微塵もなく、むしろ心地良さで満たされていく。得も言われぬ感覚に、かといってどうする事も出来ないミラだったが、ふと左目にそれが集まっていくのを感じた。
 その時である。ミラの左目から光が飛び出し、それが上空で一つの虚像を形作ったのだ。

「なんと……」

 純白の法衣を纏うその虚像に、ミラは見覚えがあった。むしろ圧倒的な存在感を放つその姿は忘れようがないだろう。

『我が名は、精霊王シンビオサンクティウス。此度はミラ殿の力を借りて、この場に参上させていただいた』

 中空に浮かぶその者は、重く、それでいて優しい声で言う。響いた声に堂々と佇む姿は、正しく精霊王そのものであった。更には、その事を証明するかの如く、飛空船に同乗していた全ての精霊達が一斉に跪き「ああ、精霊王様……」と、感極まった声をあげていた。
 こんな事も出来るのかと驚くミラ。だがそんな事は意に介さず、精霊王は言葉を続ける。

『人の子等よ。多くの眷属を救ってくれた事に礼を言わせてもらおう。皆の尽力に対し、全ての精霊達を代表して感謝の意をここに伝える』

 精霊王がそう口にすると、飛空船全体が明るい光に包まれた。突然の大物登場で呆気にとられていた冒険者達は、この時ようやく我に返り、徐々に収束していく光を目で追う。するとそれはやがて、一人の精霊に集まり、吸い込まれるように消えていった。

『我が力を、眷属の一人に貸し与えた。此度の件で、多くの影響が出るはずだ。その時、この力が必要になるだろう』

 どことなく予言めいた言葉を口にした精霊王は、力を与えた精霊を見据え『しかと励むのだぞ』と言い残し、霧のように消えていく。そうして静まり返った空に、「誠心誠意、尽力いたします」という宣言の声が強く響き渡った。
 あっという間の出来事だった。しかし、その直後である。突如、空が暗転すると辺り一帯が暗闇に沈み、

『それと忠告だ。我が眷属に仇を成した者よ、覚悟せよ。だが、潔く罪を認めるならば、その魂の安寧は保障しよう』

 と、低く冷たい精霊王の声が街中に轟いたのだった。


 空が普段の顔に戻った後の事。精霊王の登場により、地上ではまた大いに盛り上がっていた。とはいえ、これまでとは少し違い、今の精霊王は本物だったのか、それとも討伐隊による演出だったのかというものだ。精霊王は神にも匹敵する存在なため、流石に半信半疑という域を出ないのだろう。
 だが飛空船での盛り上がりは、本物一択だった。何よりもまず、同乗している精霊達が間違いなく本物の精霊王だと太鼓判を押すのだから。
 そして当然、誰もが今のはどうやったんだとミラに迫った。だが当の本人にしてみれば、勝手に出てきて勝手に帰っていたような状態なものだから答えようもない。
 なので、「知らん。ただまあ、精霊王から加護を受けたのが原因じゃろうな」と言うのが精一杯だ。

「精霊王の加護……そんな凄いものがあるなんて!」

 驚愕、そして感動の声をあげるジャックグレイブ。

「精霊王から加護を授かるなんて、まるで御伽噺みたいね」

 エレオノーラはそう呟きながら、うっとりした表情でミラの傍に寄って「ねえ、私の妹にならない?」と、耳元で囁く。
 ぞくりと、熱い何かに背筋を震わせたミラは、危険な香りのする魅惑的な囁きに惑わされそうになりながらも、首を横に振って答えるのだった。
最近スーパーで買い物中に、ふと思った事があるんです。
パンとカップ麺。昼はどっちがいいかなと。
パン一個とカップ麺一個って同じくらいの値段じゃないですか。
でも、昼ご飯一食という単位で考えると、
パンって二個はないと物足りないですよね。
でもカップ麺は一個食べたら、よし、昼食終わりってなりますよね。食いしん坊な方については分かりませんが。
パンだとカップ麺の倍かかるんですよ。
袋麺だと、もっと安いです!
でも今は、春のパンまつり中なので、ホワイトデニッシュショコラを買ってます。
あと18点!

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