「大丈夫だよ」
そう言うのにも、いい加減疲れたの。まだ帰れない、もう少し待っててくれ。止めてよ。これ以上、そういう言葉をわたしに言うのは。
窓の外からは、台風の影響で吹いている強風が雨に勢いづけている音が聞こえる。まるで、今荒れているわたしの心みたいね。
どうして電話やメールの返事をくれないの? と携帯に問いかけても、何も返ってこない。分かってるよ、そんなこと。わたしを呼ぶのは携帯じゃなくてその向こうにいる人だもの。
一ヶ月は連絡してないのよね。何だか嫌な気がする。なんでかな。わたしだけが何も知らされていないから?
コナン君に心の一部を投げかけると、いつだって同じことを言う。
「新一兄ちゃんは絶対帰ってくる。だから、僕を信じて」
そんな辛そうな表情で言わないで。いつものコナン君らしく、まっすぐで自信満々な瞳でわたしを貫いてよ。そうすれば、今のわたしだっていなくなってくれるかも知れないんだよ。
後ろにある扉の開閉音が聞こえて後ろを振り向く。コナン君だ。今もやっぱりあの表情じゃない。
お願いだから、そんな顔でわたしを見ないでよ。
「蘭姉ちゃん、泣いてる」
本当だ。わたし、いつの間にか泣いてたんだ。全然気づかなかった。
「大丈夫、ちょっと目に塵が入っちゃっただけ」
また強がっちゃった。大丈夫なんて言い疲れたくせに。大バカね、わたし。辛うじて笑顔を見せたつもりだったけど、やっぱりもたないよ。
視界が涙でぼやけて、コナン君の表情も見えない。これで……ううん、これがいい。
「泣くな」
子供らしくないコナン君は、何故か分からないけどどうしても新一と被っちゃう。
「って、新一兄ちゃんなら言うと思うよ」
語尾が曖昧なくせに、どうして確信を持った口調に聞こえるんだろう? 分からない。
そんなこんなで悩んでるうちに、コナン君は事務所を出ていってしまった。パタン、と寂しげに響いた鉄製の扉の音が耳に残った。
それから何分たったか分からないけど、携帯が着信を知らせた。
「もしもし」
『よぉ蘭、元気か?』
一ヶ月ぶりに聞けた、生意気そうな新一の声。凄く嬉しい。今までは電話をかけてもメールをしても返事は返ってこなかったもの。でも。
「バカ、一ヶ月もどうしてたのよ? 心配してたんだから」
『ちょっと事件で色々あってよ。それよりお前、泣いてんだろ?』
コナン君に聞いたのかな。電話が来るまで何分か間があったし。
「だ、だから何? わたしがいつどこで泣こうが新一には関係ないじゃない」
『オメーが泣いたら、コナンが迷惑すると思ってよ』
何よ。
「そうやっていつも新一は冗談ばっかり……もういい加減にしてよ!」
何も聞こえてこない。やっぱり言い過ぎちゃったんだよね。
『そうだよな。ゴメン…でも、もうすぐで事件も解決しそうなんだ。だから、それまで』
マッテテクレ?
頭に浮かぶ文字。いつもとやっぱり同じなんだね。また泣いちゃいそう。わたし、弱いのかな。
『オレを信じててくれ』
あれ? 微妙に違う。それでも、いいかな。
「うん」
わたしも、新一を信じてみるよ。それまでは待つから。
だから……。
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