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タイム魔神

【空想科学祭2011参加作品】

「なんだよ今日のラッキーアイテムは『聖骸布』って! そんなもん持ってたらてんびん座に関わらずラッキーだわ! 間違いなくなんかの加護あるわ! ゴッド・ブレス・ミーだわ! 卒業式にこの三年間の勇気を目一杯振り絞った告白が失敗してもう死にてー死にてー、ってなっててもイースターを待たずに復活する勢いだわ! くそっ、くそっ」


 N君が机の前で白いものを擦る作業に専念していると、突然机の引き出しから薄青いずんぐりむっくりの名状しがたい異様な物体が葉巻をふかしながら現れた。


「ヤァ初めまして吾輩はタァーイム魔神。君の願いを3つまで叶えて進ぜよう」プカー

「うわわわ! 金! 女! 地位と名誉!」

「無駄に反応だけ早いウスノロめが! タイム魔神だと言っておるだろうが空気を読め! やりなおしだ!」


------------------- チックタックチックタック ----------------------


「ヤァ初めまして吾輩はタイム魔神。君の願いを3つまで叶えて進ぜよう(※時間に関する内容限定です)」プカー

「うわー! じゃあ、さっきクラスのメァッドォンナに告白して玉砕したからその過去を変えたい!」

「おやすい御用さ」


BAGHOOOOM!

タイム魔人はN君の首根っこをひっつかんで机の引き出しに叩き込んだ。

部屋に残されたのはN君が書いては消し、書いては消しした机の上の相合傘と真っ白な消しゴムだけ。


------------------- チックタックチックタック ----------------------


「卒業する前の最後の思い出に、哀れと思ったら一日だけお付き合いしてください!」

「ごめんなさい」

「うわー! やっぱりダメだったー!」


 走って帰って机の引き出しを開く。しかしそこからタイム魔人が現れることはなかった。


「おいおいちょっと待ってよ3つまで叶えてくれるって言っただろちょっと待ってよ実際ー、あと2回トライできるんじゃなかったらもうちょっと慎重な方法でいったわーないわー最悪だわー実際ー」

「ヤァ初めまして吾輩はタイム魔人」プカー

「出たー!」

「ワハハ驚いていただいて身に余る光栄。なにはともあれ君の願いを3つまで叶えて進ぜよう(※時間に関する内容限定です)」

「マジビビったわー、じゃあこんどは……いや……?」


 初めましてといったか?

 もしかして、時間を遡ったことで、タイム魔人も今回が初めてだと認識してしまっているのでは?


(こいつはとんだどんくさい魔神だぜ! じゃあ試しに)


「これって3回頼めるってこと?」

「さっき3つの願いと申し上げましたが二度同じことを言わせるなよウスノロ?」

「すすすすいません、根性焼きだけは勘弁を。……ではさっき失敗した告白をですね、もう一度リトライしたいなーなんて」

「おやすい御用さ」プカー


 BAGHOOOOM!


------------------- チックタックチックタック ----------------------


「あのー毎朝俺の味噌汁を作ってくれ!」

「え……なんですか気持ち悪い」

「わー!」


 全速力で走って帰る。


「ヤァ初めまして吾輩はタイム魔人」プカー


 BAGHOOOOM!


------------------- チックタックチックタック ----------------------


「あのー毎朝俺の味噌汁を作ってくれ! とかいう男って気持ち悪いですよね。僕もむっちゃそう思うわー。今時はやっぱイクメン。俺がこれから料理専門学校に入ってカリスマシェフになるから毎朝君に味噌汁を作ってあげたい!」

「え……なんですか気持ち悪い」

「2択じゃなかったー!」


 だだだだだ


「ヤァ初めまして吾輩はタイム魔人」プカー

「あのー3年くらい前って可能ですかね」

「お安い御用さ」


 BAGHOOOOM!


------------------- チックタックチックタック ----------------------


「あのーもしかして同じ中学じゃなかった? ヤハハ同中で隣同士なんて奇遇だね、俺、Nっていうんだ。これから三年間、よろしくな☆」

「あ、もしかして、中学のとき『アンキモ』って呼ばれてたひとですよね! 気持ち悪くて粘着質で底辺を這いずってるとか……内容は悪いけど名付けた人はセンスあるなーって思ってたんです。あ、ごめんなさいこんなこと言っちゃって、てへ☆」

「最悪だー!」


 高校三年間を駆け足で過ごす。


「ヤァ初めまして吾輩はタイム魔人」プカー

「あのー6年くらい前って可能ですかね」

「お安い御用さ」


 BAGHOOOOM!


------------------- チックタックチックタック ----------------------


「あのー」

「あ、ごめんなさい。彼氏が待ってるから、ごめんね」

「カ、カレシ……」


 ずーっと二人は別れる様子もなく仲睦まじい様子。それを3年間ジト目で監視し続けるだけの青春!


「あのーもしかして同じ中学じゃ」

「あ、『アンキモ』さん」

「しまったー! それでかー!」


 月日は百代の過客にしてなんとかかんとか。それもう何回も習ったわー。


「ヤァ初めまして吾輩はタイム魔人」プカー

「9年前とかでひとつ」


 BAGHOOOOM!


------------------- チックタックチックタック ----------------------


「あのーすいませんAさんいらっしゃいます……え、うちには娘はいない。ああそう、すいません。そもそもAさんではない。表札の名前も違う。あれーおかしいなー」


 そういえばあと一年後に引っ越してくるんだったか?

 これがホントの、をとめのすがたしばしとどめむ。もう何言ってるんだかよくわからないが。段々記憶が曖昧に。


------------------- チックタックチックタック ----------------------


------------------- チックタックチックタック ----------------------


------------------- チックタックチックタック ----------------------


 何百回とも知れない試行の末。ついに、N君は、倒れた。

 彼女に会いに行く途中、足に力が入らなくなって。


(何回繰り返しても無駄なのかな……何回やっても僕はアンキモで、彼女が引っ越してきたときには既にとなりの男と幼馴染になっていて……。あー、無理だ、無理……)


「……あの! 大丈夫ですか!? 誰か! 救急車お願いします! もしもし、もしもし!」


(あー、彼女は困った顔もなかなかいいなー。彼女が僕のためにいろいろ尽くしてくれてるなんて初めてかもなー……)


「大丈夫ですか! 大丈夫ですか!? あっ……たしかN君!? 大丈夫!? しっかりして、救急車呼んだから!」


(やっぱいいなー。名前も覚えててくれたんだ……なかなか、悪くない……嬉しいもんだね……)




 救急車で運ばれてゆくN君を上空から見下ろし、タイム魔神はつぶやく。


「すまないねN君。こちらにも、今期予算の締め日というものがあってね」


 携帯端末を取り出し、どこへやら電話をかける。


「あ、どーもーお疲れ様ですー吾輩ですー。今タマシイ回収しましたんでー。ええ3月26日16:00締結の同日15:55売上で。売上までマイナス5分って最速記録ではあるまいかー? ワハハ。そもそも悠長に3つの願いなんぞ待ってるから、ま、大きな声では言えないのであるが、先輩方は成績を上げられないのではないか、と思っておるのだがね? ワハハ! 先輩方が親方ソロモンの古臭いランプに篭っておる間にグローバル市場のスピード感は……おい、聞いておるのか! なにぃ、その話は別の時間軸で耳がネズミにかじられるほど聞いただと! バカな、吾輩は知らんぞそんなこと!」


 イラつきながら噛みちぎる葉巻はハバナ産、歴史上一番いい年に採れた最高級の葉をこれまた採れたての聖骸布で巻いたタイム魔神業界では至高の逸品。


「フゥー……。仕事の後の一服は生き返るのである……」


宇宙と時間、それは人類に残された最後のフロンティアですよねー。

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