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罪を背に受けて
作:露霧 雨音



第9話:人型の真意


深く突き刺さった黒剣はノヴェルの生暖かい血を止めどなく流し続ける。
ドロドロとゆっくり流れる血液と共に様々な感情が頭の中を駆け巡る。
「ぐ・・・・ぅ・・・・っ」
苦しそうに呻き、血を吐く。軽い彼女は剣に貫かれたまま宙に上げられる。
背の高い人型の目線に合わされ、そこに静止された。自身の体重で更に抉られる体。
人型は一瞬悲しそうな表情を見せた。
『最後の、望みも・・・絶たれたか。哀れな・・・・『人間』め。』
だらりと垂れ下がったノヴェルは抵抗もせず、ただ真っ直ぐに人型をながめていた。
「人間だから・・・ね。」
苦しそうにしながらも人型を嘲笑し、ノヴェルは人型の持っている黒剣を握り締めた。
「あなたには分からない。人間がどれほど面白いか。」
『何?』
顔を顰め怪訝そうにノヴェルを睨む人型。彼女はさらに続けた。
「・・・来なさいよ。どんなものでも、乗り越えてやるわ。」
無邪気な笑顔の中に何かが見えた。妙に大人びたような、妖美な表情。
『何だと?』
その瞬間ノヴェルは黒剣の柄の部分を両足で力強く蹴り、黒剣から抜け出し、地に下りた。
先程までの混乱などなかったように冷静な態度の彼女は自信に満ち溢れていた。
大きく開いた胸の孔から流れる血液を遮るように手で強く抑える。
理解わからないの?」
ぼたぼたと落ちる血を気に留めもせず、強気に語るノヴェル。人型は憫笑してこう告げた。
『そなたら『人間』にこの『化け物』の私が相応するとでも思っているのか?』
するとノヴェルも人型を笑い返し、言った。
「あら、・・・私もあなたが言う人殺しの『化け物』。気が合うんじゃなくて?」
アメリカのホームコメディにでも出てくるような冗談を言いつつ、笑いながら彼女はきっぱりといった。
人型の『不信』の、心の闇を映していたどす黒い空間がゆらりと歪む。 
『・・・ここまできてまだ死を拒むか、小娘。・・・後悔しても、遅いぞ。』
人型が笑った瞬間、硝子が勢いよく割れるような音と共に人型が細切れとなって宙に浮く。
その無数の破片はノヴェルの体に吸収されてゆく。
だんだんと力が己のものになってゆく感覚を感じる彼女は
「その小娘に望みをかけ、不用意に力を渡す貴方こそ『莫迦』だと思うのは私だけ?」
とノヴェルが笑った。
『気に入ったぞ、その覚悟、・・・見せてみろ。』
最後の破片が彼女の体に入った時、閃光が放たれた。あまりの眩しさに目を閉じるノヴェル。

―――――――――――――――――――――――・・・・・・・。
彼女がそっと目を開けると閃光は消え、突風が吹いたように周りの景色も、温度も一変する。
人型の悲しみ、苦しみ、憎しみ、全てが一体となって押し寄せてくる。

「ドクン」

「ドクン」

『ドクン』

力強い心臓の鼓動が2つに重なったように響いた。


―――――――――――――――――――――――・・・・・・・・。
「う・・・く・・・っ」
微かに絞り出される声。ノヴェルの意識が『現在』に戻ってきた。
「ノヴェル!?」
悲鳴にも似たウィクスの声、ノヴェルは平然と起き上がる。
ウィクスの声に驚く青髪の男。そんな筈はない、と言いながら走ってくる。
一方ノヴェルはああ、夢から覚めたら・・・また此処か、とため息を吐きながら起き上がった。金属製の拘束具はウィクスによってはずされていた。
「まさか・・・適合したのか・・・・」
がたがたと震えだす青髪の男。ウィクスはその姿を引きながら見ている。
ノヴェルは確かに自分の中にあの人型がいるのかどうか分からなくなった。
「立て、立つんだノヴェル!」
興奮している所為か自然と声が大きくなる青髪の男。目は血走り息が荒い。
「五月蠅いな・・・・」
怪訝そうに青髪の男を一睨みして立ち上がるノヴェル。特に異常は見当たらない。
「何をぼさっとしてる!ウィクス、検査だ。面白い『研究材料』が手に入った!」
にやりと怪しく笑う青髪の男はもはやキチガイといっても過言ではないサディストだった。
「一嵐来るな・・・こりゃ、悪い、ノヴェル。少し、我慢してくれな。」
青髪の男に聞こえないようにノヴェルに告げるウィクス。
研究室に向かう青髪の男はまるで小躍りでもするかのように軽快なステップで歩いている。
横目でその様子を見て、はいはい、と大きくため息をつき、研究室に誘導され入っていくノヴェルには一切の幼さが消え去り、何かが変わったようだった。












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