罪を背に受けて(10/10)縦書き表示RDF


罪を背に受けて
作:露霧 雨音



第10話:覚醒の時


「もう、やめたらどうですか・・・・。」
ウィクスが青髪の男に告げる。青髪の男はそれに聞く耳も持たずに研究に没頭する。
「あれは・・・まだ15歳の・・・少女なんですよ。」
ぼそりとつぶやき、呆れたように肩を竦め、コーヒーを飲むウィクス。
研究室に珈琲の香りがふわりと漂い、ノヴェルの鼻をくすぐる。
「飲むか?」
こくり、と頷く彼女にオレンジ色のラインの入った小さ目のマグカップを手渡すウィクス。
その傍らでひたすら、何かに取り付かれたような表情でデータを食い入るように睨む青髪の男。
ノヴェルが目を覚ましてからの数日間、ずっと彼女は青髪の男に『観察』され続けてきた。
ありとあらゆる検査を受け、いろいろな刺激を受けさせられ、拘束されたり、行動を記録されたり。しかし、青髪の男が思うような結果は得られなかった。
極々普通で今までの彼女と変わらず、特に奇行などもない。
「・・・適合はしているはずなんだ、何故、何も起こらない!」
テーブルに拳を打ち付ける青髪の男。コーヒーが零れ、書類に染みを作る。切羽詰ったような、何かに追われているような顔つきだ。
あ〜ぁ、珈琲が勿体無い、とウィクスは怪訝そうに倒れたマグカップを眺めた。
「気は済みましたか」
冷たく光る鋭い瞳で見つめる、冷静なノヴェルを前に青髪の男は更に研究を続けた。
「いい加減にしてほしい・・・・とんだマッドサイエンティストなんだから。」
呆れた顔つきでつぶやき、ウィクスをちらりと見る。青髪の男が散らかしたデータの整理とノヴェルについての新しい研究結果のデータ管理に追われているようだ。振り回される彼も大変だろうに、と彼女はせせら笑う。
青髪の男の熱が冷めるまで何もできないと、ため息を吐いてノヴェルは自分に用意された監視カメラがびっしり付けられた部屋に入り、粗末なベッドに横たえた。

――――――――――――――――――――――――――・・・・・。
「うぐっ・・・・!?」
その日の真夜中猛烈な吐き気を感じてノヴェルは飛び起きた。
何が起こったのか自分でも分からず目をぱちくりさせていたが、ものすごい胃の不快感でそれどころではなかった。急いでトイレに向かうくらいの余裕はあるが今まで感じたこともない気分に嫌な予感を感じるノヴェル。
青髪の男は絶好の研究対象を目の前に、資料の海の中で豪快に口をあけて寝ている。ウィクスの姿は見当たらない。
「げほっ・・・・げほ・・・」
一通り吐いて楽になった後、何を吐いたのかノヴェルが嘔吐物を見ると、血に混じって真っ黒な『何か』が入っていた。
「なに・・・・コレ。」
顔を顰め、目を凝らして、その物体に触れようと手を伸ばした瞬間に物体は溶けるように消えてしまったが、彼女は不安と驚きを隠せなかった。
その後も込みあがる不安と吐き気を気力で押さえつけ、彼女は無理矢理眠りについた。
ウィクスはその様子を監視カメラで一部始終を見ていた。
青白いモニターの光を浴びながら書類を手にする彼は冷や汗と戸惑いを隠せない。
「・・・・本当に・・・・適合、したのか。」
複雑な表情で彼は煙草を噛み締める。煙草はいつの間にか葉の部分は全て燃え尽きていた。
フィルタの部分まで焦げ付き、嫌なにおいを放っている
「おっと・・・。」
それに気がついた彼は灰皿に煙草を押し付け、書類の整理を再開した。
モニターの奥では小さな少女が無防備な寝顔をしながら寝ている。
これから己の身に降りかかる災難と苦労を知る由もないまま・・・・・。














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP


小説家になろう