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姉からの手紙

作者:BIRUSU
 ある夏の夜、姉から一通の手紙と大きな荷物が届いた。
 姉から手紙を貰うのは、二度目である。
 手紙の封を開け、読んで見るとそこには旅行先での出来事とこの前の台風について書かれていた。
 どうも旅行先で台風にあってしまったらしく、大木がばらばらになるぐらい増水した川に恐怖を覚えたそうだ。
 だがそれ以外は順調だったらしく、文面からは休暇を満喫していることが窺える。
また追伸として、送りつけてきたのにもかかわらず、恥ずかしいから荷物を開けないで欲しいという文も添えられていた。
 ただ気になるので開けてしまうかもしれない。
 次の日、また姉から手紙とともに荷物が届いた。
 手紙の内容は昨日届いたものと同じで旅行先の出来事と、荷物を開けないでというもの。
恥ずかしいと書いてあるが、下着でも入っているのだろうか?
 そしてまた一日が過ぎると、同じように姉から手紙とともに荷物が届いた。
 内容はいままでとほぼ同じ、ただ1つ違っていたことは、もう手紙は書けないので迎えに来て欲しいというものだった。
 わがままな姉であったが、それ以上に優しい姉の頼みである。
それに今となっては唯一の肉親だ。
 僕は迎えに行くことに決めた。
 だが、迎えに来て欲しいと書いていながらも、手紙には住所が書かれていなかった。
だから僕は唯一住所の書かれていた最初の手紙の場所から、姉の行き先を辿ることになったのだ。

「すいません。何日か前に、鈴原美樹という人が泊まっていきませんでしたか?」

「鈴原美樹さんね。ん〜〜あーあの足が綺麗な方ね。すごくすらっとしていたから良く覚えているわ。それでその方が何か? それとあなたは?」

「すいません。名乗り遅れました。僕は鈴原大地といいます。ここの宿でお世話になった鈴原美樹の弟です。手紙で姉から迎えに来て欲しいと頼まれたのですが、場所が書いてなかったので姉のいった先をたどる事になってしまったんです」

「あらあらあら、大変ね。あぁそうそうお姉さん確か、川を上って旅しているって行っていたわよ。後はそうね〜ごめんなさいこれ以上はわからないわ」

「いえ、それだけ分かれば十分です。姉のことですから大体予想がつきます。それじゃ姉が待ってますので」

「えぇ気をつけて」

 姉が最初に泊まった宿で、大体の行き先を聞いた僕は姉の嗜好を考え、次に姉が泊まった宿を探していった。
幸い姉は好き嫌いがはっきりしていたため、宿を見つけるのにはそんなには苦労せず、2件目であっさり彼女が泊まった宿を見つけることができた。

「すいません。何日か前に、鈴原美樹という人が泊まっていきませんでしたか?」

「鈴原さん? 鈴原さんっていうとあのいい体つきの人かな? いや〜あんなにセクシーな体は久しぶりだったから年甲斐もなく見とれてしまったよ。それでその方がどうかしたのかい?」

「僕は鈴原大地といいまして、ここの宿でお世話になった鈴原美樹の弟なんです。手紙で姉から迎えに来て欲しいと頼まれたのですが、場所が書かれていなかったので姉のいった先をたどる事になってしまって」

「へ〜そいつはてえへんだな」

「姉の行き先を知りませんか?」

「あぁ、知ってるよ。女の一人旅とかはここいらじゃ珍しくて、お客様だと分かっていても思わず声を掛けちまったよ。その時に次の行き先を相談されたから宿を紹介したな」

「それはどこです?」

「川をもっと上った先にあるホテルだよ。旅館に勤めている俺が薦めるのもなんだが、本当にいいところだよ」

「ありがとうございます。それじゃ姉が待っていますので」

「おう、お姉さんに会ったらよろしくな」

 次の姉の目的地が分かった僕は、教えてもらったホテルへと車を走らせた。
 ホテルは旅館の人が薦めるだけあり立派なもので、姉の嗜好にも合ったものだった。
きっと姉も気に入り、泊まったことだろう。
 僕はホテルの中に入り、受付へと話しかけた。

「すいません。何日か前に、鈴原美樹という人が泊まっていきませんでしたか?」

「鈴原様ですか……少々お待ちください。あぁはい、確かに二日前に当ホテルに泊まっております。名前を書く手が綺麗でしたのでよく覚えていますよ」

「それで鈴原はこのホテルを出た後、どこにいったか知りませんか?」

「あのすいません。鈴原様とはどういったご関係でしょうか?」

「あぁすいません。僕は鈴原大地と行って鈴原美樹の弟です」

「そうでしたか。これは大変失礼いたしました。鈴原美樹様が当ホテルを出た後どこにいったかはご存知上げませんが、弟様へのお手紙を預かっていますのでもしかしたらそちらに……」

「その手紙をいただいてもいいですか」

「はいもちろんです。それでは確認のため、身分証を見せていただいてもよろしいでしょうか?」

 僕は受付に免許証を見せ、姉の手紙を貰うとすぐにその手紙を読んだ。
 文面のほとんどは最後に送られてきた手紙と同じであった。
ただ、最後の一文に急いで付け足したかのように、ある住所が書かれている。
 僕はその住所に姉がいると確信し、車を飛ばしたのだった。
 住所はいままでどおり川を上った先のもので、静かな旅館であった。

「すいません。こちらに鈴原美樹と言う人が泊まっていませんか?」

「えぇ泊まっていますよ。確かとても綺麗な顔の方でしたか」

「あの僕は鈴原美樹の弟でして、姉を迎えにきたのですがどの部屋にいますか?」

「あぁそれでしたら、ご案内しますよ」

「お願いします」

 僕は女将に導かれ、姉のいる部屋に入っていった。

「姉さん。迎えに来たよ。まったく迎えに来させるんだったらちゃんと住所を書いて送ってくれよ。あぁそれとその……言いにくいんだけどごめん。荷物、気になって開けちゃった。あぁだからごめんって、そんな怒った顔しないでよ。こうやって迎えに来たんだから。うん、帰ろう。ちゃんと体は届いているよ」

 首だけになっていた姉さんは、僕に優しく微笑んだ。
 姉が死んだのは一ヶ月ほど前、自殺だった。
 初めて僕あてに書かれた手紙は遺書で、僕に対する謝罪が2ページに渡って書かれており、最後に川から飛び降りて死ぬと添えられていた。
 冗談だと思いたかったが、警察に姉の捜査を依頼すると、手紙が信憑性を増してしまう結果となる。
 姉と思わしき人物が増水した川へと身を投げるのを見たと言う人物が現れたのだ。
またその飛び降りた場所からは、姉がいつも履いていた白い靴と、鞄が見つかったので決定的だった。
 すぐに姉の捜査は行われたけれども、台風の影響で増量した川の中からは砕けた大木や、川を見に来て流されてしまいばらばらになった男性の死体は見つかったものの、姉の死体だけは見つかることはなかった。
 だけど姉は帰ってきてくれた。
 八月の十三日、僕に迎えに来させることによって。

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