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その無限の先へ 作者:二ツ樹五輪(*´∀`*)

第四章「理想へと至る一歩」

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第9話「捕虜」

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――――Action Skill《 パワースラッシュ 》――

 発光しつつ加速する斬撃が覆面戦士ラージェスへと放たれる。
 覆面戦士ラージェスはその発動を見てから超高速で反応、ナックルの金属部分をピンポイントで使い弾き軌道をずらす。
 剣のスピード、それも冒険者の膂力からスキルで加速して放たれるそれを拳で打ち払い、完全に無効化するのは並大抵の事じゃない。まともな人間なら視認する事すら不可能な斬撃に対し、接触する位置、勢い、タイミングをピンポイントで合わせて初めて可能となる芸当だ。
 そして、覆面戦士はすでに次に続く攻撃に備えを始めている。先の打ち払いを必要最小限の動きで行ったからこそ出来る準備速度。この各行動間の素早い移行が、スキル連携の柔軟性に並んで< 格闘家 >系統クラスの強みといえる。
 このまま攻撃を続ければ同じく無効化されるか躱されるだろう。それを確信出来るほど、俺達は模擬戦を繰り返して来た。
 ……模擬戦をしてきたのはあくまでサージェスであって覆面戦士ラージェスではないのだが、それは置いておく。どっちも変わらん。
 通常であれば、この後に放つのは《 ハイパワースラッシュ 》。
 大抵の剣士であればそうするし、事実俺も選択肢をとる事が多い。理由は単純に同スキルの上位であり技の特性が似通っている事、連携の発動確率、タイミングに補正が掛かる事。そしてなにより弾かれた体勢から撃てる剣技はそう多くない。振り下ろしに限定される《 ストライク・スマッシュ 》は発動出来ない筈だ、と普通は考える。
 加えて、俺であれば体勢を敢えて崩す事で無理やり振り下ろし限定の《 ストライク・スマッシュ 》を放つ事も可能だ、と散々模擬戦を繰り返してきた覆面戦士ラージェスなら考慮するだろう。

 だが、ここで俺がとる選択はどちらとも異なる。
 ここは敢えて何も打たない。次の瞬間にとる行動は体勢を整える事だ。結果、コンマ数秒の空白時間が発生する。
 スキル連携をして来なかった事に多少驚きつつも、覆面戦士ラージェスはスキル発動後の硬直時間を狙って来る。
 俺の狙いはそのタイミングだ。僅かに遅らせたタイミングでスキルを発動させる。

――――Skill Chain《 ストライク・スマッシュ 》――

 驚愕に見開かれる目を確認しつつ、全力で剣を振り下ろす。
 予想外の行動とはいえ、覆面戦士ラージェスも黙って斬られたりはしない。相打ち覚悟で剣に拳を合わせてくる。

――――Skill Chain《 瞬装:ニーダガー 》――

 拳は宙を切った。その先に剣はなく、ただ何もない空間が広がるのみ。

「っらあっ!」

 如何に覆面戦士ラージェスといえどこの体勢からは避けられない。
 俺が放つのは膝蹴りだ。ただし、その膝には特注で作成した膝用の短剣がある。俺はその膝に装着した短剣で"剣技"を発動させた。

――――Skill Chain《 パワースラッシュ 》――

「っがあっ!!」

 膝の短剣が剣技によって加速し、本来なら出す事の出来ないスピードで放たれる。
 覆面戦士ラージェスの露出した腹部に短剣がめり込むのを感じた。

「そこまで!」

 フィロスが模擬戦終了の合図を出して試合は終了だ。有効打を一度当てたら終了のルールなので、この勝負は俺の勝ちである。
 直撃とはいえ、覆面戦士ラージェスのダメージは大きくない。それよりも驚愕が優っているようだった。

「……リーダー、今のは一体……」
「研究の成果だな。スキル連携間のタイミングをずらすスキルディレイ、武器の持ち替えによるスキルキャンセル、そして武器カテゴリの拡張だ」
「二番目以外は何が何やら」

 武器持ち替えによるスキル再発動は元々サー……覆面戦士ラージェスの経験から発展したものだ。
 フィロスとの決闘でやった、《 瞬装 》で同じ武器を持ち替える事で連携上に同じスキルを組み込む技術は、こいつにももちろん話してある。
 残りの二つはここ最近ダダカさんと戦闘研究をしている中で身に着けたものだ。
 以前からダダカさんと検証を続けていたのだが、《 瞬装 》から繋げてのスキル連携にはまだ未知の部分が多い。迷宮都市全体でも《 瞬装 》の使い手は少ないので検証が進んでいないというのが実状らしく、俺のように積極的に使うのは更に稀だそうだ。それこそ、俺とダダカさん位しかいない。

「ディレイのほうは上級冒険者が時々やるね。闘技場個人戦の動画で時々見かけるよ」

 近付いてきたフィロスが補足を始めた。どうやらディレイについては知っているらしい。

「そうだな。これは個人戦で良く使われる技術みたいだ」
「モンスター相手だとタイミングずらす意味がない事が多いしね」

 連携は確かに強力で隙もないが、その実防御するだけなら容易だ。なんせ、発動するタイミングが一緒なのだ。
 人によって、状況によって多少のズレはあるとしても、同じ連携を続けて放てば対応される。対人戦に慣れた冒険者ならそれくらいはやる。
 それをヒットさせるには《 旋風斬 》と《 旋風斬・二連 》で軌道をずらすような工夫が必要となるのだが、もしもタイミングをずらせるなら攻撃パターンに膨大に変化を付けられる。
 以前から、極めてシビアなスキル連携の発動タイミングを任意で何とかずらせないかという考えを持っていたのだが、それをダダカさんに伝えたところ、返って来た答えがこのスキルディレイだ。

 元々スキル連携というものは酷く難易度が高い。中級ランクに上がりたての前衛だと、何とか一、二パターンの二連携が使える程度らしい。猫耳は使えないみたいだが、斥候職なら珍しい事でもないようだ。
 アクションスキルは基本的にスキルのイメージ固定→発動前の溜め→発動→発動後の硬直というプロセスをなぞる形で発動する。
 連携する場合、最後の硬直は無視して次のスキルに繋げるのだが、その前のイメージ固定と溜めを次のスキル発動に合わせるタイミングで先行して行わなければならない。
 このタイミングが少しでもずれれば不発になり、スキル連携を続けるごとにこのタイミングは短くなっていく。しかもそのタイミングは手探りだ。目押し出来るようなもんじゃない。
 ただでさえコンマ数秒というタイミングに倍々で補正が掛かり、いつぞやの八連撃などほとんど刹那の瞬間を見極めないと発動しない神業だ。しかも、失敗すれば長時間の硬直タイムが待っている。それを戦いながらやらないといけないんだから、そりゃ誰も実戦投入しない。
 スキルディレイはスキルの発動タイミングの指定を事前に行い、そのタイミングをずらす事を可能とする。
 受動的にタイミングを待つのでなく任意に指定して能動的に発動するのだから、その処理が増える分、更に難易度は上がる。明確なイメージがなければ不発で終わりだ。
 これは、軌道までを含めた技を発動するイメージを維持しつつ、それのイメージ自体をリアルタイム修正した上で、コンマ数秒の中に存在する発動タイミングを見極めて発動するような、途方もない集中力が必要となる。当然、発声起動では発動しない。
 成功確率も低い上に失敗時のリスクもでかい。連携が不発に終わる事を考えるとギャンブルが過ぎる技術だ。だからこその高等技術なのだが、はっきり言って現時点で必要になる事はそうそうないだろう。あくまで先を見据えた訓練だ。

「なるほど……私には非常に有用な技術ですね」
「だな、どっちかというお前向きの技術だ」

 覆面戦士のように連携を多用する格闘戦主体の戦闘スタイルの場合、この恩恵は跳ね上がる。
 こいつにとって今後必須となってくるスキルだろう。HP操作と併せて覚えておいて損はない。だからこそ、ほとんど未完成な状態でも見せたのだ。

「君の場合は、《 瞬装 》から展開される無数の攻撃パターンが更に読み辛くなるって事か。……やるね」

 格闘戦は勿論だが、俺やダダカさんのような戦い方の場合でも実に有効だ。《 瞬装 》を絡める分難易度は上がるが、自由度も格段に増す。
 フィロスはこの時点で既に対策を考え始めているんだろう。称賛してても目が笑ってない。

「ディレイやキャンセルは分かるけど、最後のは何だい?」
「これは完全に新技術の筈だ。何とか出来る事が分かったって段階だから、まだ実用性は皆無に等しい」

 剣技、槍技、斧技、或いは弓などの射撃武器でも良いが、これらの技を発動させる基準というのはどこにあるのだろうと考えていた。
 かつて、< 鮮血の城 >でサージェスは《 ダイナマイト・インパクト 》を《 トルネード・キック 》の着弾に合わせて使用した。これは《 ダイナマイト・インパクト 》が打撃技のカテゴリであり、《 トルネード・キック 》は蹴技でありながら、打撃技にも含まれるスキルだという事を意味する。打撃という言葉だけ見てみればハンマーでも発動しそうなものだが、これは不可能らしい。あくまで体術でないと発動しない。実戦で使えるかどうかはともかく、中級ランク以上の< 格闘家 >であれば知ってて当たり前という技術だ。
 ならば違う武器カテゴリ、例えば剣技はどうだろうか。トライアル以来ずっと世話になっている《 パワースラッシュ 》、これは剣技だ。両手剣だろうが片手剣だろうが、或いは短剣でも発動する。発動の仕方も自由度が高い。振り下ろし、振り上げ、薙ぎ、刺突は駄目らしいが、とにかく剣カテゴリに含まれる武器での斬撃であれば《 パワースラッシュ 》は発動する。
 では、手に持たなければ発動しないのか? と、そう考えたのだ。
 たとえば、ユキが《 クリア・ハンド 》で作ってるのは手だが、それは本来存在しない体の部位だ。ならば、別に手じゃなくても良いんじゃね? と。
 その答えはさっき実演してみせた通り発動する、だ。ただし、《 ソード・マリオネット 》のような遠隔念動では発動しない。ユキの《 クリア・ハンド 》のような形でも良いから、とにかく自分が振っていないといけない。つまり、何が言いたいのかというと、要は脚で剣を扱っても《 パワー・スラッシュ 》は発動するのである。

「相変わらずとんでもない事考えるね」

《 瞬装 》はいわば武器の切り替えである。一般的な使い方は相手の攻撃に合わせた盾の切り替え、耐久度が減少した武器から予備武器への切り替えなどが主で、戦闘中にこれを行う者はほとんどいない。シビアなタイミングには極度の集中力が必要とされる為、一手ミスをしただけで致命傷となりかねない状況では敬遠されるようだ。
 下位互換とはいえ、フィロスは《 ウエポン・チェンジ 》で武器の切り替えを行うが、これは俺の影響だろう。聞いてみたら、これが当たり前だと思っていたらしい。< アーク・セイバー >の模擬戦でやったらギョっとされたようだ。
 普通は予め手に持った武器でしかスキルは発動しない。武器のアクションスキルと体術系のスキルを組み合わせた連携は既に前例があるようだが、これはその亜種である。

「では、最初から各所に武器を装備していれば良いのでは?」
「それでも問題ない。要は武器さえあれば体術系スキルのように全身で使えるってだけだからな。俺の場合は持ってなくても使えるからそうしてるだけだ」
「ちょっと、それ貸して貰っても良いかな」

 早速試してみたいようなので、フィロスに膝用の短剣を貸してみる。フィロスが蹴りを放つ姿は見たことがないので少し新鮮だ。
 だが、やはり上手く発動出来ないらしい。

「うーん……難しいな」
「剣を振っているって概念がないと発動出来ないらしい。ダダカさんも最初は苦戦してた」

 膝につけた短剣を剣と同じ感覚では扱うイメージがないとこのスキルは発動しない。固定観念に縛られた剣士では難しい領域だろう。
 ただ、何故か俺は最初からできた。案外俺はこういう奇天烈なスキルの使い方に適性があるのかもしれない。盾を足場にしてのジャンプもぶっつけ本番で成功させたし。

「まあ、実験だな。今すぐに役に立たなくても、これが生きてくる場面はあるだろう」
「私は《 パワースラッシュ 》は適性がないようですが、それ以外にも使い道はありそうですね。何より、攻撃スキルを発動出来る箇所が増えるというのが良い」

 そう、この実験の最大の肝はそれだ。
 極端な話、右手の《 ダイナマイト・インパクト 》から、左手、右足、左足、頭突き、肘、膝、肩で《 ダイナマイト・インパクト 》への連続攻撃さえ可能なのだ。
 実際は連携による発動タイミングの縮小化や再発動時間の兼ね合いから難しいが、他のスキルを組み合わせるだけでも可能性はかなり広がる。それに近い事が武器スキルでも可能となるのだ。
 もちろんこれは膝だけではない。ラディーネにお願いして膝、肘、爪先、踵用の短剣を作って貰い、発動だけならできるようになっている。全部合わせれば刃物人間爆誕である。
 現時点ではあくまで実験の域は出ないが、これはもう一つの高等技術であるアクションスキルの多重起動に繋げる為の準備でもある。
 複数の武器で同時にスキルを発動するというのは攻撃力の強化の他にも、相手に防御・回避させて手を止める事ができるというメリットがある。
 手数が多いという事はそれだけで強力な手札になり得るのだ。同時じゃなく、ユキのように少しタイミングをずらして発動させるだけでも攻撃の幅も広がるだろう。

――――Action Skill《 パワースラッシュ 》――

「お」
「出来たね。……成功率は低いけど、できる事が分かっただけでも良いか」

 見たその場で再現できるだけでも大したものだと思うぞ。ダダカさんでも一時間位は掛かってたし。

「腕がない場合の攻撃手段としても良いね。問題は《 ウエポン・チェンジ 》は対応してないから、事前の仕込みが必要って事か」

 フィロスの使う《 ウエポン・チェンジ 》は《 瞬装 》の下位互換である為か、足への特殊な武器展開などはできないらしい。
 ダンマスは面白がって《 瞬装 》のスキルオーブを渡そうとしたらしいが、フィロスには適性がなかったようだ。辞退して習得はしていないものの《 シールド・チェンジ 》、《 アーマー・チェンジ 》の適性はあったらしいので、将来的には下位の装備変更スキルは一通り使えるようになるのだろう。

「腕がない場面での戦闘方法を真面目に検証してるのかよ……どんな世界だ」

 さっきから現実逃避気味に見学していたジェイルが言う。

「迷宮都市の冒険者やってると、腕千切れるとか日常茶飯事だからね。戦う手段があるなら、そこで諦める事もない」
「聞くだけで怖いな。腕切断されて戦意失わないのが普通なのか」

 何気なく参加しているジェイルだが、やはり迷宮都市外の人間との意識の違いは大きいようだ。

「でも、痛みはあるわけだろ?」
「そりゃ悶絶する程痛いけど、それよりひどい場面はあるからね」
「どんな地獄で生きてるんだ」

 俺の場合、手足がなくなる経験は主に[ 灼熱の間 ]のものが多いな。何回炭にされたか分からない。
 でも、ロッテの使った《 死の追想 》なんかはそれが霞んで見える程の苦痛だった。

「慣れれば良い感じに興奮しますよ」
「そりゃお前だけだ」

 マゾと一般人さんを一緒にしてはいけない。大抵の冒険者はステータスに現れない部分で痛みへの耐性を備えているが、それを性的興奮に変換出来るのは選ばれしドMだけである。
 こうして考えるとドMというのが凄まじい才能に見えてくるから不思議だ。全然羨ましくはないが。

「部外者にこんな場面を見せても良いものなのか? ……見ても訳分からんというのが正直なところだが」
「団長からも許可は貰ってるし、良いんじゃないかな。それに、ジェイルは迷宮都市に来る気なんだろ?」
「そりゃもう行く気満々だよ」

 渋々了解という形だったが、この見学にはグレンさんの許可も出ている。
 許可が出たのは、ジェイルが迷宮都市に来る事を伝えたのが大きいだろう。フィロスが騎士団を辞めてからずっと検討はしていたようだが、それが昨日の食事で振り切れたらしい。
 フィロスとは違い、貴族、それも伯爵なんていう大貴族の人間が騎士団を辞めたり、家を出たりする事は中々手間が掛かるのだろうが、あのオカマが親父なら問題ない気もする。オカマだけど、かなりさっぱりした性格だったし。

「何か悪いな、推薦してもらって」
「推薦って言っても、あんまり意味はないらしいけどね。街に入る時の凄く長い審査がちょっと短くなる位だってさ」
「それだけでもありがたいよ。中に入ったら経験者から色々話も聞けるだろうし」
「あの審査は中々長いですからね。放置プレイの苦手な方は大変でしょう」

 通常、迷宮都市に入る為の審査は本来数日に渡るものらしい。俺やユキが数時間で済んだのはダンマスと同じ元日本人だからだ。実はかなり優遇されている。
 こうやって、遠征した冒険者と出会った事が切っ掛けで推薦をもらい、迷宮都市を目指す者は多いらしい。身近なところだとティリアなんかがそうだ。ゴーウェンもそうらしいと聞いているが、喋らないから詳細は分からない。

「なんなら、フィロスがトライアルの同伴者をやれば良いんじゃないか?」
「あー、そういえばもう受注できるのか。良いかもね」

 猫耳がやっていたように、トライアルの同伴者は中級冒険者の仕事だ。
 初回攻略して隠しステージまで行ったら友人同士の殺し合いに発展するわけだが、……まあ難易度からいっても杞憂だろう。

「しかし、お前らを見てると追い付ける気がしないんだが」
「まあ、僕もツナも覆面戦士ラージェスも迷宮都市の中ではかなり早くランクを上げてる方だからね。スピードを張り合うのは難しいかもしれないけど、長い目で見るならいくらでも強くなれるさ。ジェイルは強くなる事に関しては真摯だからね」
「元々の基盤が違うとはいえ、お前らはそこまで半年で到達したわけだろ? その中級ランクっていうのは、普通ならどれ位の期間をかけてなるものなんだ?」
「大雑把だからあまり参考にならないかもしれないけど、登録してからデビューまでが半年から一年、そこから数年掛かりで中級に上がるらしいよ」
「……お前らがおかしいって事が分かって良かったよ。超スピード出世じゃないか」

 ほとんど成り行きだが、ランク上がるのは早かったよな。記録出してるし。あまり基準にすべき見本ではないだろう。

「おかしいのはリーダーとフィロスさんであって、私はここまで二年位経ってますよ」
「そもそもあんたは何者なんだ。当たり前のように参加しているが冒険者なのか」
「私の名はラージェス。ちょっぴりマゾな覆面戦士だ」

 ニンジンさんと練習していたちょっと格好良いポーズで自己紹介を始める覆面戦士。迷宮都市に来ると言っている人相手なのに偽名である。

「こいつは迷宮都市の中でも一際変だから基準にしないほうが良いな」
「そ、そうなのか……」

 迷宮都市には変な奴も多いが、こいつはその中でも特例に近い変人だからな。あと、お前は間違ってもちょっぴりではない。

「覆面戦士はともかくとして、聞いただけでも飯は美味いし、女の子も可愛いとくれば行かない手はないよな。俺でも結婚出来るかも」
「ジェイルはモテそうに見えるが、オカ……親父さんの影響ってそんなに大きいもんなのか?」
「でかいな。その上、王都にいる限りは貴族……それも侯爵から子爵あたりの家じゃないと家格の問題もある。そこら辺気にしなくて良いだけでも随分違うな」

 家格の近い相手しか結婚相手に選べないって事か。その家に年の合う子がいるとも限らないし、大変そうだ。
 ついでにジェイルの場合、親の問題も上乗せだ。あのオカマ伯爵と縁を結びたいかっていうと難しいところだよな。

「それに迷宮都市にはいろんな種族がいるんだろ? エルフさんとかもいたりするのかな」
「多いってわけじゃないが、普通にいるな。この建物の中にもいるし」

 ニンジンさんとか。他にもいると思う。王国貴族は亜人嫌いが多いって聞いてたけど、ジェイルはそうでもないんだろうか。

「でも、エルフって成長遅いみたいだぞ。今回同行してる二人もチビっ子だし」
「それが良いんじゃないか。小さい子って良いよな。兄貴は熟女好きだから分かってもらえないんだ」
「あー、ジェイルはどうもその……幼女趣味というか……。家系なんだろうね」

 あの親にしてこの子ありか。……オカマでホモよりは全然マシだと思うけど。

「度合いにもよるが、迷宮都市は広いからロリコン位いてもおかしくないだろ」
「だ、だよな。分かってくれる奴がいて嬉しいぜ。さては同志だな」

 ストライクゾーンが広いという自覚はあるが、同志ではない。

「一応、極端なのは犯罪になるから気をつけろよ」
「大丈夫だ。俺は紳士だからな。未成年は愛でるだけにしておく」

 親父程の極端さがなければ大丈夫だろう。駄目でも放逐されるだけだ。それに迷宮都市には合法ロリもたくさんいるからな。六十二歳の幼女AV女優みたいなのもいるわけだから、きっと需要は満たせるだろう。

「私の知り合いの雑誌編集者でホセさんという方がいるんですが、その方も小さい子が好きですね」
「……お前の知り合いで雑誌編集者って事は、マゾ雑誌作ってる奴って事か?」
「ええ、『月刊マゾボーイ』という雑誌の編者者で、マゾでホモのショタコンという壮絶な性癖を抱えた人です。彼を超える人は中々いないでしょう」
「さすがにそいつと同じカテゴリとは思われたくないな……」

 覆面戦士にここまで言われてしまうという事は、余程救いようのない変態なんだな。



-2-



 静かな午後だった。
 そんな静かな空間で、男が二人、向い合って一つの盤面を睨み合っている。
 ここが戦場である事を考えれば、見ようによっては作戦の検討をしているようにも見えるかもしれない。
 だが、目の前の盤は戦争ゲームの側面はあるとはいえ、ただのゲームだ。……というか将棋である。

「王手」
「む……」

 俺の手にグレンさんの眉が寄った。
 王手ではあるがまだ逃れる事は可能。だが、その逃げ道は行き止まりの袋小路だ。逃げ切る事は出来ない。最大でも後三手で決着となる詰み状態である。

「……駄目だな。投了だ」

 グレンさんはあまり将棋は強くなかったが、戦況が読めないわけでないらしい。あっさりと負けを認めて投了した。
 ダンマスが持ち込んだというなら、将棋歴だってそう長くはないだろう。この強さは妥当なレベルだ。

「< アーク・セイバー >で指揮官役やってるから将棋も強いかと思ったんですが、そうでもないんですね」
「私はどうもこの取った相手の駒を使えるというルールが苦手でね。剣刃は得意みたいだが、あいつとやると瞬殺されて良く分からないまま終わるんだ。大人げない」

 あの人が大人げないのはみんな知ってる事なので今更である。
 チェスなら得意だったりするんだろうか。

「次はニンジンさんがやってみるか?」
「あたし、ルール、知りません」

 俺の後ろでじっと盤を覗いていたニンジンさんに振ってみるが、そもそもルールを知らないらしい。知らないで将棋観戦してたのか。

「やはり俄仕込みだと厳しいな。日本出身には勝てないか」
「俺もそんなに強くはないと思いますが、例えば美弓だったら弱いから勝てると思いますよ」
「ミユミ、ちゃん、将棋弱い、です?」
「弱いな。犬と良い勝負だ」
「犬……」

 将棋を打てない犬相手に時間制限待ちで勝った事があるのは覚えている。あくまで前世での事なんで、今は上達しているかもしれない。

「さすがの私でも犬に負ける事はないぞ。……いや、迷宮都市なら或いはそんな犬もいるのか?」

 ……ペットショップに行けば喋る奴がいるんだから、将棋指せる犬位はいそうだな。負けたらへこみそう。

「クランマスター同士で、そういうボードゲームなんかもやるんですね。そんなに干渉し合わないイメージを持ってました」
「スケジュールの都合もあるからプライベートで一緒になる事はあまりないが、定期的に交流の時間を作ってるんだ。良く麻雀をやるよ」

 イメージが合わないにも程があるチョイスだ。
 この様子だと、日本にあったゲームは一通りありそうだな。さすがダンマス。きっとオセロから普及を始めたに違いない。

「エルミアはすぐ寝てしまうから基本は他の四人で打つんだが、かなり高度な駆け引きが展開されるな」
「麻雀って運の要素が大きいゲームだと思いますけど、捨て牌からスジ読んだりとかですかね?」

 それだけだと高度とは言い難いな。手積みだったら自分の山を操作も出来るだろうが、多分自動卓だろうし……。まさか、高度なイカサマじゃないだろうな。

「それは当然として、牌の位置を完全に把握し、相手の身体状況、動き、視線、呼吸を読み取って動向を読み合うという、ほとんどイカサマギリギリの闘いになる。相手に読ませない為に無理やり心拍数上げたりとかな。やり辛いのはリハリトだな。あいつ麻雀打つ時は必ず甲冑着けてくるから、表に出る情報が少ないんだ。その癖、裏をかくのが得意だから手に負えん」

 それ、冒険者の能力を駆使したらほとんど超能力染みた事になるんじゃないか?

「金持ち同士なら、さぞかし高レートの戦いになるんでしょうね」
「ああ。本当に危険な戦いだ。良く剣刃が小遣い全部巻き上げられて泣いているよ」

 あの人小遣い制だったのか。高額の酒をポンと買えるわけだし、小遣いっていったって並の額じゃないんだろうが……妙に生活臭が溢れているな。

「さて、もう一局いこうか……慣れてきたし、そろそろ一勝くらいしたいところだ」
「それは良いんですが……えーと、俺達こんな事してて良いんですかね?」

 ここ戦場の筈なんだけど。

「なんなら囲碁もあるが」
「いやそうではなく。……ここは戦争中で、俺達は遠征しに来たわけなんですけど」
「……とは言ってもだな。実は夜光の奴が零していたんだが、正規の軍の方もやる事がなくて暇らしい。人が斬れなくて禁断症状が出そうだとか冗談で言っていたが、あいつの場合は洒落にならんからな。どこかで出番がないと不味い」

 どんだけ危険人物なんだよ。

「つまり、表向きの部隊ですら仕事がないんだから、例の『ロクトル』絡み以外で我々が出る事はないだろうという事だ」
「さいですか……」
「やはり、基本はこうして待機になるな。ただ、何か動きがあり次第、時刻関係なく出撃する事になるから準備はしておいてくれ」
「準備はいつでも」

 俺は特に準備は少ない。今は私服だが、着替えるのだって一瞬だ。デーモン君にだってなれる。

「疲労を溜めない程度に訓練するも良し、街を散策しても良い」
「一般の店なんてほとんど開いてませんよ」

 開いてるのは王国軍御用達の酒場と本当に僅かな生活必需品の店だけだ。一応王国通貨も持って来ているが、それも無駄に終わりそうだ。
 阻害も掛からないし娼館でも行こうかなとも思ったのだが、避難が済んだ今では王国軍に組み込まれた専用の方々しかいない。
 正式な援軍であるという建前がある為、俺達がそれを利用するのは禁止されているし、ジェイルから聞いた限り正直レベルが低そうだ。
 路地裏にはフリーの方もいらっしゃるが、そちらは更に酷く、見た目アレで臭いがキツくて最悪の場合病気持ちもいるらしい。

『あー、酸っぱいブヨブヨの乾燥芋とか好きだったりするか? そういうのが良いっていうならなんとか……』

 ごめんなさい。そんな事言われてしまったら色々萎えてしまいます。
 病気位なんとかなるが、路地裏を覗いてみた限りさすがにキツイ容姿の方ばかりだった。ニーナちゃん達を見てしまった後だとレベルの差に愕然としてしまう。
 ほとんどゴブリンにしか見えないような人もいるのだ。意外なところでティリアとオークさん達の視覚的関係性を知ってしまった気がする。
 王都あたりの高級娼館なら、かなりグレードが高くなるらしいんだが……今回は大人しくエロ本で我慢するしかない。迷宮都市に戻るまでに目に焼き付けておかないと。

「まさか、普通の遠征もこんなに暇なわけじゃないですよね」
「今回はかなり特殊な例だな。その中でも我々は極端だ」
「いつもは、移動時間、ばっかり、です」
「ニンジンさんは遠征経験多いんだっけ?」
「はい。移動、情報収集、移動、殲滅、移動、報告、移動、です」

 それはそれでキツイな。

「まあ、滅多にない骨休めだと思うとしよう。最近は忙しかったからな」
「ほんとにこんなんで金もらって良いのかって感じですがね」
「多分、ミユミちゃん、一番、働いて、ます」

 本当にそうっぽいよな。

「美弓の奴とは定期連絡取ってるんですよね? 何か進展はありましたか?」
「あれば昼の集会で伝えている。昨日の報告ではラーディン王都に潜入はしたとの事だったが、それだけだな」

 そりゃ一日じゃな。暗殺するかどうかは知らないが、まずは情報収集が先だろうし。



 そうして将棋を続けていると、部屋に訪問者が現れた。

「団長、遅れていたゴーウェンが着任しました」
「ベネットか。ご苦労さん」

 部屋に入ってきたのはベネットさんという< アーク・セイバー >所属の女性だ。グレンさん担当の副官らしく、今回の遠征では通常の遠征軍として参加しているらしい。
 ただそれは偽装で、グレンさんの副官としての役割を優先しているそうだ。
 彼女の後ろから見慣れた巨体が姿を現す。遅刻組のゴーウェンだ。俺の姿を見て少し驚いていたが、相変わらず何も言わずに会釈だけをする。

「おー、でっかい、です」

 ニンジンさんがそう言うが、馬と違ってペシペシ叩いたりはしない。そこら辺は常識的らしい。

「で、どうだった合コンは? 楽しめたか?」
「……合……コンだと」

 なんだそれは。俺の知っている合同コンパの事で良いのか? まさか、あいつそんな理由で遅刻したのか?
 探るようにゴーウェンに視線をやると、目を逸らされた。……マジかよ。

「馬鹿な……」

 俺達のゴーウェンさんがそんな遠くに行ってしまったなんて……。
 何故俺を誘ってくれなかったんだ。正直、デーモンになるより合コンに行く事を優先したかった。そりゃ遅刻位するさ。

「あー、そうゴーウェンを睨んでやるな。ウチの福利厚生の一環として、若い奴らには一般の子とそういう席を作るようにしてるんだ。今回はたまたまタイミングがな」
「……そんなイベント用意しているのは団長だけですがね」

 ベネットさんの突っ込みが入る。
 そうか……グレンさんの部隊に入ればそんな素敵なイベントが発生するのか。しかも相手は一般人……俺にはほとんど縁のないゾーンだ。
 どうする、今からでも< アーク・セイバー >に……、いや、さすがにユキさんや他のメンバー、ついでにアーシャさんにぶっ飛ばされそうだな。

「既婚の冒険者のほうが良い成績を出すという統計もある位だからな。何も問題はあるまい」
「別に否定したわけではありませんよ」

 そんな統計があるのか。
 なら仕方ないよね。冒険者として上を目指す為にも俺も結婚を……その前段階でも良いから、何とかして相手を見つけなければ。……いや、トマトさん以外で。

「と、ところでそれって、< アーク・セイバー >の人以外でも参加できたりしませんかね? 実は参加したいという人に心当たりがあるんですが……」
「うーん、一応欠員が出た時は推薦さえあれば外から呼んでくる事もできるようにはしてあるが、やはり部隊最優先、その次にクラン員優先になってしまうな。結構人気あるんだ」

 くそ……そりゃクラン内の福利厚生なんだから当たり前だよな。

「興味があるならギルド……いや、いっそダンジョンマスターに言えば見合い位セッティングしてくれるんじゃないか?」
「え? そういうもんなんですか?」
「ギルドで結婚相談所を作る位には推奨しているからな。中級以上なら問題なくサービスを受けられるはずだ。ツナ君なんて若手のホープなんだからいくらでも相手はいそうだ」

 言われてみれば、そんな張り紙を見た事もある。TVでやってるCMが何故かブリーフさんだから誤解してたが、普通は人間向けのサービスか。

「ちなみに、ダダカは違うが私や剣刃もダンジョンマスターの紹介で結婚した口だぞ」

 ああ、この人も既婚者なんだっけ。
 そっか……ダンマスにお願いすれば聞いてくれるのかな。
 ……しかしなんだろう。あの人に頼むと、色んな意味で物凄い相手を紹介されそうな気がするのは気のせいだろうか。

「ベネットもそろそろ良い年なんだから見合いでもするか? 相手ならいくらでもいるぞ」

 そうか、ベネットさんはまだ未婚なのか。
 ……結構年上っぽいがアリだな。ショートの髪型はともかく、ピンク色だからきっとエロい筈だ。あの真面目そうな顔の奥にはいやらしい妄想が詰まっているに違いない。きっと夜な夜な搾り取られてしまうのだろう。……くっ。

「結構です。まだ考えてないですし、姉さん置いて私だけ結婚すると姉妹関係に罅が入りかねません」
「アネットは……無理だろ。ローランの奴絶対気付いてないぞ。アーシェリアとくっつく気配もないし、あいつの頭はどうなってるんだろうな。噂通り実はホモなんじゃないか?」
「……それは言わない方向で」

 この話しぶりからすると、グレンさん達とこのベネットさんの姉妹は迷宮都市に来る以前からの関係者なんだろう。
 詳細は良く分からないが、このベネットさんのお姉さんがローランさんの事が好きという事は分かった。そして、それが実る実らない以前に気付かれてもいないと。……あの人、さぞかしモテるんだろうが、そういう身近な恋愛事に鈍そうではあるよな。……あとアーシャさんも。クロのほうが何だかんだで早く結婚しそう。

「とにかく、これからゴーウェン連れて宿舎内の案内をして来ますので、何かありましたら事務所のほうに連絡を……」
「あー、分かった分かった。いってらっしゃい」
「ゴーウェン」

 ベネットさんに連れられて部屋を出ていこうとするゴーウェンを引き止める。

「……あとで、みんな集めてお話な」
「…………」

 いつも通り返事はなかったが、意味が伝わっていないという事はないだろう。微かに狼狽した気配が伝わってくる。巧妙に誤魔化してはいるようだが、今の俺の勘は鋭いぞ。
 今日の夜にでも、みんなで詰問大会開催決定である。



 だが、開催された詰問会はゴーウェンの無言の抵抗により幕を降ろした。
 必死だったのが俺だけというのが最大の敗因だろう。良く考えてみたら、フィロスもサージェスも特に興味ないのだから当たり前だ。



-3-



「ほー、合コンというイベントがあるのか」

 むしろ、この憤りを分かってくれたのは部外者のジェイルだった。翌日の朝、飯をたかりに来たジェイルに話すとそんな答えが返ってきた。
 こいつはロリコンだが、そこまでターゲットが狭くはないらしく、年下に見えればOKという大らかな男だ。ただ、年を取ると問題になってくるタイプだろう。実に迷宮都市向きだ。

「分かってくれるか。良し、俺のパンも食って良いぞ」
「いやー、悪いなー……ってこれ、勝手に持ってきて良いヤツじゃねーか」

 そもそもこの食堂で飯食えるのは迷宮都市所属の人間だけなのだから、食えるだけありがたいと思いなさい。
 というか、毎日来るつもりじゃないだろうな。俺達がいないと入れないぞ。

「僕も誘われはしたんだけどね。わざわざ時間割くような事でもないかなって断ったんだ」

 遅刻しなかったから大体分かっていたが、フィロスは参加していないらしい。
 お前の場合、放っておいても寄ってくるだろうから必要ないんだろうな。ナンパ行こうって言っても断るしさ。

「フィロスはまだ結婚しないのか? ほら、前に紹介してもらった幼馴染の子とか」
「幼馴染?」

 なんだその素敵ワードは。俺にはそんなのいないぞ。いたような気もするが、売られていった筈だ。

「あまり考えた事はないな。最近会ってないし」
「幼馴染みって事はスラムに住んでるのか?」

 あそこ魔窟だから女の子とか生活出来ないんじゃないか? 一般人が足を踏み入れると数分で命までカツアゲされるって噂だぞ。

「師匠が一緒にいるから安全なんだよ。あんまり外に出る事はないし」

 話を聞く限りじゃ、スラムの中では特権階級っぽい立場だったみたいだからな。俺より良い物食ってたはずだ。

「フィオちゃん、この街に来てるぞ」
「え、何でだい?」
「フィオちゃんって……紛らわしい名前だな」

 フィロスのフィロとほとんど同じ響きだ。

「昔は良く双子に間違われたから、僕の名前に合わせて付けられたんだよ。……それは良いんだけど、何でこの街に?」
「いや事情は知らないが、一般兵の宿舎で働いてるのを見かけた。そういう仕事を請けたんじゃないか?」
「……おかしいな。師匠がこんな危険な場所の仕事を許すわけ……ごめんジェイル、案内して貰っても良いかな」
「悪い。俺、この後仕事あるから場所だけでも良いか?」
「あー、そうだよね。それで良いよ。後は自分で探すから」

 お前、本当に飯だけ食いに来たのかよ。

「俺は暇だから一緒に行って良いか?」
「え? ああ、構わないけど、面白くはないと思うよ」

 訓練かグレンさんと将棋指す位しかやる事ないしな。フィロスの幼馴染にも興味あるし。

「ところで、このパンって持ち帰っても良いのかな。明日からしばらく来れないから保管したいんだけど」
「……知らんが、あそこにいる受付嬢さんに聞いてみれば良いんじゃないか?」

 聞いてみたが、駄目らしい。ジェイルは暫く王国軍の飯だな。



 ジェイルに教えられた場所は街の郊外。騎士団が宿舎を構える場所からかなり離れた一般兵の宿舎だ。宿舎とは名ばかりのほとんど仮設テントのような建物ばかりで、雰囲気も暗い。
 ここにいるのは軍人ではなく、基本的に徴兵されて来た人達ばかりだから身につけている物もバラバラだ。何故か農具を構えている者もいるが、武器位支給されないのだろうか。
 とても兵士には見えない物乞いも多い。ほとんどスラムの出張所の様相だ。難民キャンプと言われても納得しそう。

「なんでデーモンなんだい? もう会議以外では着なくても良いって話じゃなかったっけ」
「そこはほら……こういうところで絡まれると怖いじゃないか」
「そんな事気にするようなタイプじゃないだろうに。それに、関係なく絡まれてるけど」
「何でだろうな……威圧感が足りないのか?」

 優しく拳で挨拶するとどこかへと逃げていったが、変なゴロツキ達は絡んで来る。
 声の《 偽装 》はすでに掛かっていないとはいえ、こんな全身甲冑相手にカツアゲをしようなんて見上げた根性だと思うぞ、うん。……というか、頭おかしいんじゃねーか。

「こんなところにお前の幼馴染がいるのか?」
「うーん、ちょっと信じられないんだけど、ジェイルの言う事だしな」

 あいつが嘘言ってもしょうがないしな。見間違いの可能性がある位か。

「ちなみにどんな子なんだ? お前と双子に見られるって事は華やかな感じか?」
「そう見られたのは子供の頃だけだよ。今は何ていうか……地味な子だよ」

 お前に似てるのに地味な子とか想像出来ないんだが。
 こうして立派な鎧纏っていると、何処ぞの王子様が下々の者達を慰撫しに来たようにも見えるぞ。俺は付き人兼護衛だ。

「スラムの知り合いの顔もチラホラいるね。……ちょっと話聞いてくるよ」
「おう、いてらー」

 と、その場に残された俺だったが、ポツンと立ち尽くしていると再び度胸のある若者が絡んで来たので、暇潰しがてらプロレスごっこに興じる事にした。
 フィロスが戻ってくる頃には観客が人垣を作る位の盛り上がりである。どうも、ガラの悪いチンピラが一方的にやられてるのを見るのが面白いらしい。
 興行プロレスのようなものなので、俺も関節技や絞め技のような地味な技でなく、お客さんに分かり易い派手な技でパフォーマンスする。甲冑がアグレッシブに暴れまわるのは新鮮に映った事だろう。お捻りはなかった。

「……たった数分離れただけなのに、何やってるんだい」

 フィロスには呆れられてしまったが、俺は僅か数分で人気者だ。いつかの< レスラーズ >の試合で、観客向けパフォーマンスを習得していたのが大きいのかもしれない。
 ともあれ、あれだけ派手な事をすればもう絡んで来る奴もいないだろう。傷は残していないが、それでも相手のチンピラはボロボロになってたしな。中々良い暇潰しになった。

「食堂か倉庫で働いてるらしいってのは分かったよ。基本裏方らしいけど」
「いるって事は確定か。……しかし、今更だがこんな全身甲冑で会いに行っても大丈夫か? 何なら脱ぐけど」
「大丈夫じゃないかな。物怖じしない子だし。気にしないと思うよ」

 こんな悪鬼のような姿でも物怖じしない子なのか。デーモンさんだぞ。……絡んで来たチンピラといい、王国人って何本かネジ飛んでないか?



 教えられたという食堂に行くと、おそらく徴兵されて来たと思われる一般兵の皆さんが配給を受け取る為に並んでいた。
 食堂というよりは被災地の配給所だな。テーブルがあるわけでもないし、配給されている物も、明らかに水分で水増しされたスープのような物で、正直栄養がありそうには見えない。それでも貴重な食糧なのだろう。配給には多くの人が群がっている。

「あー、確かにいるね。裏の簡易施設で煮炊きしてるのがフィオだよ」
「ほう……どれどれ」

 昔の事とはいえ、フィロスと双子に見間違われる位だからパーツは似てるんだろうとあたりをつけて探してみるがどれだか分からない。

「あの金髪で髪結んだ子だよ」
「と言われても、金髪多いし……ああ、あの子か」

 フィロスが指差す方向を追っていくと、確かに金髪の子がいた。
 そう言われれば確かにパーツの一つ一つは似てると言えなくもない。……だが、何故かは分からないが、背景に溶け込んでしまう程に地味だった。モブ子さんだ。
 決して不細工ではないし、パーツは良い物が揃っている。なのに総合してみると地味な、なんとも言えない子だ。
 ……素材は悪くないんだから、ああいう子に限って零細プロダクションの新人プロデューサーにスカウトされてトップアイドルへの道が開けたりするんだろう。
 王国にアイドルプロダクションとかないけど。

「ちょっと忙しそうだから、後で時間取れないか声掛けてくるよ」

 フィロスがフィオちゃんの元まで歩いていくのを見送る。
 遠巻きに見ていると、声を掛けられたフィオちゃんが突然現れたフィロスにビックリしているのが分かった。やはりあの地味子さんがフィオちゃんなのか……。二人で並ぶと地味さが目立つな。



 近くの広場で落ち合う事になり、二人で僅かな時間を潰しているとフィオちゃんがやって来た。

「ごめんねー、ちょっと今忙しくて。……待った?」
「仕事ならしょうがないよ」
「それにしてもフィロ君が来るなんてビックリしたよ……ってうわっ、そ、その人は誰? お友達?」

 案の定、俺の姿に驚くフィオちゃん。だが、お友達とか言い出すあたり、恐怖は感じていない事が分かる。

「あーと、仕事仲間のデーモン君」
「そ、そうなんだ、フィロ君がお世話になってます。デーモンさん」

 やはり、デーモンで通した方が良いのだろうか。……まあ良いか。無言で手を振っておく。

「でも、いきなりだからびっくりしたよ。騎士団が来るって言うからひょっとしたらって思ったんだけど、やっぱりだね」

 あれ、この子まだフィロスが騎士団所属だと思ってる?

「あー、師匠から聞いてないかな。かなり前に騎士団は辞めたんだ」
「……え? でも、その鎧……って、騎士団のやつじゃないね」
「今は迷宮都市で冒険者やってるんだ。ここに来たのも、その遠征なんだ」
「はー、そうなんだ。ししょー、何も言わないからなー」

 二人が師匠と言っているのは、フィロスの事を鍛えたという元王国騎士団長の事だろう。フィオちゃんも師匠と言っているあたり、この子も剣を習っているのかもしれない。

「でも、何でこんな危ない場所に来たんだい? 師匠は止めなかったのかな」
「……そのししょーが倒れちゃって、お薬代稼ぐ為の出稼ぎです。はい」
「倒れた?!」
「あー、お薬飲めば大丈夫だから、そこまで心配しなくて良いよ。……ただ、お金が必要になっちゃってね」
「そういう理由なのか……」
「フィロ君に連絡しようとして、騎士団にお手紙書いたんだけど、それ見て来てくれたわけじゃないんだね」
「あ、ああ……そうだね。いつか紹介したジェイルに教えて貰ったんだ」
「お前ら、全然情報が噛み合ってないな」

 半年ぶりなんてレベルじゃなく会ってないっぽい。
 聞いてみれば、フィオちゃんはフィロスが騎士になる事に反対だったそうで、騎士団に入った後は数回しか話してないらしい。

「ともかく、師匠の薬代だったら出すよ。どれ位かな」
「え……その、結構高いんだけど」
「それより薬そのものを渡したほうが良くないか? ポーションなら、大抵の病気は治るだろ」

 低品質のやつでさえ、骨折してても一瞬で治る超回復薬だ。よほど特殊なものでなければ病気全般にも効くという話も聞いている。
 今でこそ回復量が足りなくなって来ているが、迷宮都市の外にいる人なら一発で治るだろう。

「迷宮都市のアイテム渡すのはまずくないかな?」
「ポーションは大丈夫だろ。ユキの実家にも売ってるらしいぞ」

 例外かもしれないが、辺境伯は若返りの宝珠まで受け取ってたし、ポーション程度で問題にはならんだろ。

「そうなのか……っと、< 中品質ポーション >しかないな……まあ良いか。フィオ、これ師匠に飲ませれば多分治るから」
「え? い、今どこから出したの?」

《 アイテム・ボックス 》である。

「というか、雑貨屋で見たことあるけど、ポーションってすごい高い薬でしょ。こんなポンって渡して良いの?」
「良いんだよ。それなりに稼いでるし」

 信じられないのか、フィオちゃんは本当なのかと俺に向けて視線を飛ばしてくる。

「本当だぞ。喉が渇いたっていって水代わりにする位だ」
「そ、そうなんだ……フィロ君、いつの間にそんなお金持ちに……」
「いや、水代わりに飲んだのはあの時だけだからね」

 安物じゃないが、中級まで来た今は本当に消耗品だからな。一回のアタックで二桁のポーションを使う事も珍しくない。
 お師匠さんとやらの病状が分からないので、念の為という事で俺からも< 解毒ポーション >を渡しておく。お近づきの代わりだ。

「な、何が何やら……ありがとうございます」
「盗まれないようにね。最悪盗まれたらまた……連絡は無理だから、迷宮都市に戻ったら一度こちらから連絡するよ」
「う、うん。それは大丈夫だけど……割れないかどうかのほうが心配だな……。容器も高そうだし」

 ガラス瓶だからな。小さいから布で包んでおくと良いよ。

「それより、お前直接迷宮都市に戻らないで、一度王都に寄ったほうが良いんじゃないか?」
「……ああ、そうだね。団長に話してみるよ」

 恩人の見舞いだし、仕事終わった後ならグレンさんも駄目とは言うまい。



 一応、現在の宿舎の場所を教えて、俺達はその場を後にする。

「積もる話もあっただろうに、残っても良かったんだぞ」
「向こうも仕事あるだろうしね。……それに、実はちょっと気不味いんだ。最後に会った時は喧嘩別れに近かったから」

 そんな感じじゃなかったが、過去に色々あったのかな。



-4-



 それから暫く待機の日々が続く。
 戦況は圧倒的に王国有利のまま推移している。辺境伯を含めた王国軍首脳部の集まる全体会議も何度か開催され、その席で詳細な戦況が報告されているので間違いない情報なのだろう。
 辺境伯以外の貴族が会議に出席して分かった事なのだが、どうも彼らは迷宮都市と王国の力関係が良く分かっていないらしい。前線にいる以上、力を目にする事はあっても、それでも自分達のほうが偉いと認識しているようだ。会議の場でもこちらを小馬鹿にしたような、特にフィロスに向けて放たれる嘲笑のようなものが多い。
 それに真っ先に反応するのはフィロスでもグレンさんや夜光さんでもなく辺境伯だ。相手を殺しかねない勢いでその場を収める。それこそ、こいつらはどうなっても良いから自分だけは助けて欲しいと言わんばかりに。……どんだけ怖いんだよ。

 俺達もただ待機しているだけではない。何度か『ロクトル』の目撃情報があったので現場に急行する事もあった。
 ただし、その尽くが空振りだ。足の遅いニンジンさんを小脇に抱えて急行しても、現場には足取りを掴む手がかりすらない。
 ほとんど末期戦の様相となり戦線を維持出来なくなった為か、ラーディンはゲリラ戦に近い戦術を組み込み始めている。
 件の勇者様も、それに合わせて電撃戦に似たフットワーク重視の戦法を取っているらしく、動きが掴めないのだ。
 痺れを切らせたグレンさんが探知用の仕掛けを各地に放ったらしいので、さすがに時間の問題だろうとは思うのだが。
 このままだと戦争自体が終わりかねないので、急いだほうが良いかもしれない。終戦のどさくさに紛れて逃げられたら厄介だし。



「すげえ暇なんですけど」

 俺もとうとう正面切ってグレンさんに愚痴を零すようになってしまった。

「まあ、そう言うな。……ところで、その手はちょっと待ってくれないか……良い手が浮かびそうなんだ」
「良いですけど……」

 グレンさんとの将棋も何回指したか分からない。一度麻雀をやろうかという話もあったのだが、ルールが分かる人間がいなかったので、結局将棋に戻ってきた。
 さすがに飽きてしまったのか、ニンジンさんも同席していない。
 グレンさんの腕が上がってきたので将棋自体は面白くなってきたのだが、それでも延々と将棋だけ指しているのは辛い。

「……王国軍の方にも情報は最優先で回すように言ってあるんだがな。このままだと戦争自体が終わってしまいそうだ」
「美弓のほうはどうなんですか?」
「ああ、いつでも動ける状態にはある。こちらが『ロクトル』に接触出来ていないから待って貰っている状態だな。無駄に時間があるので王城の見取り図まで完成したと言っていた。目ぼしい物はないから放置してるが、宝物殿にも自由に出入り出来るらしいぞ」

 何をやっているんだろうか。あいつは。

「……どうやら、『ロクトル』を召喚したのは王城に出入りしていた魔術士ではなく、別にいるらしい」
「それ、初耳ですが」
「昨日の報告で分かった事だ。昼の会議ではみんなにも伝えるつもりだが……黒幕は変わらず魔術士の方だ。その召喚士……サティナという名の少女はただ命令に従っただけらしい」

 女の子なのか。

「魔術士は……確かグラスとか言ってましたっけ?」
「そうだ。グラス・ニグレム。そいつには召喚術のスキルはない。低レベルの呪術系スキルを幾つか習得しているらしいから、それを使って召喚士を洗脳したというパターンが濃厚だな。報告ではラーディン王国軍兵士にも洗脳の痕があったから、それもそいつの仕業だろう。……まだ未確認だが、国王も洗脳されている可能性が高い」
「召喚士の方は完全にシロだと?」
「……胸糞悪い話ではあるが、どうも黒オーブを使って召喚術のスキルを習得させた可能性が高いらしい。ミユミ君は《 看破 》の専門家ではないので詳細までは分からないが、視覚と脚の神経を代償にしているようだ。分かるのがそれというだけで、他にもデメリットを抱えてる可能性がある」

 他人にだけ代償を負わせて、異世界から人を拉致したって事か。最悪だな。分かり易い悪役だ。

「その子も保護対象だな。黒オーブの影響だと一朝一夕で治せはしないだろうが、それも事が済んでからだ」
「黒オーブ……というか、スキルオーブって外でも出回ってるもんなんですかね? まさか迷宮都市から流出したとか」
「黒いやつに限らず、オーブ含めた重要機密の類は迷宮都市から持ち出された場合はすぐに分かるようになっている」

 遠征ガイドに書いてあった、持ち出し禁止リストは全てって事かな。って事は別口か。
 昔ティリアが拾ったエロ同人誌は重要機密ではないと。……あの類も規制したほうが良いんじゃねえ? 難しいのかもしれないけどさ。

「おそらくだが、黒オーブは暗黒大陸か魔の大森林にある遺跡からの出土品だろう」

 ダンマスが言っていた未調査の遺跡か。

「あそこは亜神のテリトリーでもあるからな……無闇に敵を作る必要もないと交渉しているのだが、時間を掛けたのが裏目に出たって事だな」
「……亜神?」
「ああ、亜神というのは……」
「失礼する」

 俺とグレンさんの話に割り込む形で誰かが部屋に入って来た。

「辺境伯……。供回りも連れず、どうしました?」

 現れたのはネーゼア辺境伯だ。ここに入るには、本来案内が必要な筈なのに一人である。急いで来たのか随分と息が荒い。

「失礼は承知だが、ちょっと急ぎの用件があって強引に上がらせて貰った」
「それは構いませんが、用件とは?」
「例の勇者の事だ……すまんが人払いしてもらったほうが……」

 辺境伯はチラリを俺を見る。
 ……ああ、人払いって俺の事か。辺境伯さんはデーモンの姿しか知らないからな。

「いえ、彼なら問題ありません。辺境伯が直接来たという事はどこかに現れたという類ではありませんね?」
「……ああ、本当にすまんと詫びるしかないのだが。ウチの下士官が、例の勇者からの連絡役と数日前に接触していたらしい」
「ほう……連絡の不備か何かで……いや違いますか、何がありました?」

 それなら詫びる必要なんてない筈だ。

「その連絡役は迷宮都市の関係者を呼べと言ったらしいのだが、故意に情報を止めてどこかに監禁したらしい。今、場所を調べさせているところだ」
「……まずいな」

 連絡役を送ってきたという事は、向こうから接触してくる意思があったという事だ。対象が迷宮都市の事をどれだけ知っているかは分からないが、迷宮都市が正式に合流したのを見計らい、保護か、亡命か、そのあたりの渡りを付けに来たという線が濃厚だろう。
 問題は、その連絡が遅れる事で『ロクトル』との接触が困難になるかもしれないという事。いや、最悪それは良いとしても……最大の懸念は……。

「その下士官に命令した騎士というのが、極端な迷宮都市嫌いでな。迷宮都市を指名した事で余計な事をしている可能性がある」

 ……もしも殺されてた場合、『ロクトル』の心象は最悪になるだろう。連絡役との関係にもよるだろうが、最悪交渉にすらならないという事も有り得る。

「綱君、こちらでも探索を開始するぞ。フィロス、ゴーウェンと……とにかくメンバーを集めてくれ。私は《 念話 》で夜光と連絡を取って探索チームを組織する」
「了解」

 嫌な予感がする。何も知らないまま無駄に過ごしていた数日の間に裏で起きた出来事が、致命的な結果をもたらす可能性だ。

「グレン団長、こちらに辺境伯はおられないかと王国騎士団の方が来て……」

 丁度、フィロスがその場に現れた。案内して来たのか、その後ろには全体会議で何度か顔を見合わせた王国騎士団の士官の姿がある。

「辺境伯、先程の件で……」
「おお、おお、見つかったか。何処だ。あの馬鹿は何処に攫ったのだっ!? 捕虜の状況は!?」
「お、落ち着いて下さい。状況は分かりませんが、場所は……」

 伝えられた場所は街の郊外。隣町に避難した富裕層の邸宅だ。そこに連れ込まれたのを見た者がいるという。

「すぐに馬を回せ! 儂自ら叩き斬ってやる」

 辺境伯の焦りは本物だ。まずい事態だと理解しているのだろう。俺達も馬を……いや、この距離なら走ったほうが早い。

「フィロス、ツナ君急ぐぞ。場合によっては荒事になるかもしれん」
「はい」
「……了解」



「まずい……このままでは儂の老後が……」

 辺境伯がボヤいているが、大真面目にそれどころじゃないから。


ではまた来週。(*´v:;.:...
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