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その無限の先へ 作者:二ツ樹五輪(*´∀`*)

第二章「挑む者達」

15/110

第1話「今月デビューの新人を見守るスレ」

-1-



「や」

 その日、1人でギルドの食堂の飯を食っていると、どこかで見たちびっ子がやってきた。
 迷宮都市の前で行列に並んでいた時に話した子である。名前は……そういえば聞いてないな。

「……ども」

 間に挟んだイベントがあまりに強烈だったので存在を忘れかけていたが、実は会ってから4日しか経っていない。
 迷宮都市の冒険者になる為にあの行列に並んでいたのだから、ここにいるのは何も不思議な事じゃないな。

「ちゃんと街に入れたんだね。……相席いい? 色々聞きたい事があるんだけど」
「どうぞどうぞ」

 長らく女っ気のなかった俺だが、この都市に来てから急に女性エンカウント率が激増したようだ。
 しかも可愛い子ばかりだ。素晴らしい。

「そういや、自己紹介してなかったな。渡辺綱だ」
「リリカ。 一応家名もあるけど、リリカだけでいい。……えーと、ワタナベが名前?」

 そういや、迷宮都市の外では家名が前に来る事はないんだろうな。家名持ちとかほとんど会った事ないけど。
 確か、故郷の領主やオカマ貴族は家名が後だった気がする。

「いや、家名が渡辺。といっても1人しかいない家の名前だけど」
「そうなんだ、変わってるね。じゃあ、ツナ君って呼んでも良いかな」
「君でもさんでも呼び捨てでもお好きにどうぞ」

 ユキなんか、最初から呼び捨てだったしな。シーチキンとか言いやがったし。
 ちなみにこんな言い方だが、俺達の会話は日本語でなく、王国で使われている共通語だ。
"君"も"さん"も、近い敬称を翻訳しているという認識で間違いない。いや、誰に言っているというのでもないが、念の為。

「じゃあツナ君、ここにいるって事は冒険者登録は終わってるって事だよね?」
「そうだな」
「トライアルダンジョンってもう挑戦した? 挑戦したなら中の情報教えて欲しいんだけど」

 トライアルダンジョン……。
 今更感が凄いが、情報持ってないなら、そりゃ俺が攻略完了済とは思わないよな。

「ああ」
「そうなんだ。私、昨日ようやく登録して、受付のお姉さんにそんなテストがあるって聞いてね。挑戦前に情報集めてるんだ」

 うん、何か普通でいいな。
 ユキよ、普通はこういうもんだぞ。事前に出来る限り情報集めてから挑戦するんだ。
 いくら死なないからって、登録して講習受けて、そのまますぐにダンジョン攻略とかやらねえだろ。

「1人で攻略するのか?」
「そうだね、私、外でも最近は1人だったから、そのつもり。どうしても無理なら仲間探す予定だけど」
「魔法使いだよな? 魔法使いの戦闘方法って良く知らないんだけど、1人でどうにかなるもんなのか」

 魔法使いは、打たれ弱く、攻撃までの時間が長いけど、火力は凄ーいというのが俺のイメージだ。
 これまでに聞いた情報でも、純魔法使いはそんな感じらしい事はわかっている。
 トカゲのおっさんのような、サブで魔法使ってますってのはまた話は変わるらしいのだが。

「世間一般の魔術士はそうだけど、私は師匠が変わってたから、1人でも何とか立ち回れるって感じだね。もちろん剣とかは使えないけど」

 世間一般というのが、多分俺がイメージしている魔法使いなんだろう。
 多分この子は変わっているってだけじゃなく、単純に強い。列に並んでた時は良く分からなかったが、こうして面と向かって話すと良く分かる。
 これは強者のオーラだ。
 ただ、迷宮都市でこれまで相対してきた化け物染みた強さではない、極真っ当な強者だ。きっと外では結構な経験を積んできたのだろう。
 これまでエンカウントした奴らがおかしいだけなのだが、こうして普通の強い人と会うとちょっとホッとする。小さいし。

「外で冒険者やってるなら、オークは倒せる位なんだよな。
オークを単独撃破できるなら、3層までは問題ないよ。4層以降は運もあるんでなんとも言えないけど」

 ユキが言っていたような、オーク撃破が出来る"外の基準で一人前の冒険者"であれば、3層まではなんにも問題ないだろう。
 それ以降は、トカゲのおっさんは明らかに通常の試験官じゃなかったし、ミノはそもそも存在自体が秘密みたいだし。あまり助言する事がない。

「……そうなんだ。え、ひょっとして4層まで行ったの? 最終層は5層までって聞いてたから、もう少しで攻略なんだ。早いね」
「いや、もう攻略完了した」
「……は?」
「今、デビュー待ちの手続き中です」
「え? えーと、何がどうなってそんな事に……。だって、門の前で会って4日だよ。普通半年かかるって受付の人言ってたのに」
「最短記録らしいよ。ユキと……あの時後ろにいた奴と一緒に攻略したから、俺1人の記録ってわけじゃないけど」
「え、えぇーー」

 いいな、何か諦めていた異世界トリップ俺Tueeeものの主人公みたいな展開だ。もっとびっくりするがいい。わはは。
 ……実際は後半2戦とオマケは辛勝もいいところで、全然Tueeeしてないけどな。

「さあ!何でも聞いてくれたまえ。攻略済なんで」
「む、何か急に偉そうになった。いいもん、私もすぐに攻略するから」

 攻略しても講習がないから、デビューまで最低1ヶ月かかるのは秘密だ。

「実際のところ、ただの登竜門だし、上の人達との差が極端に離れてるんでどうしたもんかと途方に暮れてるところだよ」

 こっちはこの後の『無限回廊』10層までの攻略、新人戦とイベントが多いので、トライアルの事などほとんど頭に残ってなかった。
 そういや、明後日、動画の編集会議があるとか受付の人が言ってたな。忘れてたぜ。

「そうか……。なんか凄い壁に阻まれていた気がしてたけど、言われてみたら入り口みたいなものだしね。そこまでの難易度じゃないか」

 いや、それはどうだろうな。
 世間一般の冒険者の実力は知らんが、弱体化してもアレを軽々突破できるかって聞かれると自信ないんだけど。

「じゃあ、攻略に詰まっても、ツナ君に助けてもらうのは無理なんだ」
「それは……どうなんだろう? どういう決まりになるか知らないから何とも言えないけど、同伴者扱いになるのかな。……でもあれ中級の仕事だって言ってたしな。
普通に考えるなら、他の攻略出来てないルーキーと一緒に行くのが良いと思うぞ」

 仕組みを考えるに、同伴者としてですら同行は無理そうではある。

「俺達が一緒にダンジョン攻略するとしたら、順当に行ってもF級に上がってからかな」
「えふ級?」
「ここで使われてる文字の一種で、冒険者のランクを表したものだよ。俺は明日か明後日にG級に昇格して、F級はその上。
そこからE、D、C、B、Aって上がってくんだってさ。実はそれぞれのランクも+とか-で細分化してるらしいけど。まだ詳しくは知らない」
「へー、そういう格付けがあるのか。外とは違うんだね。私のいたところとか凄い適当だったよ」

 どっかで聞いた通り、外にはそんな格付けはないらしい。

 この格付も、聞いてみた限りでは、よくA級の上に設置されたりするS級はないんだよな。今の最前線の人たちがA級だから、100層越えたらS級になるんだろうか。
 ちなみに、フィロス達は既にG級に昇格済だ。俺達2人はギリギリの攻略だった為、昇格手続きが遅れている。
 今日もこれから色々手続きがあるのだが、デビュー講習から何枚書類書いたか分からない。日本語覚えてて良かった。
 そんなスケジュールなので、あんまり空き時間もない。なので、ユキは今も飯も食わずに生活用品を買いに出かけてたりする。ヘアブラシがどーとか、洗顔料がどーとか。

「リリカは何か目標でもあるのか?」
「えーとね、実はこれといって……。お祖母ちゃん……師匠が死んでからはちゃんと1人立ちするのが目標だったけど、もう一人前と言えば一人前だし。
……そうだね、この街色々凄いから永住出来る位には頑張りたいかな。どれ位の物価で、冒険者がどれ位稼げるかも分からないけど。そっちは?」
「あんまり変わらないな。元々は人間としての尊厳を保てる位の生活がしたいなって感じだったけど、今の時点でも1000倍位いい暮らしできてるし」

 とりあえず、100層目指しますってのは言いふらす気はない。

「1000倍って……どんな生活してたのよ」
「貧乏自慢・不幸自慢が聞きたいなら、話してもいいけど、多分ドン引きされるレベル」
「あ、ごめん。やっぱりいい」

 それでも、クリフさんよりマシだったっていう前提があるから笑い話に出来るんだけどな。
 ここでこんな人もいるんだぜって、クリフさんの話を始めるときっと俺が泣いてしまうし。

「まあ、リリカならすぐデビューできるんじゃないか?……かなり強いだろ」
「……え、そ、そうかな。強そうに見える? 私小さいから初対面だと結構舐められるんだけどね。えへへ」
「俺、わりとそういうの分かるから。とりあえず、魔法っていうほとんど未知の力もあるから喧嘩は売りたくないな」

 未知の力ってのは脅威だ。相手の情報もなしに戦闘とか、本当だったら冗談じゃない。
 ミノタウロスの《 強者の威圧 》や、猫耳の消えるよく分からんアレとか、初見でえらい目に遭ってるしな。

「へえ、……ごめん、こっちが侮ってたかも。やっぱりこれだけ短期間でトライアル攻略した人は違うのかな」
「普通、普通。それに、この街の冒険者で、見た目だけで舐めてくる奴はいないと思うぞ」

 ユキだってあの見かけだが、周りの反応は全然普通だ。むしろ歓迎されている。
 きっと物凄いのがいたりするんだろうな。見かけと強さが全然一致しない人。……ダンジョンマスターが既にそれだな。ショタジジイとか、ロリババアとか会ってみたい。
 まあ、舐めるとは違う意味でprprしてくる奴はいそうだ。主に掲示板とかで。

「そういえば、冒険者としてはリリカの方が経験長いけど、ここだと俺のほうが先輩だな」
「なんて事……。街に入る前はあんなボロボロの服着た一般人だったのに、たった4日で追い抜かれるなんて」
「先輩って呼んでもいいよ」
「それは遠慮したい。……私、もう3年以上、この仕事してるんだけどなー」

 と、ほとんど初対面でこんな軽いノリの話をしていたが、リリカもかなり規格外の部類だった。
 この2ヶ月後に、"ソロ攻略"での正式デビューの報告を受ける事になるのだ。



-2-



 午後、デビュー手続きの合間で、リリカと昼食時に会った事をユキに話してみる。

「その子って、入り口で会った子? ちゃんと冒険者登録してたんだね」
「ダンジョンマスターに聞いた話だと、俺達の審査時間が特別短かっただけで、あのタイミングで門にいた奴らは登録しても講習が間に合わなかったみたいだな。
リリカもちゃんと街に入れたのは昨日らしいし」

 どこに泊まってたんだろうな。審査してる人達用の宿泊施設でもあるんだろうか。

「そうなんだ。街も入れないで長い審査とか嫌だよね。
でも、初心者講習の方は、普通の人だったら攻略中に1ヶ月過ぎるから関係ないんじゃないかな? 僕らはトライアルダンジョン攻略が早かったから意味あったけど」

 言われてみればそうだ。平均して6ヶ月かかるなら、1ヶ月待ちだろうがあんまり関係ないな。
 俺達みたいな即日デビューなど、普通は有り得ないし、フィロス達の半月だって普通とは言い難い。

「でも、魔法使いの人って今まで会った事ないから、色々話聞いてみたいな」
「お前器用だから、割りと簡単に覚えられるかもな。そういや、適性検査の結果とか戻ってきたか?」

 適性検査というのは、ダンジョンマスターの部屋で教えてもらった魔法の適性を調べる検査だ。
 魔力導体という、魔力を流し易い水晶球のようなものに魔力を流して検査を行うのだが、この検査が地味な上に長いのだ。
 昨日1日はそれでほとんど丸々潰れてしまった。

「まだだよ。1週間かかるって言ってたけど聞いてなかった?」
「げ、そんなに掛かるのかよ。聞きそびれてた。……次の攻略で魔法使えるかなって期待してたんだけどな」
「それは残念だね。でも、ツナなら攻略自体は大丈夫なんじゃない? 」
「これまでの事があるから不安ではあるけど、講師からは問題ないだろうって言われてるな。とりあえず目標の10階は突破しないと」

 俺達はデビューしたてで、次回が初の本番攻略となるわけだが、次に挑むダンジョンは既に決まっている。
 といっても、挑戦するタイミングこそ違えど、新人が挑むダンジョンは全て同じだ。

『無限回廊』。この街のダンジョンの中核とも言えるダンジョンの第10層まで。これを踏破する事が目標となる。

 ただし1つ制限があり、この攻略は全員ソロで行わなければいけない。パーティを組んでても、ダンジョンに入れば自動解散して1人になるらしい。
 俺達が貰う冒険者ランクのG級、所謂最下級ランクは新人がデビューしてからこの10層踏破までの仮免許のようなものらしいのだ。
 このG級でいる限り、迷宮攻略でパーティは組めない。無限回廊以外はそもそも入れもしない。トライアルダンジョンですら入れない。

 元々、トライアル第5層のミノタウロス戦はパーティ戦を前提とした試験だ。いや、本当はそうらしい。
 俺達のような例外を除き、通常は6人前後のパーティで攻略する事が基本とされている。
 その試験を突破した者の、個人としての実力を測るのがこのG級ランクでのソロ攻略の目的らしい。

 ここまで言えば分かるだろうが、これは他の冒険者に寄生したトライアル突破者への対策でもある。
 最低限の実力がなくデビューした新人をふるいにかける、第2の試験というわけである。

 というわけで、俺達のような少人数でミノタウロスを攻略した者にとっては、『無限回廊』の1層~10層は特段攻略が難しいというわけでもないらしい。
 本番である『無限回廊』だからといって、最初からハードモードというわけではないようだ。難易度が酷い事になるのは大体30層以降だと聞いている。

 だから次の攻略では、一気に10層まで踏破する事が、俺達それぞれの目標という事になる。
 その後、F級のランクを貰ってようやくコンビ再結成となるわけだ。

 ちなみに、俺達はトライアルを攻略したタイミングがタイミングの為、6日間縛りの制限を受けている真っ最中である。
 G級昇格の手続きすら終わってない状況なので、フィロス達が攻略を始める中、挑戦するのは最後発となる事がほぼ確定している。
 そもそも、デビュー講習のギリギリでトライアルの攻略完了する奴があまりいないらしい。

「しかし、時間はあるって言ってもやる事は多いよな」

 いくら楽勝の太鼓判を押されているとはいえ、その間何もしないという選択肢はない。
 迷宮都市の外なら英気を養うという選択肢もあるだろうが、ここでは自分の能力を鍛える選択肢が山のようにあるのだ。
 先程の魔法の適性試験にしてもその1つである。

「お前は後3日で何やるつもりだ?いや、もうあと2日半か。制限切れたタイミングで入るつもりだろ?」
「前日は動画の会議もあるし休むかな。明日は< クラス >の講習もあるけど、後2日は装備調達とトライアルで覚えたスキルの練習がメインだね。
こないだのスキルLvの話もあるから、内部の値が見えなくても鍛えておきたい」
「俺、訓練はともかく、ポーションいくつかと、食糧だけ大量に持ち込めば大丈夫じゃないかなって思ってたんだけど」

 ユキはこういう事前準備に関してはかなり慎重派だ。
 いきなりトライアルに挑んだ3日前は何だったのかと言わんばかりに、準備を整えているらしい。
 元々、迷宮都市に来た時点で装備は充実してたわけだから、あの1回だけが特別で、元に戻っただけとも言える。

「ツナはそれでもいいんじゃない?トラップに引っかかろうが平気で突破するでしょ。野生児だから、食糧も現地調達可能だし」
「お前の中での俺がどんなイメージなのか、簡単に想像出来てしまうのが嫌な感じだな」
「実際大丈夫じゃない? ちょっと贅沢して、水とカレー粉あれば生きていけるでしょ」
「カレー粉は……そうだな、忘れてたけど買っておこう」

 カレー粉は偉大です。
 カレー粉さえあれば、あのゴブリン肉だってZ級グルメからX級グルメ位には進化するだろう。サバイバルで優先したい物品の1つだ。
 水も嵩張るので、カードで用意したい。カードの場合、そのままのものを買うより3倍位高くなってしまうようだが、これは仕方ないだろう。水は重いし。
 武器は不髭切があるので、これを使おうと思ってる。問題は防具だな。今度は服だけで挑戦とか馬鹿な真似は避けたいぜ。

「まあ、攻略失敗したら笑いに行くよ」
「自分は大丈夫って感じだな」
「事前調査はみっちりしてるからね。正直な話、僕ら2人とも何も問題ないと思ってる。だからって準備を怠るつもりはないけどね」

 まあ、こいつがそう言うなら大丈夫な気もしてきた。

「いくつか攻略動画も買ったから、目ぼしい奴は後で渡すよ。動画見るだけでもかなり違うと思うし」
「ああ、動画までは気が回ってなかったわ。そうだよな、実際の攻略風景見れるなら、そりゃ全然違うよな」

 実際の攻略動画見てるならその自信もそこまでおかしくないか。
 この短期間に何本も吟味出来てそうなのは凄え。確か、1本あたり2時間だよな。

「後の問題は1ヶ月後の新人戦だね」
「そうだな」

 デビュー1年以内の新人が、中級のランカーと戦う年次のイベントが、1ヶ月後に迫っているという。
 タイミングが悪く、俺達は1ヶ月に満たない期間での挑戦となってしまうが、そこはまあしょうがない。

「でも、3対1だろ。何とかならないかね?」

 ちなみに下位ランカーとはいえ、あの猫耳も中級だ。
 相手にもよるが、3人で、万全の体制で望めばなんとかならないだろうか。俺達はデビュー直後の挑戦だが、他の奴は鍛えてるだろうし。

「それはちょっと楽観視し過ぎかな」
「そうか? 今の段階だとどう考えてもキツイけど、もう1人強いの入れて、ここの環境でみっちり鍛えればなんとかならないか」

 ダンジョンマスターも言っていたが、冒険者はデビュー前後で能力が隔絶している。それは、デビュー後に利用可能になる冒険者向け支援サービスによるところが大きい。
 スキル購入にせよ、魔法の習得にせよ、無数に存在する訓練メニューにせよだ。公開される情報もまるで違う。
 確かに相手の中級連中も同じ支援を受けているのだろうが、ずっと利用していた彼らより、デビュー直後の俺たちのほうが伸びしろはあるだろう。
 ついでに、向こうは俺達の情報はあまり持っていないだろうが、こちらは公開されてる相手の情報を事前確認して対策する事もできる。

 というか、勝てばボーナスも出るらしいが、正直お祭りのようなものなので、そんなに勝敗にも拘っていない。

「甘いね。多分ツナは肝心な事を忘れてるよ」
「な、なんだよ」
「新人戦でエントリーしてくるランカーは、新人チームの指名権を持ってるって分かってる?」

 新人戦は3人1チームのエントリーだ。
 このエントリー情報が、指名権を持つ中級以上のランカーに公開され、戦ってやってもいいぜという冒険者が対戦チームを指名するのだ。
 複数指名されたチームの場合は、より"ギルド貢献度?"というのが高い冒険者が優先されるらしい。

「そりゃ知ってるが……だから?」
「まだ分からない? きっとツナ目当てに凄い人が指名してくるよ」

 ……ああ、そういう事か。
 ここまでの俺達の記録は、間違いなく歴代でトップだ。そんな奴らを直接対決が可能な新人戦で指名してこないわけがないか。
 この街は犯罪率こそ低いものの、冒険者連中が血の気が多い事に違いはない。
 噂の新人を試してやろう、または伸びた鼻を叩き折ってやろうと考える人は……そりゃあいるだろう。勝ち目は薄そうだな。

「確かに俺ら目立ってるからな」
「そういう事。しかも、エントリーする人は中級"以上"なら権利を持ってるわけだから、下手したら上級が来るかも」
「そこまでかね。俺達の実力を見たいっていっても、中級と戦うのを見てれば十分じゃないか」
「ツナは自分がどう思われてるのか、世間の声を聞いたほうがいいよ。……僕にも言える事なんだけどさ、ネット上での僕らの扱いってちょっと凄いよ」

 何だ、晒しスレにでも上がってるのか。突撃降臨しちゃうぞ。

「デビュー講習で冒険者用の掲示板の話したじゃない?」
「ん、ああ、したな」
「今が旬な話題っでもあるかもしれないけど、今そこで話題に上がってるの、どのスレッドでもほとんど僕らだよ。
昨日見た中で一番書込多かったの『今月デビューの新人を見守るスレ』だったし。ツナと僕の個人名のスレッドもあった」
「…………」

 晒しスレってレベルじゃないの?
 俺、MMORPGでやんちゃしたプレイヤーが晒される程度の認識だったんだけど。

「関係ない題目の、ニュース速報みたいなスレッドまで僕らの事……特にツナの事が書かれるような状況。
匿名じゃない上に規模も利用者も限られてるから、前世の某掲示板よりは荒れてないのは救いだね。あと、別に悪い事書いてあるわけでもない。
まだ見てないなら一回見ておいたほうがいいと思うよ。実際、情報交換の場としてはかなり活用されてるみたいだから」
「オラ、急に不安になって来たぞ」
「遅いよ」

 やだな、プライベートな生活まで見守られたりするのかな。
 グラサンとか買ったほうがいいのかな。



-3-



【6/1】今月デビューの新人を見守るスレ 38【何かが起きた】


1 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 08:51:24.23 ID:※※※※※※

 ここはデビュー直後の新人達の動向を見守るスレです。
 今月の新人情報は関連URL参照。
 次スレは>>950が宣言して立てる事。無理なら無理って言えよ。
 煽り、荒らし、テラワロスは徹底放置。いいか、触るんじゃないぞ。

 煽り耐性のない人はとりあえずテラワロスをNGに、後は荒らしを見つけたら運営に報告して下さい。
 NG登録の設定方法は板のトップ参照されたし。

●関連URL
・ギルド公式サイト:ntp://*****************.go.jp
・新人情報:ntp://*****************.go.jp/shinjin
・テラワロス監視サイト:ntp://************kanshi-pugera.gr.jp

●前スレ
【その時】今月デビューの新人を見守るスレ 37【歴史が変わった】
 ntp://*****************.com/****.cgi/shinjin/1358564


2 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 08:52:11.63 冒険者ID:※※※※※※

 1乙


3 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 08:52:20.23 冒険者ID:※※※※※※

 乙 あと、前スレ>>1000は死んだほうがいいと思う。


7 :(*´ω`*)@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 08:54:11.00 冒険者ID:※※※※※※

 (*´ω`*)なかなかLvの高い男の娘が出現したと聞いて来ますた


8 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 08:54:12.22 冒険者ID:※※※※※※

 >>7
 (♯´∀`)カ エ レ


16 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 08:57:32.15 冒険者ID:※※※※※※

 一昨日からずっと2人と1匹の名前しか出てこない件について あとテラワロス


20 :動画乞食@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 08:59:22.33 冒険者ID:※※※※※※

 動画マダー (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン


30 :目撃者A@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:00:04.34 冒険者ID:※※※※※※

 俺、今週街門で審査のバイトしてたんだけど、でかい方が係のギルド員ジャイアントスイングしてたぞ


31 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:03:21.24 冒険者ID:※※※※※※

 >>30
 何その荒ぶる狂犬
 街に入る為の審査で係員振り回しちゃうの


32 :目撃者A@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:03:22.52 冒険者ID:※※※※※※

 相手はいつものホモだけどな


34 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:04:55.01 冒険者ID:※※※※※※

 無 罪 確 定


35 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:10:01.00 冒険者ID:※※※※※※

 俺、あのホモにケツ触られた事あるわ


36 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:13:20.53 冒険者ID:※※※※※※

 俺も


37 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:14:55.00 冒険者ID:※※※※※※

 じゃあ、俺も俺も


40 :┌(┌^o^)┐ホモォ…@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:18:11.44 冒険者ID:※※※※※※

 ホモしかいない件について


41 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:20:31.13 冒険者ID:※※※※※※

 被害者なのに…… (´・ω・`)


55 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:25:50.11 冒険者ID:※※※※※※

 で、実際どうなのよ例の


57 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:28:22.33 冒険者ID:※※※※※※

 一昨日から何回同じネタ繰り返すんだよ もう飽きたよ


60 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:33:25.13 冒険者ID:※※※※※※

 >>55
 これまでのまとめ
 ・1日目 朝 王都から謎の2人組が馬車に乗って来た
 ・1日目 昼 2人組が街に潜入
 ・1日目 昼 定食屋で昼食
 ・1日目 昼過ぎ ギルドで登録
 ・1日目 午後 たまたま初心者講習やってたので受講
 ・1日目 夕方 そのまま同伴者に猫耳つれてトライアルへGo

 ・1日目 夜 トライアルクリア確認


61 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:34:10.10 冒険者ID:※※※※※※

 端折り過ぎワロタwww
 その謎の空白期間に何が起きたんだよ


63 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:36:11.41 冒険者ID:※※※※※※

 というか、1日目しかない件について


70 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:39:14.02 冒険者ID:※※※※※※

 つーか、まだ詳細分からんしな。
 その後なにかしたってのも聞かないし


75 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:43:00.00 冒険者ID:※※※※※※

 ↑のソースは?
 テラワロスとかじゃねーだろーな


78 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:45:01.29 冒険者ID:※※※※※※

 >>75
 ギルド公式。


80 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:46:11.63 冒険者ID:※※※※※※

 確定じゃねーか。


97 :動画乞食@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:53:03.53 冒険者ID:※※※※※※

 動画マダー (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン


103 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:58:53.22 冒険者ID:※※※※※※

 >>97
 なんか無料放送するらしいぞ
 ソースは家の姉。


105 :動画乞食@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 09:59:59.00 冒険者ID:※※※※※※

 まぢで!?∑(・∀・) ダメモトダッタノニ


106 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:02:00.13 冒険者ID:※※※※※※

 確信した これは実況スレが落ちる


107 :(*´ω`*)@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:03:22.33 冒険者ID:※※※※※※

 確信した これは流行る(*´ω`*)


108 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:05:33.23 冒険者ID:※※※※※※

 落ちたらテラワロスが交流戦で殺された時以来だな
 あと、その顔文字は流行らない


115 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:08:12.12 冒険者ID:※※※※※※

 誰か突撃インタビューしてこいよ


120 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:11:33.52 冒険者ID:※※※※※※

 やだよ、あのでかいの怖いし


121 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:12:03.17 冒険者ID:※※※※※※

 でかくないほうは?


122 :(*´ω`*)@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:13:44.02 冒険者ID:※※※※※※

 かわいい (*´ω`*)


140 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:14:24.03 冒険者ID:※※※※※※

 今写真を確認
 ひどい性別詐称を見た


145 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:16:55.42 冒険者ID:※※※※※※

 ……なあ、俺ら実は騙されてね?


147 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:18:14.52 冒険者ID:※※※※※※

 あれなら、付いててもいいや。


152 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:19:55.19 冒険者ID:※※※※※※

 違うだろ

 付いててもいいやじゃない 逆に考えるんだ

 付 い て る の が い い ん だ !

 付 い て な き ゃ 駄 目 な ん だ ! !


153 :┌(┌^o^)┐ホモォ…@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:22:29.11 冒険者ID:※※※※※※

 ホモしかいない件について


161 :名無しさん@みんなでトライアルに行こう@\(^o^)/:0024/06/05(火) 10:32:30.22 冒険者ID:※※※※※※

 男の娘はジャンル違うから。



 違うから (´;ω;`)





-4-



「……ふむ。よし、何も分からないという事が分かった」

 部屋のPCもどきを使って掲示板を眺めてみたが、どこ見ても同じような事しか書いてない。
 ユキが言ったように、俺達の話題が多いというのは分かるが、こいつら話題ループし過ぎだろ。

 ノリが不気味な位前世と一緒だ。異世界なのに、なにがどうしてこうなった。
 情報が少ないのは分かるが、内容もほとんど俺がでかくて怖い事とユキの容姿についてだし。……まとめサイトとかないかな。全部見るのしんどいんですけど。
 多分、冒険者は6日縛りとかあるから、暇な時間で書込してる奴らが多いんだろうな。

 ここ見てると、ユキはもう男の娘のままでいいんじゃないかなとか思えてくるのが不思議だ。ばっちり需要がある。
 それと、俺は15歳にしてはでかいが、ここに来てから測ったら180cmもなかったし、実際そこまででかくないぞ。
 巨人が普通に闊歩してる街でデカいとか言われたら、俺の印象がだいだらぼっちみたいになるから止めて欲しい。

 あと、その顔文字は流行らない。

 しかし、ノリはともかく、ユキの言ってた通りコピペ荒らしとかはいないみたいだから、平穏なもんだ。
 昔見てた某掲示板とか、板によっては9割荒らしみたいなところがあったからな。
 かつて俺が常駐してたシャワートイレ板もあるみたいだし、今後は定期的に巡回しよう。



 掲示板はどうでもいいという事が分かったが、他にはどんな事ができるんだろうな、このPCもどき。

 寮に設置してあるこのPC。寮内専用の為チェーンが付けられているのだが、形状はキーボードがついたタブレットPCだ。
 凄く薄くて小さいので、見つけるまで時間がかかってしまった。引き出しにしまうなよ。

 キーボードの配置含め、見た目は馴染み深いパソコンではあるのだが、中身はいまいち使い方が分からない。
 基本的な操作は地球のものと大差ないのだが、ゲイツの家で作られたOSじゃないから色々違うのだ。スティーブの家のガレージで作られた林檎製のやつとも違う。
 ブラウザって概念は同じで、ホームがギルドのページだったから、そのリンクを辿って専用掲示板までは辿りつけたのだが、入ってるアプリなどはさっぱりである。

「エロゲとかあるのかな」

 もしあるなら興味がある。日本で見たラインナップとはまた違った作品が楽しめそうだ。
 迷宮都市の謎技術なら、創作物の世界でしか存在しなかったVRとかあっても驚かないぞ。是非プレイしたい。エロゲなら、この際デスゲームでもいい。

 でも、プレイするとしたら寮じゃなくて、ちゃんと部屋借りてからだな。
 このPCもどきだと、ブラウザ履歴の消し方すら分からない位だから、エロゲの痕跡を残して後輩に性癖暴露するのは避けたい。

 ユキは冒険者関連の情報しか見れなかったと言っていたが、このネット使って賃貸情報とかも見れるんだろうか。
 トライアル期間は1ヶ月賃料無料という事で、俺達はまだ無料期間が丸々残っている状態なのだが、来月からは賃料が発生してしまう。
 ここはギルド会館の隣で便利ではあるのだが、風呂などの水場は共用だし、借りれるなら借りておきたい。
 賃貸料も同じ位とか言ってたし。探せば敷金礼金なしのところもあるだろう。

「そういえば、吸血鬼が自分のブログにエロ動画の紹介しているとか言ってたよな」

 初心者講習での話だ。
 操作にも慣れてない状況だが、ギルド職員なんだからリンク位あるだろ。

 そうして、あーでもないこうでもないと苦悩しながら、例の吸血鬼ヴェルナー・ライアットのブログに辿り着いた。

 主に掲載されているメインコンテンツは、エロ動画の批評、娼館・ソープランドの紹介と、自分の子供の観察日誌だ。
 なんで一緒にするんだよ。子供泣くぞ。

 それにしても、気持ち悪い位即物的な吸血鬼である。
 吸血鬼というのは、もっとこう、人間と住んでる場所が違うような、高貴な種族のイメージを持っていた。
『下賎な人間どもめ』とか言っちゃう感じだ。
 俺が会ったことのある吸血鬼はこの人だけなので、この人だけがおかしいのかもしれないのだが。

 子供の写真はとても可愛らしい女の子だ。
 種族としてそもそも耽美な容姿を持つのかもしれないが、後2、3年したらお相手願いたい位美少女である。赤髪に赤いドレスが似合ってて可愛い。
 俺の守備範囲はとても広いので多少幼かろうがバッチコイ。下でも上でも関係なく補球してやろう。
 まあ、観察日記を見る限り冒険者ではなさそうだし、彼女とは縁もないだろう。会うことはなさそうだ。

「それよりも、風俗情報が素晴らしい」

 あの吸血鬼は、娼館でも冒険者ランクによって選べる女の子のグレードが異なると言っていたが、とんでもない。
 ランク不問・一般向けの女の子でも素晴らしくレベルが高い。ランク不問でこれとか、上級ランクまで行ったらどんな事になっちゃうのって感じだ。

 ヴェルナーの紹介で、『ここは一切画像加工してません』と補足が書かれた娼館のページを見ても、前世では決してお目にかかれないレベルの可愛い子だらけだ。
 特に、オススメとしてリンクされている女の子の個人ページへ行ってみると、これまたレベルが高い。
 顔のアップと、全身の写真が掲載されていて、みんな、顔だけじゃなくスタイルもいい。前世でよく見かけたミスグロ画像さんとか、1人もいない。いないんだ。

 しかも、人間だけじゃなく、種族までよりどりみどりだ。
 流石に極端にカテゴリが離れているリザードマンや、モンスターであるゴブリン、オークなどはいないが、それ以外の人間の姿に近い種族は大抵揃っている。
 白翼種とか、水妖種とか、俺が聞いた事もない種族もいた。
 ウサ耳、犬耳、キツネ耳の獣人さん達、猫耳は……いいや。エルフも、ロリっ子なドワーフもいる。妖艶な色気を振りまくモンスターのサキュバスさんまでいた。

 どーなってるの、ここはパラダイスなの?

 いかん、ヴェルナー様とか言ってしまいそうだ。
 ……きょ、兄弟になっちゃおうかな。このヴェルナーお薦めのニーナちゃんとかいいよね。
 もう、この世界での童貞捨てちゃってもいいかな? いいよね。

 値段を見てもお手頃だ。決して安いというわけではないが、今の俺に払えない金額ではない。
 なんせ、俺にはトライアルダンジョン攻略の動画売却で得た金がある。1回位なんの問題もないぜ。連続で2、3回でもいける。朝まで電車でGo!だ

「よ、よし、思い立ったが吉日だ」

 俺は、こんなことで悩んだり恥ずかしがったりしない男の子である。

 ……住所、住所。えーと、"中央交差点駅近く"か。 中央って事は俺達が行ったダンジョン転送施設のあたりだろうか。
 よし、ヴェルナー印のクーポン券まである。印刷して使うタイプで、時間延長もオプション追加も思いのままだ。
 プリンタ、プリンタはどこだ。

 部屋を見渡してもプリンタはない。
 いや、違う、共用なんだ。寮の共用スペースにコピー・印刷用のプリンタがあると張り紙にある。
 共用のプリンタで風俗のクーポン券を印刷するのは勇気がいるが、大丈夫、俺はそんな事は気にしない男の子だ。

 えーと、どうやって印刷すればいいんだ……これか。

「ポチっとな」
「何がポチっとな?」
「うわああああああッッッッッ!!」

 突然背後から話しかけられて、絶叫を上げてしまった。ゆ、ユキか。

「何大声出してるの。ノックしたでしょ」
「あ、ああ、うん、そうだな。したな」

 いや、全然気づかなかったけどね。
 ニーナちゃんとかに完全に意識を奪われてて、周りが見えていなかった。とんでもないサイトだぜ。

 ここギルド寮の部屋は、生体認証という謎の技術で鍵がかかる仕組みとなっている。
 オートロックだし、俺が入る際には鍵を開ける必要もない大変便利な仕組みだ。
 俺とユキはお互いに認証登録をし、中に部屋主がいる場合はそのまま入れるよう設定してある。

 だから、ここにユキがいる事は何もおかしな事ではない。ないのだが。

「昼に話した動画のデータ持ってきたよ」
「あ、あーうん、ありがとう。助かるよ」

 と、ユキはUSBメモリのようなスティックを俺に渡してきた。
 コネクタの形状を見るに、PCもどきに直接刺せるようだ。

「使い方わかる? 前世でPCとか苦手だったりした?」
「え、あ、いや、大丈夫、うん、パソコンは得意なほうだと思うぞ。ここのはまだ慣れないが」
「何慌ててるのさ。……あー、Hなサイトでも見てたの? っていきなり娼館のサイト?!
迷宮都市に来たばっかなのに行動早くない? ……いや、ツナのお金だからいいけどさ」

 見られてしまった。
 俺の純情は汚されてしまったんだ。

「なるほど、クーポン券を印刷した瞬間に僕が来たわけか。面白いタイミングだったね」
「面白くねーよ! こっちは純情な青少年だぞ」
「いいから、いいから。あれ、これあの吸血鬼さんのページじゃないか。……何故ギルド職員がこんなブログを」

 いや、知らねーよ。本人に聞けよ。

「まさか今から行くの? 凄い行動力だね」
「あーうん、ちょっと落ち着いてきた。……ユキさんは一応中身女のつもりなわけだけどさ、こういうの駄目だったりしないのか?」

 こいつ、初心者講習でエロ動画の話をしたとき慌ててたよな。

「自分が対象じゃなければ別に。……それと、つもりじゃないからね」
「あ、ああ、そうなんだ。……じゃ、じゃあさ、一緒に行くか? ちょっと1人だと心細かったんだよね」
「行かないよっ!!」

『僕を何だと思ってるんだよ』と言い残し、ユキはプンスカ怒って去っていった。

 うーむ、あいつの立ち位置は未だに掴めない。
 難しい奴だ。まあ、特異な属性沢山抱えてるやつだからな。




 ……じゃ、じゃあ、行っちゃうかな。行っちゃおうかな。

 俺は片手にヴェルナー印のクーポン券を握り締め、夜の街へと繰り出した。


確信した。この顔文字は流行らない(*´ω`*)
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