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奴隷法 作者:鈴本耕太郎
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5.人身売買

 部屋に入って来た女性に亮司は出来るだけ優しく笑いかけた。
 亮司自身、理由は分からなかったが、なぜかこの女性に惹かれていた。外見は好みのタイプであるし、彼女の声は亮司の耳に優しく響く。彼女が纏う雰囲気も好ましいような気がした。
 しかしそれだけだ。恋愛的要素は今のところ存在しない。興味を惹かれたと言った方が正しいのだろう。
 ただ、それが何なのかはさっぱり見当がつかなかった。この女性の何が亮司を惹きつけるのだろうか。

 緊張した表情でステージに立つ女性に、厭らしくならないように気を付けながら視線を向ける。
 斜め分けされた前髪から覗く眼はやや切れ長で、瞳の輝きに不思議な親近感を覚える。
 背は一五二センチと低く、健康的ではあるがやや痩せており、肩にかかる真っ直ぐな黒髪が肌の白さを際立たせている。そして時折髪の隙間から覗く鎖骨がやけに扇情的だ。
 そこから僅かに視線を下げれば、形の良い胸が目に入る。Eカップのそれが、痩せ型の彼女に女性特有の柔らかさを感じさせる原因だろうか。
 さらに下へと視線を向ければ、決して筋肉質ではないがそれなりに引き締まった腹筋と薄い毛に覆われた恥部が見える。そして、そこからスラリと伸びた足は非常に魅力的だ。
 外見的には申し分ないどころか、亮司には勿体ないくらいだろう。

 再び彼女の眼を真っ直ぐに見つめる。
 緊張のせいなのか、怯えているのか、その眼は僅かに潤んでいる。
 照明に照らされた瞳がキラキラと輝いて見え、吸い込まれてしまいそうだ。
 結局答えはわからない。しかし亮司の意思は彼女を買う方向へと傾いていた。後は彼女しだい。
 亮司は自らの緊張を息を吐いて誤魔化すと、目の前の女性に問いかけた。
「俺に買われても良いと思う?」
 女性はその質問が想定外だったのだろうか。驚いた表情をしつつも、亮司の眼を真っ直ぐと見つめ返した。その視線の意味するものは一体なんだったのか。僅かな沈黙の後、しっかりと頷いてくれた。
 それを確認した亮司は安堵し笑顔で頷き返すと、斎藤に買う旨を伝えた。

 彼女の値段は二千二百万円。
 人一人の値段としてそれが適当なのかは分からない。多いのか少ないのか、それは買う側と買われる側とで意識が別れる事だろう。 

「ではこれより、主人登録の為の検査をさせていただきます」
 全ての書類に記入を終えた後、病院で医師の問診が行われるような部屋へと案内された。
 説明によれば、DNA情報の採取に始まり、声紋や指紋に掌紋など亮司の情報を記録し、購入したヒューマノイドのマイクロチップに主人の情報として登録されるらしい。

 簡単な問診の後、様々な検査が行われ、一時間程で終了した。
 次に行うのはオプションの選択になる。
 まず最初に行われるのは、マイクロチップに設定するルールである。標準でいくつか付いているが、それ以外にも自由に付け足す事が出来る。もちろん一時的な行動ならば標準ルールの絶対服従により命令可能であるが、永続的なルールに関してはここで設定する必要がある。
「何か希望するルールはございますか?」
「このルールは後で変更する事は可能ですか?」
「はい、別料金になってしまいますが取り消す事も追加する事も可能です」
「わかりました。では俺を裏切らない事、そして俺に対して嘘をつかない事。この二つをお願いできますか?」
「もちろん可能です。他には何かございますか?」
「いえ、大丈夫です」

 ルールの設定が終われば、次に行われるのは外見の調整である。
 別料金を払う事で、ヒューマノイドの外見を自由に整形できるのだ。
 これについては亮司は首を振って否定した。

 最後に決めるのは洋服や日用品などで、販売所に併設されている衣料品コーナーや雑貨コーナーにて、一通りの物を揃える事ができる。購入金額に応じてサービスして貰えるらしく、それをフル活用させて貰った。
 服装に関しては亮司好みの物をいくつかチョイスし、それ以外に関してはお任せセットがあったのでそれを選んだ。

「では一括払いという事ですので、一週間以内に指定の口座へお振込みください。またヒューマノイドの受け渡しですが、今回は外見の調整がないので明日以降であれば問題ありません。ご都合の良い日はございますか?」
「じゃあ明後日でお願いできますか?」
「かしこまりました」
 続いて時間を決め、簡単な説明を受けて終了となった。斎藤は綺麗にお辞儀をすると、入り口まで送ってくれた。

 販売所を出た亮司は勢いで奴隷を買ってしまった事を若干後悔した。
 それと同時に、奴隷が手に入るという不思議な高揚感を得ていた。

 空を見上げれば、相変わらずの雲一つない青空が広がっていた。
 亮司は大きく伸びをして、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。そして少し乾燥し始めた秋特有の気配を感じながら、前を向いて歩き出した。

「晴れているのも悪くないか」

 小さく呟いた亮司の眼には、ほんの僅かな希望がともっていた。
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