お洒落な銀座の一流レストランに招かれた一弥と麗奈は緊張していた。
「私イ、こういうの、苦手よォ。だってェ、岩手以外住んだことないし、都会のことなんかなぁんも知らねえ」
「大丈夫だよ。麗ちゃん。会社の上司って言っても、とても優しい紳士だし、話上手だから困ることないよ」
そういう一弥もコチコチで先程から拳を固く握り締め、震えている。暫くすると一弥の話した上品な初老の紳士と美しい背の高い女性が入ってくる。
「やあ、お待たせしました。私は一弥さんとお仕事をご一緒させて頂いているA山でございます。連れはわたくしの友人のR恵さんです。初めまして。こちらにいらっしゃるお嬢様が、いつも一弥さんから伺っている麗奈様ですか。お噂通りとてもお美しく、可愛らしい方ですね。一弥さんが惚れるわけだ」
「わだしィ、こったらとこだば、あがっちまって、サゃべれねえだ」
「ほ、ほ、ほっ。ま、可愛らしい。あら、こちらのお方に合わせれば、メンコイとでも申しあげるのかしら」
「そうそう。今日はなるべく岩手地方の方言でお話したほうが宜しいのかな?」
「め、滅相もねえダ。おらA山先生にはてえへん世話になっとるダ。麗奈。もちっと気をつけて都会言葉サ使わんかい」
「ヤンだぁ、わだス、キンチョーすですまって、いなぁかコトバば使いよっちまう。ハンずかしィ〜」
「ちっとも恥ずかしいことはないと思いますよ。第一言葉の響きがやさしいし、なんとなく郷愁も感じる。気を使わんで、いつもどおりの言葉でお話なさい」
「ンだば、お言葉サあまえさせてもらいまっしょ。せんしぇい。おら達、お陰様でもってヨ、仲直りバ、しくさったンでがんす。昨日の晩は早速二人ステ、スっ裸になっちまってヨ、ヤリまくったんだぁ」
声高に大声で話し始める一弥。こうなるともう止まらない。次々露骨極まるH話。
「まぁ、なんと言うワイルドなお話。わたくし赤面してしまいます」
「一弥君。こちらのR恵さんは高貴なお方だ。もう少し婉曲にだな、お話された方が宜しい」
「なしてェ?おらのムラじゃぁ、もっともっと、エゲツなく話すンだぁ」
「イヤっ!ヘンタイだわ!私帰らせていただきます」
「とんだことになった。R恵怒って帰ってしまった・・どうすんだヨ!彼女が俺のこと嫌いになってしまった」
「丁度よかんべサ。さあ邪魔もんけえった。さ、麗奈めしでも食らうべえ。どうせおめえさんの奢りだんべ。ねえちゃん。この店で一番たけえシャンパンもってこいや。それから最高の料理ドンドン持ってキナ」
「ヤイ!一弥。いい加減にしろ!表へでろ。ぶっ倒してやる」
「へん。いいともよ」
A山と一弥が外に出ると、何事かと集まった人々で黒山の人だかり。A山が立てかけてあった棒切れで殴りかかる。一弥は難なくそれをかわして、細い竹ざおを手に、習い覚えたフェンシングの構え。
「ほいっ。どした?俺様にかかって来るなんざ十年早え!」
鋭く突きを入れるとA山はあっけなく倒れる。一弥は容赦なく滅多打ちに打ち据える。
「ヤイ。じじい。おらはムラではイルハンなんて言われとるが、本当は剣の達人なんじゃ。恐れ入ったかぁ」
「一弥ぁ!格好いいヨォ〜」
麗奈が囃し立てる。A山は身体を海老のように折り曲げのた打ち回っている。何故か丁度そこにデート帰りのY恵が通りかかる。
「アレエ。そこに倒れているのはA山さんじゃない?どうしたの?こんなに血だるまになって。あら判ったわ。一弥。貴方でしょう。こんなに良い人を殴りつけたのは」
「いかにもオラだがよ。そのじじいが先に殴りつけたンで、懲らしめてやったまでヨ」
「A山さん可哀想・・・」
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