太い黒松と浜木綿の白い花の群生。あたりには誰も人影はない。眼前に拡がる広大な白砂の浜は延々8キロにも及ぶ。遠く子供の歓声が聞こえ、蝉の鳴き声も盛んだが、返って静けさを感じる。淡いピンクのタンクトップにミニ、白い紐のサンダルの麗奈とグレイのTシャツ、半ズボンでサングラスの一弥は、花の傍にマットを敷いて、並んで座った。
「この前、ここに来たのは、3年前だったよね。そん時の服着てきてくれたんだ」
「あら、貴方もそうじゃない。気持ちおんなじね」
二人は以前買ったお揃いのプラチナのペアリングをつけた手を重ね合わせ、お互いの耳元に口を付けるようにして話す。
「私ネ、一弥のこと信じてたよ。離れ離れで暮らしていても、連絡が途絶えていても、きっと私を想っているって」
「俺片時も君のこと忘れたことない。だって君の笑顔、世界一素敵なんだもの」
麗奈が微笑むと一弥は堪らなくなって抱きしめ、髪を撫でる。
「艶艶で真っ直ぐな髪、いい匂い。染めたりしないでね」
「貴方のこと大好きだから、決して染めたりなんかしないよ。少し泳ごうか?」
麗奈が着ていたキャミの肩紐を外す。真っ白な肌と白い極小の三角ブラ。胸の膨らみが悩ましい。ついでミニスカートを脱ぐ。下は小型な白い紐パン。両腕を上げ、腋をさらして、ゆっくりとブラを調整する。
「貴方も水着になりなさい」
「麗ちゃん。スレンダーな割に胸やお尻が大きいな。素敵だよ」「ありがと。一弥の裸もたくましくていいよ」
お互いの腰に手をあてゆっくり浜辺に向かう。女子高生達が羨ましそうに二人を見、何か囁く。泳ぎのそう得意でない一弥は浮き輪を持ち、上手な麗奈は早くも抜き手を切っている。誰もいない沖にでて、今日始めてのキスを交わす。空は高く真っ青で、白い積乱雲が沸いている。一弥は麗奈のリードで小さな小島に泳ぎ着いた。
「誰もいないから、脱いじゃおうかな。一弥も生まれたままの姿で泳ごう」
全裸になった二人はキスを交わしながら泳ぎ、小島に上がり抱き合っていると自然に結ばれる。
「このまま、ずっと二人だけで過ごしたいな」
真っ裸で絡み合う二人に聞こえるのは潮騒の音だけ。麗奈の口ずさむ小さな歌声。強い日差しが肌を焼いて、麗奈の白い肌がピンク色に染まって美しい。
「暑くなっちゃった。そろそろ戻ってお昼食べようね」
砂だらけの身体を海水に浸かって綺麗にし、水着をつけ、元の松林まで戻る。花びらを散らした布の包みを解くと、籐製のランチボックス。小ぶりなおにぎり、卵焼き、ウィンナー、から揚げ、牛蒡の味噌漬などが、小奇麗にぎっしり詰まっている。
「今日四時に起きたんだよ。嬉しくって」
「美味いよ。これ。麗ちゃんが作ったものは最高」
冷えた麦茶を飲むと又抱き寄せたくなる。
「赤いペディキュアとマニキュア、似合ってる」
「そう?嫌いって言われると想ったけど、してきちゃった」
「麗ちゃんの水着、ボクのプレゼントのやつ?」
「そうよ。ほら、二人で丸の内のエムポリオで選んで、一弥がプレゼントしてくれたじゃない。あれよ」
ゆっくりと雲が流れて行く。とんびが悠然と上空を舞う。じゃれあい、話し合う二人。いつしか日が傾き、夕闇が迫る。持ってきた花火に火をつける。一瞬にこぼれる輝きが二人を包み、幸せに酔いしれるようだ。
「泊まって行きたいけど、明日はもう東京に帰らなければならないんだ」
「えっ?そんなこと聞いてないよ。イヤ。別れたくない。あたしもついていく」
「駄目だ。第一君のお父さんが許してくれないよ」
麗奈の眼に大粒の涙。やがてしゃくりあげ、大声で泣いてしがみついてくる。一弥は麗奈をしっかりと抱きしめ、泣きながら口付けを繰り返す。
北上駅は夏休みを郷里で過ごし東京方面に向かう家族連れで騒然としている。やまびこがホームに滑り込んでくる。一弥と麗奈は抱き合って離れようとしない。出発のチャイムが鳴る。泣きながら一弥は列車に乗り込む。ドアが閉まりかけ、思わず強く握り締めていた麗奈の手を離す。
「か・ず・やぁぁ・・・・。きっと行くよォ・・待っていてねぇ・・・」
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