epilogue
「っかし……すげぇな…… ……時期外れもいいとこだぜ……」
眼下に広がる、満開の桜の木々の群れ。
見下ろした夾が、透の肩で感嘆の声を上げる。
由希と夾の服を拾い集めていた透。
「みなさん……きっと、この方達を祝ってくださっているのですよ」
呟いて振り返ると、
そこにはもう
大きな切り株が 一つ 在るだけだった。
「…………」
その切り株の中央に
新しい緑が 芽吹いている。
その横に……まるで寄り添うようにして
小さな小さな桜木が1本生えているのを、透は見つけた。
「もう……寂しくなんか、ないですよね……」
その細い躰に優しく触れて 透は微笑む。
「けど、なんか……夢みたいな夜だったよね……」
透の頭に乗っていた由希が、感妙深げに呟いた。
「それにしちゃやけにハタ迷惑で長ェ夜だったがな……」
ため息交じりの夾の声に、透はクスっと笑う。
「そうですね……ですが」
言って、透はもう一度、満開の桜達を見下ろす。
「夢にしておくには、もったいない景色です……」
「そうだね……」
「……だな」
朝焼けに包まれた町並み。
昇る穏やかな日に照らされて。
始まる。
新しい一日。
代わりのない 日々。
「トールぅ!! ユキ、キョー!!」
聞こえてきた声を辿れば
白く しかし鮮やかな桜並木の道を、紅葉を筆頭に、
春。
魚谷。
咲。
紫呉。
はとりが歩いてくる。
「絶好のスポットを3人占めだなんて許しませんよ〜?」
「由希に夾…… ナイスファイト……」
「……って、おい、透。あいつらどうした? 王子ときょん」
「〜!?」
「は? え……!? 〜えとその……、あ、あちらの方で桜さんを見ていらっしゃるかもなのですっ!!」
「……っ」
「しゃーねぇなぁ……折角透が起きたっつうのに独りにさせやがってあんにゃろ……っ」
「あらそう……? 気配はとても近くに感じるんだけど……」
「……さ、咲ちゃん……っ」
「折角だからついでに俺らもレッツ花見……」
「お花見するのー!!」
「おお!! いいなそれっ」
「うわぁ……素敵な提案ですっ」
「いいわね……お団子が食べたいわ……」
「酒とつまみもな」
「って、えぇ?! ぼ、僕が買い出しに行くの……!?」
「寝てただろ?」
「は、はーさぁん……ひょっとしなくても……根に持ってたりする……?」
「もちろんだ」
――想いは 尊く
願いは 果てなく
今も わたしの胸に残る。
この愛しさや
苦しさ。
……切なさを、
けして 忘れないように。
大切だと思える存在と共に
抱えて、今を 生きていこう。
答えや 意味が。
きっと判る時が来る。
その瞬間の 自分のために。
[終]
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