芳香 (6)
「おいっ!! この前からお前おかしいぞ!? 一体何なんだ!?」
廊下を気だるげに歩くシカマルの背後から、声を荒げたテマリが駆けて来た。
次第に、シカマルのすぐ後ろまで近づくと、彼女の歩調も同時に緩む。
「別に…普通っすよ」
それでも、立ち止まって振り向こうとさえしない目の前の少年に、
テマリはカチンと来た。
「その言い方が既に普通じゃない!! 何でいきなり敬語なんだ!!」
「…あんたが年上で、オレは年下。それでっすよ」
「いい加減にしろっ! この間までのお前はどうした!? 忘れたのか!?」
「-----忘れたのはあんたじゃねーの? 二年前の約束、まだもらってねーけど?」
「二年前…?」
シカマルの口から、ハァ-----ッと深いため息が漏れる。
その言葉に、記憶を瞬時に辿っていたテマリは、
「…ああ、おごってやるという件か。すまない、そんな暇はなさそうだ」
あっけらかんとそんなことを口にする。
そんな彼女にシカマルは拍子抜けする。
しかし、彼がその場に立ち止まると、
「…そんなもんはいらねーよ。オレが欲しいのは------」
突然、クルリと振り返って、テマリの腕をグイッと掴むと、
一回り小柄な彼女を自分の方に引き寄せた。
テマリの長くなった黄金の髪が、フワッと宙を舞う。
「!?」
テマリの目の前に、広い大きな胸が飛び込んできた。
少年の意外に強い腕力に驚き、自然に体を硬直させてしまう。
名異斗とも違う、自分の知らない男が目と鼻の先にいるような錯覚を覚えて、
どこか怖くて怯えてしまったのかもしれない。
以前会っていた時には、まだ頭一つ分程度でそんなに差が感じられなかった身長も、
今では更に高い位置に感じるようになってしまった。
あの時の少年は、すっかり大人の男になっていた。
以前よりもずっと筋肉質な逞しい体躯で。
上から余裕で見下ろされている自分------
そこに変に意識をしてしまう自分に、自分も女であることを再確認する。
強引に引っ張られた衝動で、彼の胸に不本意にも手を置くはめになったテマリは、
顔が赤くなっていくのを実感していた。
間近で、彼の体温と鼓動を微かながら感じている。
「-----あいつと本気で結婚するのか?」
唐突に、けれどどこか苦しげで切なげな低音が、頭上から降ってきた。
テマリは上を見上げることができなかった。
今シカマルが、どんな目で自分を見ているのか何となくわかってしまったからだ。
目を合わせれば、その瞳に流されてしまいそうな気がする。
何故か拒絶できそうにもないような気がして、テマリはそんな自分にも戸惑う。
「ど、どうして…そんなことを…聞く…?」
「あいつが好きなのか?」
「--------」
何も出てこない。
口が動かない。
いくら突発的な質問であるとは言え、何故自分は、
「そうだ」と返事をしなかったのだろう?
テマリ自身が困惑する。
しばらく、沈黙が続いていたが…、
「ところで、話って何?」
シカマルが話題を切り替える。
ホッと胸をなでおろし、テマリもいつもの調子で答えた。
「あ、ああ! それなんだが、実は、名異斗と婚約するという--------」
気がつくと、自分の唇が、柔らかな熱っぽい何かに封じ込まれていた。
まだ話の途中だったが、シカマルの指がテマリのあごにかけられ、
シカマルの顔が急接近し、彼の瞳と唇が覆いかぶさってきたのだ。
優しく強く唇を重ねながら、シカマルは彼女の腰に両腕を絡めると、
体を弓なりにしならせるテマリに逃げられないよう、
長い腕で隙間なくガッチリと抱え込む。
「んんっ……!」
息もさせてくれないほど、それは濃厚で情熱的なキスだった。
彼の熱を帯びた舌が、官能的なまでにテマリの口内を縦横無尽に駆け巡る。
それはまるで、自由奔放な野性的な愛撫。
-----いきなり、なにをするっ!
そう言って跳ね除けたい気分ではあったが、少年の腕が唇が、自分を自由にさせてくれない。
全身でぶつかって来る彼に、抵抗が全くできない。
素手になると、自分はこんなに非力だったのだろうか?
所詮、男の力には適わないということなのか?
テマリは先程控えの間に、いつも背にする命よりも大切な巨大扇子を置いてきたことを、
少しばかり悔やんでいた。
狭いこの廊下でも、あの扇子には使い道が他にもあるのだ。
そんなことを考えながらも、テマリの体はシカマルの与える刺激に溶けてしまいそうになっていた。
溢れ出しそうな艶めいた甘声を押さえるのに、半ば必死になる。
ガクガク震えて立っていられない。シカマルが抱えているからこそ、
何とか持ちこたえているようなものだ。
シカマルは、そのまま壁にテマリを押さえ込むと、自分とは違う彼女の細い両手首を掴み、
虚ろだが熱っぽいその目と唇で、テマリのあごに首筋に移動させ始めた。
ようやく唇を解放されたテマリは大きく息を吸い込んで、
「ああっ! 馬鹿、やめっ、い…、いやあああぁ------------ っっ!!」
甲高く叫んだ。
普段の男勝りな彼女からは、およそ聞けないような女らしい悲鳴に、
さすがのシカマルも理性を取り戻す。
肩で息をするテマリの目には、うっすら涙がにじんでいた。
「ハァッ……ハァッ……、お、お前っ! やっぱりおかしいっ!」
「-----あいつにならいいのかよ…? あいつにならされるがまま身を委ねることができても、
オレにはそれができないのかよ」
顔を紅潮させるテマリを見下ろしながら、シカマルは呟く。
テマリの顔が更にカァッと赤くなる。
「知るかっ! この変態っ!」
自由になった手を振りほどき、テマリは少しだけ緩んだ胸元の衣服を整えると、
慌ててシカマルの腕をすり抜けていく。
一人残されたシカマルは、壁に背をもたれると、ズズズ…と滑らせそのまま床に座り込んだ。
「誰のせいだと思ってんだよ…」
呆然となったシカマルは、そのままうなだれていた。
テマリの甘い芳香が胸に染み付いていて、それさえも愛おしく感じていた。
まるで、今でもテマリを抱きしめているようで…。
彼女は、想像以上に柔らかかった。
唇も首筋も身体も…鎖骨から下に続く二つの膨らみも。
彼女の温もりが忘れられず、きっと今夜も眠れそうにないだろう…。
シカマルは、ここ最近、夜も余り寝れずにいた。
「誰のせいだと思ってんだよ…」
同じ台詞を再び口にし、少年は天井に向かってハァッとため息をついた。
黙々と仕事に専念するシカマルを、怪訝な目でカカシは見ていた。
一見いつもと変わらず真面目にこなしているようだが、今日はいつもと様子が違っている。
それに気づいていたカカシは、シカマルを呼び出し、注意する。
「すみません…以後、気をつけます」
どうやら、ありえないミスを犯していたらしい。
らしくない彼を見て、カカシは肩をすくめる。
-----やれやれ、思春期ってやつかねぇ。
いくら頭脳明晰といえど、彼はまだ17歳の少年なのだ。
カカシは時々、心ここにあらずなシカマルを見て、何かを思いついた。
引き出しを開けると、一冊の愛読本を取り出す。
「シカマル、これを読むといい」
『イチャイチャ…』というタイトルが目に入った途端、
気が抜けかかっていたシカマルの顔が、更に気が抜けた顔になる。
「それって一応18禁でしょうに。いいんですか? まだ17のオレが読んで…」
「いいっていいって! 偉大なる本に、年齢なんて関係ないでしょ」
「…やっぱり遠慮しておきます。オレには他にも読まなければならない本が沢山ありますし…」
「そうか。なら、しっかり気を引き締めることだ。最近のお前はたるんでいる!
風影の姉と何があったかは知らないが、仕事にまでプライベートなことを持ち込むな。いいな」
火影は全てお見通しだなと改めて思いながらも、そんなことはもうどうでもいいシカマルだった。
返事をすると、黙って席に着く。
そんなシカマルを見て、相変わらずニタニタ笑っているコテツとイズモであったが、
カカシの視線に気づくと、顔を引き締め、再び仕事に取り掛かった。
仕事が終わり、帰宅につこうとしていると、門のそばの木の下で、
チョウジが自分を待っていてくれた。
「チョウジじゃねーか。今、任務帰りか?」
「うん、まぁね。それよりシカマル…、話は変わるけど、
何か悩み事があるならボクに相談してよ。水臭いじゃないか」
「……? 何だ急に」
「聞いたよ。火影にも注意されたんだって? 最近、確かにちょっとおかしいよシカマル」
「……ああ、わかってる。でも、自分でもどうしようもねーんだ」
「あの人を好きなんでしょ?」
「!? な、何言って…」
「ごまかさなくてもいいよ。もういい加減認めたら?」
「……」
「シカマル、あの人を好きなんだよ。本気なんだよ。どうしようもないくらいにね」
「-----なぁチョウジ。お前は…、誰か気になっている奴いるのか…?」
「…うん、いるよ。でもその子、他の人を好きでいるんだ。でもボクは待つよ。
振り向いてくれるまで…」
「お前それでいいのかよ?」
「だって仕方ないよ。その子はボクとまるで正反対な人をずっと好きでいるんだし、
告白したところで振られるのがオチだし、
それなら言わないで今のままでいる方がマシかなと思ってる」
シカマルは、拳を強く握り締めた。
「----オレはそんなの無理だ。…できそうにねぇ。きっと、おかしくなっちまう…」
無理矢理、何もかも奪ってしまいそうだ------。
まさに、今の自分がそれだった。
「----いのか?」
突然核心を突かれて図星になったチョウジが、赤面して頷く。
「う、うん…」
「やっぱりそうじゃないかと思っていたぜ」
「いのには黙っていてよ?」
「ああ、わかってる」
二人の目の前を見知らぬ子供たちが、楽しそうに駆けて行く。
その光景に、シカマルもチョウジも、昔日の自分たちを重ねて見ていた。
いつしかあの子供たちも恋をして、大人になっていくんだと…。
「…そう言えばこの前、テマリさんの様子がおかしいっていのが言ってたけど…何かあった?
何だか元気がないって言ってたけど、あの金髪の男の人といて幸せそうにしているとばかり思っていたから、
気付かなかったよ。女の子ってそういうところ鋭いよね」
シカマルが無口になる。
-----あの男といて元気がない? 様子がおかしい?
そんな素振りは全くと言っていいほど見せていなかったが…。
「いのの勘違いだろ。どう見たってあれは、ラブラブ光線放ちまくりだったぜ?」
シカマルの顔が仏頂面になる。
そう言いながらも正直な心は顔に表れるんだね…と、チョウジが親友の顔を眺めながら思う。
「お互い、めんどくせー遠い道のりだな。でも、お前なら大丈夫だと思うぜ?
オレが保証する」
「そ、そうかな…」
「だーいじょうぶだって! オレにはわかるぜ」
「そうかな…。でも、シカマルがそう言うなら信じるよ。ありがとう。
ボクいつか、いのに素直に伝えてみるよ」
「そうそう、素直が一番」
「シカマルもだよ。素直になって伝えてみれば?」
「----オレのことはいいんだよ、もうどうだって。多分、嫌われちまったから…」
そう口にすると、シカマルは寂しげに微笑んで、夕焼けに染まる黄昏の中をゆっくりと歩き出した。
その背中がひどく悲しげに、まるで罪悪感に打ちひしがれているようにも見え、
チョウジもまた悲しみに暮れていた。
------シカマル、何でそんなに自分を苦しめるの…?
距離を置いて、チョウジも歩き出す。
To Be Continued …
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ようやくシカテマですよ、奥さんvvv
でもこの後、シカマルが更にぶっ壊れ…ゴニョゴニョ。
これ以上ヤバくなったら、コードに引っかかってしまう?
でもヤル。シカテマに、エロ路は必須なんだ!
いのっちといいテマっちといい、ここの女どもはよく走って逃げますな。
まぁ、こんなシカっちなら、逃げ出したくなりますわ(笑)。
NARUTO(再)でも、シカテマin中忍試験だったそうですね。
夫婦対決! 夫婦対決!
(*´д`*) ハァハァ
「ジュテーム… セボーン…」
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