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シカテマ疾風伝<第二部>
作:スピリットQ



少年と青年 (4)


「-----ああ、悪い。寝てしまったか?」

ハッと目を覚ますと、テマリは額に手を当て息をつく。
たいしたことではなかったが、ちょっと嫌な夢を見てしまった。
男の碧い瞳が、優しくテマリに向けられている。

「最近疲れているようだから、もっと寝ててもいいんだぞ。
それに、もっとお前の寝顔を見ていたいしな」
「…バカ」

頬を赤らめたテマリは、身を起こして男の肩から離れた。

「社交辞令と言えど、少し口にしただけで、あっという間に酔ってしまうなんて、修行が足りんな私も」
「まぁ、無理に飲んで体を壊されても困る。お前は大事な婚約者なんだからな」
「-------…」

照れているのだろうか、テマリが視線を慌ててそらすと、正面にカンクロウの姿が目に入った。
左手に皿を持ち、何かを口に運んでいる。

「なぁ、名異斗。あいつ、食いしん坊だと思わないか? それともまだまだ育ち盛りなんだろう----」

そこまで言うと、カンクロウの隣りに立つ少年に気づき、テマリは突然口をつぐんだ。
テマリの顔から笑顔が消えている。

-----あいつ、今までどこ行ってたんだ? 話したいことがあると言うのに…。

シカマルが廊下で少女たちに追いかけられていたことや、そのままどこかへ行ったきり、
いつになっても戻って来なかったことにも、彼女は気づいていた。
無言で真正面を見つめるテマリを見て、名異斗と呼ばれた男もその先を見つめる。

「-----彼は、随分頭のいい忍だと評判だね。木ノ葉の将来も、彼がいればきっと安泰だろう。
いや、もっともっと伸びていくだろうな」
「…ああ、そうは見えないけど、確かに頭は切れる。参謀にも選ばれるはずだ。
…どうしようもない奴だけどな」

フッと笑って、彼女に笑顔が戻る。
知能派の忍としてなら、テマリも認めているらしい。
彼女の最後に口にした言葉に、彼は引っ掛かりを覚えてはいたが-------

「----親しい間柄か?」
「…いや、使いとして木ノ葉に行くと、決まってあいつが案内人になっていた。
時に、予定にはなかった緊急の任務を共同で任されることもあったが…、
何、奴の本性は、ただ面倒臭がり屋で、男だ女だ口うるさい奴なだけだ」

名異斗が目を細める。
自分には見せたことのない表情を、彼女が浮かべていたからだ。
それも自然な表情で。その顔は、とても美しかった…。

「久しぶりだし、ちょっとあいつと話をしてくるよ」

テマリが立ち上がって、名異斗のそばを離れようとした…その時、彼がテマリのしなやかな腕を掴んだので、
テマリの体は自然に逞しい長身のその男の胸に引き寄せられた。
そして半ば強引に、テマリの唇を奪った。

「!!」

あまり見ないように目を泳がせていたシカマルの両目にも、その映像は飛び込んできた。
思わぬ事態に、シカマルの背中が壁から離れた。

「これいけるじゃん。シカマル、お前も食えよ-------って、……げっ!!」

難しい顔をするシカマルに気づいたカンクロウも、シカマルと同じ視線の先を見て驚く。
しかし-----、

「…まぁ、その内慣れるって。いつもあんな感じじゃん?」

カンクロウが何事もなかったかのように平然と食べ続ける。

「いつもあんな感じなのか?」
「ん? ま、まぁ…あんな感じじゃん。テマリは酒に弱いから、すぐ酔ってしまうんだ。
ああ、それよりほら、お前も食えって! さっきから何も食ってないじゃん? 
そういやお前、随分背が伸びたよな。でもまだまだ成長期だろう? 
どんどん食え…って、あ、おい!? そっちは-----…」

ワインの注がれたグラスがズラリと並んだテーブルに、シカマルは歩いて行った。
そして、その中の一つを勢いよく掴むと、即行、口に流し込んだ。
すぐさま空になったグラスを、ダンッ!と音を立てて置くと、更にもう一つのグラスを掴んで飲み干した。

「おいおい、そんなに勢いよく飲んで大丈夫かぁ?」

カンクロウが、不意にテマリを抱きかかえる名異斗に視線を変える。
確かに彼は、テマリよりも幾つか年上であるし、大人の余裕を感じさせる美青年であった。
上忍なので、勿論強く、頭も良い。その上、優しくも時に強引な面も持ち合わせている。
それだけの条件がそろっていれば、女がまずほれない理由はない。

「----オレは酒に飲まれるほど弱くはない。それに、いつまでもガキなんかじゃねーぜ」

そう言うとシカマルは、また更にグラスを掴んだ。

「何てわかりやすい性格…。でも、そういう所がまだまだガキじゃん…?」

カンクロウは、そう呟くと苦笑した。
よほど男のキスがうまいのか、テマリは名異斗の腕の中でぐったりとしていた。
酒同様、テマリはキスにも弱いらしい。

「しっかし毎度毎度、人前で平然とやらかしてくれるぜ。見ている方が恥ずかしいっての」

姉と婚約者の熱愛ぶりが、見ていられないカンクロウであった。

        

               *



しばらく各国の上忍たちが滞在するというので、一部、観光も兼ねて、木ノ葉の忍たちが案内役を任せられていた。
ナルトとサクラ、ネジも勿論、特別上忍や中忍たちもそれぞれの案内をしていて、町はとても賑やかだった。
ナルトとサクラは、我愛羅とカンクロウを案内し、いのとチョウジはテマリと名異斗を案内していた。
シカマルは仕事があるので、今回は見送った。
と言うよりも、この先、案内役をすることももうないのだろう。
そう思うと、どこか懐かしいような悲しいような寂謬感に一瞬襲われた。
しかし、そんな思いも一瞬に振り切る。

カカシの隣りにいる、秘書のコテツとイズモ、それに参謀のシカマルは、
火影室で黙々と山積みされた書類と格闘中だった。
中でもシカマルの集中力はすさまじく、彼の机には分厚い本が何冊も積まれてあリ、
それを読みながらもカカシの疑問や思索にはちゃんと答えていた。
書類に判を次々押していたコテツとイズモも、呆気になって手が止まっている。

「…すげーな」
「…ああ、さすがIQ200は違うな」

シカマルは、仕事だけに没頭していた。彼は益々その才を発揮し続けている。
長年いる上忍たちも、彼の前では頭が上がらないほどだ。
以前の彼からは想像もできないほど、やる気のない気の抜けたあの雰囲気は、もう微塵も感じられない。
そのせいで、働き通しな一日を終えると、シカマルは食事もせずにベッドに直行していた。
まるで、何かに取り憑かれたかのように、仕事の鬼と化しているようにも見えた。
それにはシカマルの父母も、親友のチョウジも、カカシたちも、心配していた。
いくら重要な責任ある身であるとは言え、まだ一ヶ月、それも17歳の、少年とも大人とも言えない年頃だ。
彼の欠点であり美点でもあるあの気だるい感じが抜け、常に鋭い目つきで歩くので、
彼を知る人々は、何だか変わったとさえ口にするようになっていた。
お陰で、シカマルにあんなに寄って来ていた少女たちも、急にいなくなってしまった。





------上忍会議から幾日が過ぎたある日、暇を弄んでいたコテツが、唐突に発破をかけ始めた。

「あ〜あ、急に暇になったなぁ…」

机の上に突っ伏し、生真面目なシカマルの方に顔を向ける。

「-----そういや、オレが言った通り、飛び切りのイイ女になったよなぁ…砂の使者さん」

チラッとシカマルの顔を覗き込むが、シカマルは書籍から目を落としたまま、ピクリとも動かなかった。

「男がいるんじゃなぁ〜。やっぱりあの時口説いておくんだったなぁ〜…」

それでもシカマルは、真剣なまなざしでずっと本だけを見つめ、まるで相手にしていない。
それでも彼のことなので、聞いてはいないはずはなかった。
隣りでは冷静沈着なイズモが、無言で顔を引きつらせたまま、
しかし気になるので一応耳をそばだてて、一部始終を見守っていた。

「皆の噂になってたよな〜。美男美女のお似合いカップルだって。いつまで滞在するんだっけ?
 確か、もうしばらくいるんだったよなぁ〜。そんなに気に入ってんなら、木ノ葉に住めばいいのに……
なぁ、シカマル?」

バンッ!!
分厚い本を閉じた衝撃音が、静かな部屋に響き渡り、二人は腰を浮かすほど驚いた。
軽く息を吐いてその場に立ち上がると、シカマルは机を離れた。

「関係ねーよ」

そう言って火影室を後にする。

「あ、おい! どこ行くんだ?」
「関係ねーよ!」

バタンッ!
扉が勢いよく閉められた。
火影室に残されたコテツとイズモは、途端にニヤニヤし出す。

「------ありゃ、重症だな」






To Be Continued …




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「そんなの関係ねぇ! はい、おっぱっぴ!」

…とならなかっただけでも良かった〜(おい)。

名異斗と書いてナイトと読む。その心得は…?  内緒。  
鋭い人にはバレそうだけど。
まんま、騎士という意味だけではありませぬ。念のため。
探偵ナイ●スクープでもありませぬ。念のため。

彼は、なかやまきんに君のようなマッチョな体形なんでしょうかね???
それだけは、どげんかせんといかん。
何としてでも阻止せねば。
あう。













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