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シカテマ疾風伝<第二部>
作:スピリットQ



最終話 〜A to Z〜 (11−Z)


奥まった薄暗い地下の一室にて、
見えない何かでがんじがらめに縛られた女が椅子に座らせられていた。
その女の周囲を、数人の男たちが取り囲んで立ち、尋問を続けている。

「もう一度訊く。お前はどこの暗部、もしくはスパイだ? 本名、出身、目的、
それにあの名異斗という男との関係…、全て白状しなければ、痛い目に遭うぞ」

「だからさっきから言ってるじゃない。はやく痛くしてって」

女はにっこり微笑んだ。先程から、こればかりが無駄に繰り返されていた。
このままでは埒が明かない。

「本当にいいんだな? 後悔するぞ」
「ふふ、そんなこと言ったって私は何も教えてあげないわよ? だってほら、秘密ってゾクゾクするじゃない? 
何もかもわかってしまったら、つまらないじゃない。ああ、素敵だわ…」

女が上目遣いに正面の男をうっとりと見つめる。
妖艶なその瞳と目を合わせると吸い込まれそうになり、男は一瞬たじろぐ。
しかしハッと我に返ると、

「さっきからふざけたことばかり抜かしおって! やれ!」

命を下し、拷問は開始された。

まずは基本中の基本、一人が身体を更にきつく締め上げる術をかけ、一人が幻術で地獄のような恐怖を体験させる。
勿論その間、自分を擁護する術も、女は一切使えない。
それなのに、烏の濡れ羽根の如くな髪のこの女は、阿鼻叫喚するのが普通であるところを、
いつまで経ってもうめき声一つ上げない。
それどころか微笑んだまま、じっと正面の男をその妖艶なまなざしで捕らえ続ける。
男の背筋に、ゾッと悪寒が走った。

「…何か仕掛けていたの? 私には何も見えなかったし感じなかったけれど?」

そう言って、何事も無かったかのように足を組み始めた。

「なっ…、何だこの女!?」

術によって身動き一つできないはずなのに、女は片足をプラプラさせ、くつろいでさえいる。
すぐさま一斉に男たちが女を押さえ込んだ。

「ふふふ、やっぱり木ノ葉ってせっかちさんばっかりね。でも私はまだここにいるから安心して」


少し距離を置いてマリヤの様子を一部始終眺めていたカカシの隣りでは、
動物の面を顔に着けた暗部の男が立っていた。火影に向かって何やら話しかける。

「----あの女、どうやら最初から術にかかっていなかったようですね。金縛りの術にも、
かかっている振りをしていたようです。
とは言え、自分から術を発動していた形跡も無く、一体どういうことでしょうか…?」

カカシは腕組みをして考え込む。
シカマルは、マリヤがチャクラを練りこむスタミナ、つまり身体と精神の両エネルギーを吸引していると言っていた。
秘伝忍術であるシカマルの影を練りこむチャクラが、マリヤに反応していたのだと。
それでマリヤもまた、秘伝忍術を用いる特殊な忍で、それだけでなく俗称・吸気鬼と言える種族ではないだろうかと。
自称・雲隠れの人間であるマリヤと同様、名異斗も雲隠れの人間で、彼と接吻をしていた際、
テマリの全身から力が抜け切っていた。
しかし、マリヤに手練の忍の術すら効かないとなると、単なる人とも言えず、
それとも特殊な力が働いているのだろうか、益々、謎は深まるばかりである。
とは言え、この女がそう簡単に口を割る様子は微塵も感じられない。

それにマリヤが、何故わざわざ火影室から見えやすいあの建物の屋上で、シカマルと対峙していたのか。
まるで、自分たちに気づかせるためにわざとあの場所にいたかのように。
そういえば…と、火影室にマリヤが自分から顔を出しにやって来たことをカカシは思い出す。
その大胆不敵な行動は、まるで挑戦状を叩きつけているかのようではないか。
宣戦布告と言っても過言ではないのかもしれない。


「あら…、もう戻って来たの? テマリさんを放って来ちゃっていいのかしら?」

テマリを見送ったシカマルが拷問室の中に入ってきた。

「…どういう意味だ?」

シカマルは、怪訝な目でマリヤを睨む。

「だってあの男、まだこの辺にいるかも知れないわよ。…テマリさん、火影に自分のことばらしちゃったから、
ただじゃおかないかも。あの男って紳士に見えて、結構ケダモノだったりして…あなたみたいに」

シカマルの眉が吊り上がる。どこかで聞いたセリフだった。
一体この女は、テマリとのつい先程の会話を、どうやって聞いていたというのか。


「あなたを将棋の駒で例えると、“桂馬”なんですってね。
将棋で言う“桂馬”って、チェスでは何の駒に当て嵌まるか知ってる?」 

「----何が言いたい…?」

何故、昔アスマに言われたことまで、この女が知っているのだろうか…?

桂馬と同等のチェス駒は、その名もずばり、『ナイト』である。
そのことは、将棋と囲碁しかしたことがないシカマルでも知識として知ってはいた。
けれど、それと名異斗とどう関係があるというのだろうか。

「“桂馬”も“ナイト”も、他の駒を飛び越え移動できる、型にはまらない駒…。
だからあの男もきっと、ただの紳士ではないかも…あなたと同じでね」

「何故、テマリが火影に言ったことをあいつが知り得るんだ? 何でお前もそれを知っている?
 聞き耳を立てていたのか? あいつもお前も…やはり仲間か?」
「仲間…? 確かに私はあの人のことを知ってはいるけれど、“仲間”ではないわ。
でも私たちは大体のことは知っているわよ。知ることができるのよ」
「情報源はどこだ? どこの誰と繋がっている? 暗部の者か?」
「言っておくけど、私、コソコソするのが嫌いなの。どちらかと言えば目立ちたがり屋で…」
「だから、わざと目立つ場所にシカマルをおびき寄せたり、我々の前に堂々と現れたりしたのか」

カカシが口を挟む。

「でも全く嫌いってわけでもないのよね。時には、お忍びしなきゃいけない場合もあるわけだし…あなたの寝室にとか…」

突然マリヤが立ち上がると、シカマルに寄って、彼の首に両腕を回してきた。
その腕をシカマルは素っ気無く外す。

「どうして突然つれなくなったの?」

クスクス女が笑う。
シカマルは女を無視してカカシに告げた。 

「火影様、念の為にもう一度テマリの元へ出向いて、安否を確認して来ます」
「許可する。増援も付けよう」
「いえ、オレ一人で結構です。名異斗がもしそこにいたら好都合、話したいことがあるので…」
「----そうか、まぁ、いいだろう。但し、相手をあまり煽るなよ。充分気を付けろ」


カカシの言葉を聞くや否や、シカマルはその場を立ち去った。

「…さて、術が効かないと言うのなら、ここはシンプルな拷問と行きましょうか。
実は私は、素手の拷問の方が何倍も好みでねぇ〜…-----」

カカシはくるりとマリヤに向き直ると、手をワキワキさせながら近づいた。



                 *



鬱蒼と茂る森の中を、一目散に駆けていく金髪のそのくノ一は、長い髪を棚引かせながら、
木と木の間を飛ぶように伝っていた。
急いで帰らなければならない、そんな焦る気持ちを抱きながら。
どんどん木ノ葉から遠ざかって行くのは、何故か後ろ髪を引かれる思いではあったが、今は、
名異斗のことが優先だった。
彼はきっと今頃尋問を受けているだろう。
運が悪ければ拷問さえ受けていることだろう。
とにかく、自分は行かなければならない。
会って、事の真相を聞き出さなければならない。
火影たちに反対はされたものの、それで納得する自分ではなかった。
自分は彼を信じたい。それを確認するためにも、名異斗にやはり聞き出さねばならなかった。
その結果、自分がどんなことになろうとも…。

と、その時、背後に人の気配を感じて、テマリは首だけをひねった。
誰かが追って来たようだ。
シカマルだろうか。
何か忘れ物でもしたのかと思い、彼女は一旦木の幹に着地した。

ザッ……

「!?」

目に飛び込んできた姿は、自分と同じ髪の色をした青年だった。

「名異斗!? どうしてこんな所に? 砂へ戻ったんじゃないのか?」
「…言っただろう? 婚約者を置いてなど帰れない、って…」
「まさか…、ずっと木ノ葉にいたなんてことは…、ないだろうな…?」

数メートル先の幹に立って向き合う名異斗に、彼女は恐る恐る問う。
彼は笑みを浮かべていた。しかし、その笑みの奥に今まで見たこともない顔が隠れていることを、
テマリは見抜いていた。
質問には答えず、テマリの立つ幹に飛び移ると、彼女の横に立ち、テマリを見下ろす。
顎に手をかけ、彼の唇が近づく。

「やめろっ!」

テマリが拒んで、彼の胸を押した。だが名異斗は彼女を強引に抱きかかえると、地面に着地し、
テマリをその場に押し倒した。

「な、何をするつもりだ…!?」

「……」

彼のいつもは綺麗な穏やかなブルーの目が、どこか雲って見えた。
テマリは何だか怖くなった。
テマリの両手首を掴んで押さえ込み、名異斗がじっと理性を失ったような目で自分を見据えている。

「名異斗!? や、やめっ…」

突然、テマリの唇を奪った。そして口の中を犯される。
こんな乱暴なキスの仕方は今まで彼にされたことがなかった。
テマリは気が動転する。

「んんっ……ん…、あっ…」 

思わず出た自分の艶っぽい声に、テマリ自身も驚く。
抑えようと思っても、それは自然に漏れてしまう。
甘い吐息と艶めいた声を聞いて拍車がかかったのか、名異斗の動きもエスカレートする。
キスをしながら彼の手がテマリの足に触れてきた。

「んんんっ……」

テマリは首を左右に振って、彼の身体を突き放そうと試みるが、既に気が吸われているのか、
力が全く入らなかった。
彼の手がテマリの片足を持ち上げると、
はだけた太股が露わになった。
そして彼の唇が、今度は白い谷間へと移動した。

「あっ…!!」

テマリの背中が反り返る。
しかしもう抵抗する力がなく、彼にされるがままだった。
そしてバッと忍服も不完全ながらも剥ぎ取られてしまう。


何故いきなりこんな-------


テマリは言葉も出せずにいた。こんな無力な自分もイヤだったが、
それ以上に、こんなことをする彼はもっとイヤだった。
彼がどこかヤケになっているように見えて悲しかった。
目から涙が零れ落ちた。


「----テマリ…? 泣いているのか…?」


そこでようやく名異斗の暴走も止まった。彼女の涙を手で拭い、むきかけた服を再び戻し始めた。

その時-----


「…あんた、一体こんな所で何やってんだ?」 


突如、頭上から聞こえた男の声に、名異斗はハッとして顔を上げた。

「お前は…」
「どう見てもそれって強姦だよな」

スタッと地面に飛び降りるのを見て、名異斗だけが立ち上がる。
意識を失いかけたテマリが、薄くまぶたを開けてシカマルを見つめていた。

「…シ…カ…」

「君も人のことを言えた立場ではないのではないか?」
「るせーよ」

勿論、否定はしない。この男もマリヤと同類だとすれば、自分がしてきたことも知っているのだろう。
千里眼の持ち主なのだろうか…? 
全てを見抜くその目に嫌気が差し、問い質す気にもなれないシカマルだった。

「なぁ、あんた、勝負しようぜ。チェスのナイトと将棋の桂馬どっちが勝つのか」
「無駄なことを。だが、いずれそうなる日が来るかもしれない…。----テマリ、
しばしお別れだ。今度会ったその時こそ-----」
「ど…こへ…?」

力の無い、懸命に振り絞った彼女の声が、足元で名異斗に向けられる。

「今砂に戻れば、僕は間違いなく捕らえられるだろう? 取り敢えずどこかへ」
「……」
「それじゃ、もう行くよ。夜更かしをしてあまり肌を荒らさないようにな。
-----君も、色々と健闘を祈っているよ」

そう言って消えた。
最後の言葉はシカマルに対してだった。

「ったく、何を色々健闘するんだよ」

ブツブツ呟いて、横たわるテマリの方へ歩み寄る。

「怪我はないか?」

テマリは無言で頷く。仰向けのまま空を見上げ、どこか放心状態だった。
彼女の白い胸元と太股が大きく露出して見えていた。

「-------…」

目のやり場に困り、まともに直視できずにシカマルは不意に目をそらした。
それでも彼女の滑らかな体のラインと柔らかそうな唇を目の前にしてしまうと、
その誘惑に抗えなくなる。

「オレの気を分けてやるよ」

テマリが「?」という顔をする前に、シカマルが覆いかぶさってきた。
彼女の唇に自分の唇を深く重ねる。
テマリが苦しげに目をつぶる。

「ん…!」

名異斗の刻印を消したいと思ったら、もう我慢ができなかった。
しばらくして、シカマルの唇が名残惜しそうに離れる。

「お…前っ! そんな技は持ち合わせていないとか言ってたじゃないか!」
「----どういうことだ?」

突然、テマリの体力が回復していた。
シカマルは、テマリが先程自分とのキスを、『補給』と言っていたことを思い出す。

「なぁ、テマリ、何でオレからのキスを補給だなんて言ったんだ?」

身を起こしながら、テマリが乱れた衣服を整える。

「名異斗とお前のとは明らかに違う。名異斗のは確実に力が抜けるが、シカマルのは力がみなぎって、
もっと欲しくなると言う感じだ。…あ、いや、変な意味じゃないぞ。誤解するな」

シカマルはハッとする。
てっきりマリヤは、自分のエネルギーを吸引しているとばかり思っていた。
しかし、実はその逆だったことをシカマルはテマリによって気づかされる。

「道理で自分がコントロールできなくなるほどパワフルだったわけか。
あの女…、騙されてる振りして、オレを騙してたな…。
あいつから受け取ったエネルギーが未だにオレの体に残っていて、
あんたと唇が触れ合うことで気を送り込んだのかもしれない」

一杯食わせられた。マリヤを騙すつもりが逆に騙されてしまっていた。

「あんたが、オレが最近おかしいと言っていたのも、きっとマリヤによってスタミナが増やされたせいだ」

「…本当にそのせいだったのか?」

シカマルは滔々と述べるが、その方がむしろ腹立たしくさえ感じるテマリだった。



                 *


「----砂まで送るよ」
「いや、いい。名異斗は本当にしばらく現れないだろう。それに、一人で色々考えたいんだ」

彼女の心は揺れ動いている。
それはシカマルも感じていた。
だから、叶うのなら、テマリの心を自分に縛り付けておきたかった。

「…そうか、わかった。気をつけて帰れよ。ただでさえ性格に反して、体つきは色っぺーんだし」
「反してとは何だ反してとは? 一体何が言いたい?」
「もう少し女の自覚持てってことだよ。世の中、鹿の面をかぶった狼がウジャウジャいるんだからな。
そういや昔の髪型、オレ結構気に入ってたぜ」

大輪の花のようなテマリの笑顔を、一層華やかに引き立てていたようで…。
テマリは自分の髪に触れると、

「子供っぽいからやめたんだ。----じゃあ、また束ねてみようかな…」

後半、小さく呟いたのをシカマルは聞き逃さなかった。
実は、テマリが髪を伸ばした本当の理由は他にあった。
そこに名異斗は全く関係がなく、シカマルの横にいつもいる幼馴染のあの少女のように、
自分もなってみたかったということは、この先も言わないつもりでいる。


「そう言えば、まだお前との約束を果たしていないな。
今度会う時まで、何か欲しい物を考えておけ」

また会えればの話だが-----
そう言いかけてテマリはやめた。

さっき町を歩いて来た際に、何かを買おうと思えば買えたはずだった。
だがそれを叶えてしまうと約束が消えてしまう。
それに気づいていて、シカマルも敢えて口にしなかった。
彼も同じ気持ちだったのだ。

「いらねーよ。…でもまぁ、強いて言えば----」

そこまで言って、シカマルも口を閉ざしてしまう。

「何だ? 言いかけて止めるなんて男らしくないぞ」
「いいのか? 聞いたら後悔するぜ?」
「……じゃあ、やめとく」
「何だよ、聞けよ。言っておくが、二年前の酢昆布やアメ玉のレベルと一緒にすんなよ。
オレだっていつまでも子供じゃねーぜ」
「うるさい! そんなことは言われなくてもわかってる!」
「わかるのか?」
「……」

顔を赤くしながらテマリは、いつもと同じように颯爽と去って行こうとする。
シカマルは、彼女がこのまま消えてしまいそうな不安がよぎった。

「それじゃあな」

「待てよ、これ持って行け」

テマリの手を掴んでシカマルが何かを手渡した。
見れば、それはやや古めかしいペンダントだった。

「黒い鹿…」
「奈良家に伝わるお守りだ。これが影ながらあんたを守ってくれる」
「まさか、この鹿がお前の代わりだなんて臭いことを言うつもりじゃないだろうな?」
「…んなめんどくせーことは言わねーよ」

図星を言われ、顔を引きつらせるシカマルの目が泳ぐ。

「また借りができてしまったな」
「いいーって。オレがそうしたいんだから、黙ってもらっとけよ」

テマリはペンダントを見つめると、首からかけた。

「ありがとな」

不意を突かれて、とびっきりの笑顔が咲いた。

「……ああ」


抱きしめたい衝動を抑え、軽く息をついてからシカマルも微笑んだ。

それがこの世界で見せた、彼女の最後の笑顔とも知らず-------







The second part is over.
  〜そして<第三部>へと続く〜




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


結局イチャこらしまくって、第二部終わっちゃったよ〜  ふっ…
まぁいいや、第三部は突き放すから・・・(鬼!悪魔!)。

ネバー・エンディング・ストーリー!!

敢えて(12)にせず、(11)を2つに分けたというのにも意味がありんす。
長くなったというのもありますけど。
きっとこうなる運命だったのでしょう(何がだ)。
暗号解読してみて下さい。
きっと今後の話の鍵・ヒントになるでしょう(ダ・ヴィンチ・コードか!)。

『ザ・スーパー・忍』にも<第三部>の要素が含まれてあると書きましたが、
ネタバレをすれば、何てことない拉致・誘拐ということです(何てことあるだろ)。
誰がさらわれるかというと、勿論シカマルです。勿論ウソです(笑)。



<第三部><外伝>まったりブログで更新中〜。
遊びに来てね♪

http://shikatantematan.blog.shinobi.jp/
















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