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伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第3章 戦い
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第19話 開戦

 アーシュ達がハールの試験?に合格した翌日。

 里の緊張感が高まっている。

 アーシュ達やハール達、そして里の他の者達を見れば分かる。


 いつもとはあきからに違う。

 戦の前だ。


 武器を手入れする姿がよく見られるし、作戦会議のようなものにアーシュ達も参加していた。


 おそらく、オークだろう。

 あの、ハイオークキングを倒しにいく。


 あれからそれなりの時間が経っているが、オーク達はどこまで進化しているのか想像もつかない。

 アーシュを罠で捕えたあのオーク達が、さらに恐ろしい武器やアイテムを開発していないかと思うと、アーシュ達が心配になってくる。


 心配にはなるけど、成長したアーシュ達を思えば、その心配は杞憂なのかもしれない。


 それに、棒である俺がアーシュ達に代わって戦いにいく!とか言えないし。

 俺はアーシュに使ってもらってこそだ。


 運命共同体である。

 アーシュと共に、俺はオーク達を倒す!



 その日の夜、アーシュはいつも以上に俺を艶々に磨いてくれた。

 そしてベットで一緒に寝ながら、明日の戦いを思っているのだろう。


 アーシュは興奮した様子もあるけど、ちょっと緊張して不安な表情も見せる。

 俺は癒しと、愛情を込めた魔力をアーシュに流す。


 アーシュは微笑んでくれた。

 そして一緒に眠る。


 そう、あの夢を見るようになった日から、俺は毎日眠るようになった。

 アーシュと一緒に。


 そして夢を見る。

 目が覚めると全て忘れている夢。


 でも、きっとその夢は素敵な夢に違いない。

 夜を越える度に、その想いは強くなる。


 なぜなら、俺はきっと夢の中で……アーシュに逢っている。


 アーシュと逢って、話をしている。

 この世界の言葉は分からない、でもアーシュとは話せている。


 いや解り合えている。

 そんな気がするから。




 翌日、戦への準備を終えたみんなが集まっている。

 リンランディアがみんなに作戦の最終確認なのか、冷静な声で話す。


 終わって、登場したのはハール。

 ハールは楽しそうにみんなの顔を見ると、声を一言だけ。


 その声にみんなが雄叫びを上げて応える。

 アーシュ達も声を上げ、いざ戦へと!!!!




 アーシュ達の進軍はすさまじいスピードだった。


 狼だ。

 狼に跨って移動している。


 この狼はハールのしもべか、召喚獣のようなものなのか。

 ハールの口笛と共に、大量の狼が里にやってきた。


 それに跨り次々と走りだすみんな。

 ハールは8本脚の軍馬に乗り、リンランディアは氷の羽で飛ぶ。


 戦に行くのに食料とか補給物資が見当たらなかったのは、一気に戦いの場まで行くからか。

 オークの巣が近いのか、狼達は足音を消すように、慎重に走るようになった。


 そして……。



 これは奇襲となったのか?

 それとも、オーク達は俺達が攻めてくるのを予想して、防衛線を張っていたのか?

 どちらにしても、有利なのが俺達なのに変わりはない。



 最初に戦場の火蓋を切ったのは、やはりハールだった。

 特大の雷を落とし、それが合図となり双方とも戦闘開始となった。


 オーク達は、俺がいた頃の巣とは違う場所にいた。

 天然要塞と言えばいいのか、いくつもの山のような場所に巣を構えていたようだ。


 洞窟もあり、泉もあり、谷もある。

 それらを上手く利用し、加工して自分達の巣にしていたのだ。



 オーク達はいったい何百匹、いや何千匹?

 見るだけでちょっと酔いそうになるほどの数だ。


 守りのための軍隊も作られていたのだろう。

 俺がいた頃には見かけなかったオーク達がいる。


 弓矢を使うオーク、爆弾のようなものを投げてくるオーク、硫酸ビンのようなものを投げてくるオーク。


 そして魔法使い、メイジタイプのオークがいた。

 杖を持って、魔法を詠唱してやがる。



 俺達の戦力は里を出た時点で、俺が見た数は300ぐらいに思える。

 数の差では圧倒的にオーク達が有利だろう。


 ただ、進化して様々な武器やアイテム、魔法を使ったところで、オークはオークだ。

 一匹一匹がそれほど強いわけじゃない。


 時々、ハイオーク戦士と思われる姿をしたオークがいるけど、それも問題なく倒していく。


 さらに、ハールの召喚獣?の狼がすごい。

 戦闘力はないのか、まったく戦わないのだが、この狼が結界のようなものを張る。


 そのおかげで、里のみんなは傷つくことがほとんどない。

 まったくの無傷とはいかないけど、軽傷で済んでいる。


 オークロードクラスが出てきた時は無理せずに引いて、数人で対処している。

 堅実な戦いぶりだな。


 おまけにこっちには、ハールとリンランディアがいる。



 ハールは好き勝手暴れている。

 作戦も何もあったもんじゃない。


 おそらくだけど、そもそもこいつには作戦で何かの指示出来るとは思えない。

 この男が作戦通り動くはずがないと、リンランディアとかは分かっているんじゃないか。


 好き勝手に暴れろ、それが彼に指示できる唯一の作戦だ。



 リンランディアは氷の羽で飛びながら、空からみんなをサポートしている。


 見たことのない戦闘型?のサキュバスが空を飛んで彼に襲いかかっているが、彼に得意の誘惑はきかないだろう。

 清廉潔白の彼が、サキュバス如きの誘惑に負けるはずがないしな。



 有利な状況で戦闘は進んでいくが、オーク達も反撃してくる。


 ハイオークロードが出てきたのだ。

 成長する前のアーシュでは倒せなかったハイオークロード。


 それが登場すると、オーク達の勢いは戻り防衛線を再び構築していく。


 みんながハイオークロードに対抗出来るわけじゃない。

 アーシュ達以外の里のみんなの強さを知らない俺だったが、アーシュ達並みに強い者はそれほどいないように思える。


 中には、アーシュ達よりも強そうな感じの者もいるが……絶対数的にそれほど多いわけじゃないだろう。


 ただ、単体の強さが全てではない。

 里のみんなは連携というか、経験というか、戦い慣れていて、サキュバス達が開発したと思われるあやしげな罠にもかからない。


 こういった現場で即対応する能力は経験あってこそなんだろう。



 アーシュ達はハイオークロードのいる場所に、あっちこっちへと向かっている。

 カラスのような鳥が飛んできて、アーシュ達に指示を出しているのか、向かう先々にハイオークロードがいる。



 俺から無限魔力供給があるアーシュは、常に電光石火を使っている。


 ベニちゃんとラミアは、鬼神と白蛇は使っていない。

 あれの疲労は半端ないからな。


 ここぞという場面まで温存だろう。


 それでも、3人でハイオークロードの相手をすれば、問題なく撃破出来ている。

 1対1でも勝てると思うが、3人で1匹のハイオークロードを相手にすれば、ほとんど一瞬のうちに倒してしまうのだ。


 このままいけば、ハイオークキングをハールが倒せば簡単に勝てるんじゃないか?

 そう思ってちょっと楽観してしまった。


 相手の陣地深くまで進んだ時、そいつ達はアーシュ達の前に現れた。



 それは俺の記憶では、ハイオークキング。


 ロードとキングの間に存在する高い高い壁。

 その壁を乗り越えて進化したキング。


 ロードとは比べ物にならない威圧感を放ちながらやってきた。

 ただし、俺によって進化したハイオークキングなのか分からない。


 なぜなら、ハイオークキングは……3匹いたからだ。


 アーシュ達も驚いている。

 事前の情報では、キングは1匹だと聞いていたんだろう。


 いや、そもそも、どうしてキングが3匹いられるんだ。

 俺の推測は間違っていたのか?


 戸惑う俺達に考える時間をくれるほど、キングは甘くない。

 大地を震わす雄叫びと共に、3匹のキングはアーシュ達に襲いかかってきた。


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