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伝説の木の棒 後編  作者: 木の棒
第2章 3人娘
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第12話 アーシュ VS ベニちゃん

 私は、ベニちゃんとラミアと3人で鍛錬場に向かっている。


 昨夜、私はお父様からもらったこの棒で狩りをした。


 最初は嫌だった。


 お母様が旅に出る前に、私に預けてくれた愛刀ザンテツケンをお父様は私から取り上げた。


 それはお父様のものじゃなくて、お母様のものなのに!

 お母様には振られて、今でも会うのを恐れてるくせに!


 私は心の中で、ちょっとだけお父様を馬鹿にしながら、棒を見つめた。

 すると、リンランディア様が、その棒は聖樹王から作られた特別な棒で、大きな力を秘めていると教えて下さった。


 私はこの黒い木の棒が、聖樹王から作られていることに驚きながらも、強く握ってみた。


 すると、棒に力強い闘気のようなものが現れた。



 私はこの珍しい棒を持って狩りにいくことにした。

 最初、ラミアやベニちゃんにちょっとからかわれたけど、2人もこの棒の力を見て驚愕していた。


 そして、狩れば狩るほど、棒から感じる力が増えていった。


 闘気だけじゃなくて、魔力も感じれたし、属性を付与したような力も追加された。


 私は面白くなって次々に悪魔を倒していった。

 新しい玩具を手に入れた子供のように。


 そして、しばらく狩り続けた後、棒から特別な魔力を感じた。

 私はその魔力に応える。


 棒は私にイメージを求めてきた。

 どんな刀がいいのか?と問われているように思えた。


 私はお母様の愛刀ザンテツケンをイメージした。

 棒はそのイメージに応えるように、棒を紫電が帯び、そして闘気のようなもので作られた刀身の刀となった。


 私は嬉しくて、さらに興奮して狩りを続けた。


 狩りから戻って、お父様達に棒のことを伝えた。

 お父様達は、私の話を楽しそうに聞いていたけど、何か真剣そうなことも話していた。


 私はとにかく嬉しくて、部屋に戻りお風呂に入ると、また棒を握って狩りのことを思い出していた。


 すると、棒からとても優しくて心地よい魔力が流れてきた。

 きっとこの棒も、私が持ち主になったことを喜んでいるんだ!


 そう思うと、また狩りに行きたくなった。

 私は再び着替えて狩りにいく。


 そして、私は過ちを犯してしまった。



 狩りに夢中になっていた私は、里から離れた場所まで来てしまっていた。

 そして、そこで私は見たこともないオークと出会った。


 そのオークは私が知っている、どのオークよりも強かった。

 私の方が押されている?

 私の心の中に焦りが出た。


 その時、棒から流れてくる魔力の中に、あるイメージが込められていた。


 それは、紫電を纏う私。

 雷となり、誰よりも速く、誰よりも強い私。


 頭の中に入ってくるその名を口にした。



 “電光石火”



 私は爆発的に速くなり、オークにスピードで圧倒した。


 でもオークを倒すことは出来なかった。

 この圧倒的なスピードを、私自身がコントロールできない。


 棒が、私に代わってコントロールしてくれているようにすら思えた。



 オークは私のスピードを見て、森の奥に逃げる。

 私はここで退くべきだった。


 それなのに、新しい力に調子に乗って、私はオークを追った。

 結果……私は相手の罠に捕まり、屈辱的な姿を晒すことになった。


 リンランディア様達が助けにくるのが、あと1秒遅かったら、私は自分の首を刎ねていただろう。


 いや、この棒は私が自害することを許してくれただろうか?

 私の首にその刀身が血を流させた瞬間、棒からその力は失われた。

 まるで、意思があるように、自らその力を引っ込めたのだ。


 私が犯されることを望んだとは思わない。

 だって、棒は捕まった私に、ずっと優しくて癒してくれる魔力を流してくれたから。


 棒は弱っていく私をずっと支えてくれた。

 助けてくれた。


 今日出会ったばかりの、調子に乗った生意気な新しい持ち主を、全力で守ってくれた。


 きっと、棒はリンランディア様達が助けにくることが分かっていたんだ。

 だから、私が自害しないように、力を引っ込めたんだと思う。


 私は棒をクルクル回しながら、鍛錬場に向かう。


 お父様を……リンランディア様を納得させる力を得るために。







 いま俺は、アーシュ達3人と一緒に鍛錬に使っているであろう平原に来ている。

 里から近く、悪魔達もここで活動することはないのかな?


 魔導具の光の玉も置いてあり、明りも十分に確保されている。

 何やら小屋で、ハール達と話したアーシュは、笑顔になったり落ち込んだり、そして急に真剣な表情になったりして、この鍛錬場までやってきた。


 途中、よく分からん男共をぶっ飛ばしていたけど。



 さて、3人で何かを話している。


 鍛錬するにしても、あまりに真剣な雰囲気だな。

 昨夜の出来事から、アーシュの中で何か思うことがあったのだろう。


 それにハール達との会話の後にすぐにこの鍛錬場まで来たことを考えると、おそらくもっと強くなれとか、修行してこいとか、そういうことを言われたはずだ。


 とりあえずは“電光石火”だよね?

 あれを使いこなしたら、アーシュは一気に強くなるはずだ。


 まだ、ベニちゃんとラミアは電光石火を見ていない。

 ハール達だって知らない。



 話し合っていた3人だが、どうやら、アーシュVSベニちゃん、での試合をするようだ。


 ラミアがのほほ~んと距離を取っていく。

 そして審判の役で、距離をとって対峙する2人に合図を送る。


 ラミアの合図と共に、動いたのはアーシュ。

 ベニちゃんを錯乱させるように、素早い動きから紫電魔刀を振るう。


 俺はアーシュが本気の力を要求してくるのが分かったので、全力だ。

 ベニちゃんがそれで傷ついたりしたら嫌だけど、アーシュが全力を望むということはベニちゃんの強さはそれほどのものなんだろう。



 現に、ベニちゃんはアーシュの斬撃をかわし、さらには腕で受け止めている。

 闘気だ、まさにベニちゃんは闘気を纏っているのだ。


 鬼とは闘気を纏うのか?


 素早いアーシュの攻撃を防ぎながらも、重たい一撃で反撃してくる。

 アーシュはベニちゃんの攻撃を受け止められないだろう。


 一撃でももらったらアーシュの負けか?


 アーシュの攻撃では、ベニちゃんの防御を突破できない。

 昨日のハイオークロード戦と同じような状況だな。


 アーシュは、意を決して魔力を高める。


 わかってるよ……電光石火だろ。

 俺はそれに応じるように、魔力を流し電光石火を発動させる。



 雷が落ちた爆発音と共に駆け抜けるアーシュ。


 ベニちゃんはアーシュの動きが見えていないだろう。

 あっという間に後ろを取られて一撃を浴びる。


 しかも、ベニちゃんの闘気で全てを防げない。

 初めての有効打だ。


 アーシュの動きに驚愕するベニちゃん。

 遠くで見ているラミアの顔にも驚きの表情が浮かんでいる。



 そりゃ~そうだろう。

 昨日の夜に使えるようになったばかりだからね!


 俺とアーシュの2人だけの秘密の能力なのさ!


 アーシュは俺をクルクルと回して得意顔だ。



 ベニちゃんは自分の不利を悟って距離を取る。

 ま~こんな距離は一瞬で……ん? アーシュも動きを止めて何かを待っている。



 ベニちゃんもアーシュの動きが止まったことを確認すると、大きく深呼吸する。

 ベニちゃんの身体を覆っていた闘気が膨れ上がっていく。


 なんだこれ? なんかベニちゃんの必殺技くるの?

 ベニちゃんの身体からさらに闘気が溢れ、それが爆発した。







 俺は自分の目を疑った。


 いや、信じたくなかったのだ。


 あの可愛らしいチャイナ娘のベニちゃんが。


 その首筋、鎖骨、美しい腕でおじさんを興奮させてくれたベニちゃんが。


 そのスリットから見える生足でおじさんをまたまた興奮させちゃうベニちゃんが。


 動くたびに、ぷるんぷるんのバインバインのボインボインに揺れちゃう巨峰のベニちゃんが。






 爆発の中から出てきたのは、筋肉ムキムキの胸板に、カッチカチの太ももをスリットから見せ、筋肉の塊の腕を持った、顔だけは可愛いベニちゃんだった。








 え? どうして?! どうしてこうなっちゃったの?

 可愛いベニちゃんがまさに鬼! 鬼になっちゃったよ!


 いや鬼だと思っていたよ?

 鬼とかオーガとか呼ばれる種族だろうとは思っていたよ?!



 でもなんでおっぱいなくなるの?

 あのむっちりとした太ももは?

 あのすらりとして露出されたエロスを感じる腕は?




 俺の思考が追いつかない中、2人の試合は再開される。


 速い!!!!

 ベニちゃん速い!!!!


 電光石火を使っているアーシュに追いつけないまでも、見失うことは無くなっている。

 さらに強靭な身体となったベニちゃんの防御をアーシュは突破出来ない。


 防御を固めるベニちゃんではあるが、カウンターを合わせてくる。


 アーシュだって電光石火を使いこなせてるわけじゃない。

 まだ昨日覚えたばかりなんだから。


 このまま試合が続けば、不利なのはアーシュか?

 ベニちゃんの“鬼化”がどのくらい持つのか分からないが、数分ってことはないだろう。



 こう着状態の中、2人が距離を取った時、アーシュが俺を鞘に納めるかのように持つ。

 そして心を無にしていく。


 魔力を伝って、アーシュの心が感じれるようだ。

 明鏡止水だっけ? そんな境地に思える。


 静かに、美しく、俺を抜く!

 居合い抜きだ。


 その一閃が、ベニちゃんの闘気を超えて身体にダメージを負わせたところで、ラミアの声があがる。


 ベニちゃんの胸からは血が流れていた。

 ラミアがすぐにベニちゃんの傷を水で治療していく。


 2人ともかなり息が上がっている。



 休憩中に、アーシュは2人に何か説明していた。

 おそらく電光石火のことだろう。


 アーシュも俺の影響でこのスキルに目覚めているのだが、理由を完全に理解していることはないだろう。


 まさか棒に俺が存在していて、自分の才能を引き出しくれたり、自分の下着姿を見ていたりするとは思うまい。

 でも、何か感じているような気はする。


 すでに魔力レベル5だ。


 かなりアーシュに深く干渉できるようになっている。

 棒に俺という存在がいることは分からなくても、何らかの意思が存在しているとは思っているだろうな。



 それにしても、ベニちゃんの鬼化はショックだった。

 この世界に来てから、いろんなことがあったけど、ある意味最も衝撃的だった気がする。


 爆乳美女はおっさんだった、という意味不明な言葉に悩まされた時以上の衝撃だ。

 あれはあれで、すぐに受け入れたからな。

 だって見る分には問題ないから!

 挟まれる分には問題ないから!


 ベニちゃんは可愛い顔だけ残して、筋肉ムキムキのマッチョになるなんて。

 サキュバスとオークの残念な混ざり具合の個体に、ちょっと近いものを感じる。


 別種族ではなく、上下共に鬼ではあるんだけどね。


 そして、ベニちゃんからはどこか“東洋”の匂いがする。

 鬼もそうだし、肌色や着ているチャイナドレスもどきの服も。


 アーシュの刀もそうだけど、日本とか東洋の文化があるってことは、誰か地下世界に転生している者がいるのか?


 ま~鬼はたまたまかもしれないけど、刀ってどうなのよ?




 鬼化が解かれた可愛いベニちゃんは、ラミアに何かからかわれているアーシュを見ながら、適度にツッコミ、2人をコントロールしていた。

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