第5章:計画まで後6日…
ドンドンドン…
ドンドンドン…
プリムはランドの家のドアを叩いていた。返事が無いので何度も叩く。
ドンドンドン…
ドンドンドン…
何度叩いた頃だろうか、やっと返事が聞こえた。ドアを開けたのは、ランドの兄のソルであった。
「あれ?アネさん…どうしたんですかぃ?」
今まで眠っていたのか、腫れぼったい目を擦りながらソルは言う。
「ねぇっ!ルナお母様は居る?ソフィアの居場所知ってる?ランドが大変なの!」
プリムは慌てて事の一大事を伝えようとしたが、ソルにはあまり伝わらなかった。
「えっ?ランドが?ソフィアが?母さんが?何だって?」
「とにかく!お母様に会わせて!」
プリムは焦っていた。今はソフィアの力が必要なのだが、ソフィアの居場所を聞くのはルナが知っていると思ったのだが…。
「あれ?アネさん知らないんですか?今、母さんは罪人の母と言うことで、世間から批判を受けないように遠い所へ隔離されてるんですよ…」
プリムの身体中を冷たい何かが通る。
「何処に行ったの!」
プリムは叫んだ。
「分からないっす…今、ルルが探してるっす」
ソルがうつ向いた。
今まで思い付かなかった。キッシュの事だ…ここまで計算に入れていたに違いない…。プリムは地面に両手を着いた。
「ア…アネさん!どうしたんですか!お腹でも痛いんですか!」
ソルは慌ててプリムを起こそうとした。
「ねぇ…ソフィアの居場所知ってる?」
知っているハズも無いだろう…。母を知らない地に隔離され、ましてやランドの妹に当たるソフィアでさえも敵の手におちてるのにも違いないと思ったのに、それでもプリムは聞いてみた。
「えっ?ソフィアですか?それなら、森に居ますけど…」
ソルの戯言にため息をついた。やはり、敵の手に落ちていたか…。森に隔離されてる……んっ?
プリムはカバッと顔を上げてソルを見た。
「今、何て言ったの?」
「えっ…ですから、ソフィアなら家のすぐ裏の森の入口らへんで、ランドを待ってますと…」
急にプリムの顔が明るくなった。キッシュはミスを犯したのだ!ソフィアはまだ居る!しかも、すぐそこに!プリムはソルにお礼を言うと森に向かって走り出した。
まだ、ランドの記憶が戻ると言う確信は無いが、それでもソフィアなら何とかしてくれる。
そう思い、森の入口まで走ると大声を出した。
「ソフィアー!お願い!助けて!」
プリムは息を切らしている。運動不足で、城からランドの家〜森まで走り大声を出す。かなりの酸素を使い、頭がクラクラしていた。すると、草をかきわけて小さな白い狼が出てきた。プリムは、狼を見つけると抱きついた。
「ソフィア!助けて!ランドが…ランドが…」
プリムは涙を流している。
「えっ?ちょっと!プリムさん…どうしたんですか?お兄ちゃんが何だって?」
狼――ソフィアは、しどろもどろしている。まさか、この人が私に助けを求めるなんて…しかも、だいぶ走ったのだろう。しかも、泣いてるなんて…。ソフィアは驚いていたが、すぐに真面目な顔に戻った。そして、獣人化をしプリムの顔を見た。
「プリムさん…大丈夫。落ち着いて…何があったの?」
ソフィアはまだ艦酌を起こしているプリムの肩に手を置いて聞いた。
「ランドが…記憶なくして…昔の…ランドに戻って…キッシュが…滅ぼすって…ランドの…記憶を…」
まだ、何を言ってるのか分からないがソフィアは落ち着いて話をまとめた。
「つまり、お兄ちゃんの記憶が無くなって、その新しく記憶を作る時に私が大事な人だって埋め込めば良いのね?」
プリムは泣きながら、ソフィアの頭を殴る。
「いっっったぁーい!冗談だってば!お兄ちゃんの記憶を蘇らせて欲しいのね?って事でしょ?」
ソフィアは頭を摩りながら答えた。
「出来るの?」
「う…ん。多分…。相手が狼なら、話を聞いてくれると思うし。ほら、早く行こうよ!」
まあ、実際はソフィアもランドに何ヵ月も会っていないハズ。早く会いたくてしょうがないのだ。ソフィアは獣人化を解くとまたいつもの様な白い狼になる。プリムは狼の背中に乗る。
いつも思うのだが、ソフィアの本当の姿はまだ子供なのに、大人が乗っても重く無いのだろうか…。そんな事を思いながら、ソフィアは城へ向かって走り出す。
城へ着くとプリムは急いで地下牢に案内をした。
門番に制止させられたが、一刻を争う事態にプリムは門番を突き飛ばして強攻突破をする。
ランドの居る牢屋の前に来るとプリムは窓から中の様子を伺った。
ランドは部屋の隅でふて寝をしていた。手錠は外せないし、疲れきったのだろうか…。
プリムは、門番に牢屋の鍵を開けろと指示を出す。門番は最初は戸惑ったが、王女が恐い顔でもう一度言うので仕方なく牢屋の鍵を開けた。
カチャ
そんな小さな音にランドは反応を示した。
牢屋の中には、ソフィア犬型とプリムが入る。ランドは威嚇を始めた。
「ソフィア…お願い」
プリムはランドに視線を向けたままソフィアに言う。ソフィアは小さく頷くと、直接ランドの頭に語りかけた。
『お兄ちゃん…覚えてる?私よ。ソフィアよ』
プリムの耳には、ソフィアがグルグル言っているしか聞こえない。しかし、ランドには届いた様だ。
「妹…?嘘をつくな!俺の家族は母さんと父さんしかいない!」
『いいえ!お兄ちゃんは、人間の家族も居るし私も居る』
「嘘をつくな!俺に人間の家族はいない!俺を森に返せ!母さんと父さんの所に返せ!」
『クルシス母さんとロクサス兄さんは死んだわよ!貴方には、人間の家族しか残っていない…』
「嘘だ!クルシス母さんとロクサス兄さんは死なない!お前は人間の仲間か!俺を騙して殺す気だな!」
『そんな事しない!思い出してお兄ちゃん!』
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!」
ランドは頭を振る。
『お兄ちゃん思い出して!クルシス母さんとロクサス兄さんは殺されたのよ!人間に…』
ソフィアは言ってから、気づいた。今のランドにそんな事を言うことは自殺行為だと。しかし、時既に遅し。
「殺された?人間に?」
ランドはプリムの方を見た。
「そうよ!人間が殺したの!でも、貴方も殺したのよ!人間を!恨みは晴らしたのよ!」
プリムが叫ぶ。
「人間を滅亡させないと、俺の恨みは終わらない…人間を1人や2人殺しただけでは、俺の怒りは終わらない」
ランドの目の色が変わる。怒りの赤い色に…。そして、獣人化を始めた。金色とは違う。赤い色の金色の毛なみの狼に…。
「なんだ?コレは…」
ランドは自分の手足を見る。
『それは、クルシス母さんとロクサス兄さんの魂がお兄ちゃんの体に宿ってるの。母さんは、お兄ちゃんに人間を守って欲しいから、その力を分けたのよ』
「嘘だ!俺に人間を守れだと?この力は人間を滅ぼす力だ!」
そして、ランドは手錠を噛み千切る。
「ふざけないで!」
不意にプリムが叫んだ。
「貴方だって、人の親を殺したのよ!ルナ母さんの旦那さん…ソル達のお父さんを!それでも、彼等は貴方を恨んではいない!いい加減にして!」
「分からない!ソフィア…プリム…分からない!俺は何なんだ?」
「貴方は人間よ!恨みは終わったわ!貴方は人間として、この世界を守るのよ!」
しばらく間を開けて、ランドが呟いた。
「しばらく、一人にしてくれ…俺は逃げない。ここにいるから…」
2人は顔を見合わせて頷くと何も言わずに牢屋を出た。
ランドは獣人化を解いた。一人、薄暗い牢屋で呟く。
「俺は…一体何なんだ…」
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