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曇天

作者: ほみち

冬の海は、気紛れなクラゲをふよふよと上昇させた。


曇った水面をキラキラと反射する不機嫌な太陽が、少しだけ暖かい。


私が小舟に乗り、島を離れてすぐのことだった。



「やあ」と、クラゲが言う。「僕は今 最高にハッピーなんだ」


「どうして?」私が聞くと、クラゲは「友達が出来たんだ」と答えた。


嬉しそうなクラゲの隣には、ビニール袋が浮かんでいた。


「コイツ、無口でさ」クラゲが続ける。「何か喋ればいいのに」


クラゲがあんまり嬉しそうなので、私は真実を告げるべきなのか否か途方に暮れてしまう。


「ウミガメは、クラゲと間違えてビニール袋を食べちゃうことがあるらしいよ」私は、それとなく話してみた。「おかしいよね」


クラゲはそれはもう大ウケで、ふよよふよよとカサを揺らし、手足を震わせた。「ウミガメって、バカだなー」


私も笑った。笑うしかなかった。



長旅を終えたウミドリも、束の間の休息。


キラキラした水面をビニール袋が遮断して、波に合わせていったり来たりするのを、ただ静かに見つめて居た。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして。 感じたことを上手く伝えられる自信がなく今まで感想を書くことができませんでしたが、作品が好きな気持ちだけでも伝わればと思いコメントさせていただきました。 曇天と鱗が好きです。…
[良い点] 色々と一気に読ませて頂きました。 その中で、これが一番お気に入り。 上手く言えないけど、言えないけど、なんか泣ける。 人が死ぬ物語よりも、こういう話の方がどういう訳か切なくなるのですよ………
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