Lastフレーズ
俺は、アイツの故郷にたどり着いた。
雪に覆われた、小さな街。初めて来たはずなのに、よく知っている街並み。
アイツが「いつか帰りたい」とベッドの中で語った、そのままの風景。
親友の恋人の家はここから数キロ。
再び走り出そうとしたとき、感覚の無くなった足がもつれて転んだ。
「何だ、あれ?」
ここもか。どこからか聞こえる、ガキの声。
「なになに?」
「何か、怪我してる」
「黒い……猫?」
「黒猫?……悪魔の使者!」
!!
飛び起き、駆け出す。
千切れそうな手足を引きずりながら。
感覚の無くなった体に鞭を打って。
ホーリーナイト。アイツが俺を呼ぶ声がする。
心配するなよ。街では、忌み嫌われた俺だけど。
この手紙は必ず届ける。俺が生まれてきたのは、きっと、この日のため。
目に飛び込んで来た、聞き覚えのある家。生垣も、屋根の色も、窓の位置も、アイツが言っていた通り。
見つけた――見つけた! この家だ!!
玄関に近づき、扉を引っかこうとする。
しかし、手が上がら無い。
せっかくここまで来たってのに。
気がつくと、あれほどしっかりくわえていたはずの手紙も無い。
あわてて周囲に目をやると、隣にアイツが立っている事に気付いた。
優しい、けどどこか、悲しそうな顔をして。
何だよ、親友。自分で来られるなら自分で持って来いよ。
苦労したんだぜ、こっちは。
さ、帰ってメシだ。メシ。お前もしっかり食えよ? あ、それともお前は彼女に挨拶が先か?
アイツは何も言わずに、俺を抱き上げると歩き出した。
俺も、いい加減疲れていたので、甘える事にする。
いつもの様に撫でられて、ごろごろと喉を鳴す。
誰かに呼ばれた様な気がして、恋人は玄関を開けた。
そして、それに気付く。
スケッチブックの画用紙を使った手紙と、それをくわえ、うずくまる、黒い塊。
手紙には、短い謝罪と別れの言葉。
最後に、ホーリーナイトをよろしく、の文字。
翌朝、恋人の家の庭に、1つの墓標が建つ。
記された言葉は――Holy Knight。 聖なる騎士。
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