週末の裏通り。 人影はまばらで、あちこちに猫の姿がある。 通りの真ん中を、俺は胸を張って歩く。 鈎尻尾は水平に。 俺の姿を認めた奴らは、こそこそと路地裏へと隠れる。 この街に流れ着いて何年経っただろう。 流れ者の雄猫の俺には名前は無い。それで、不便も無い。 つるむのは苦手だ。 母猫は、生まれて1カ月の俺たちを置いて消えた。 父猫は、俺以外の兄弟を殺した。 この裏通りなら、俺を脅かす物は無い。 貧弱な他の猫たちも、馬鹿な野良犬連中も。 闇に溶ける様な俺の毛並みを見て、"悪魔の使者"などと呼ぶ、処置無しな人間のガキ共も。 だったらお前たちは何なんだ。汚い面で、訳も分からずギャンギャン騒ぎやがって。 何だよ、その手の石は。それで俺を狙っているのかい。 まあ、たまに暇つぶしで遊んでやるには良いが、それ以上の価値は無い奴らだ。 毎日が無為に過ぎて行く。その事に、何の疑問も無かった。 そいつと初めて出会ったのは、ある夏の日の夕暮れ。夕立の気配の漂う、いつもの裏通りだった。