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第九話
「上流階級? はぁ? わけわかんねぇ。で、俺はその言葉に従ってたわけ?」
「え、いや。その表向きは…」
 一応、逆らってたわけだ。
「そっか。ま、今日からよろしく…色々と教えてくれよな」
「……要くん…随分(ずいぶん)と…変わったね」
「まあね…、悪いけど鞄もってくれるか?」
「ああ、うん。いいよ」
 よし、これで鞄持ちゲット!(いや、もちろん冗談だけど)と内心喜んでいると、いきなり真横に大きな黒塗りの高級車が止まった。
「うわぁ…高そうな車」
 ちょっとだけ感動していると、後部座席の窓が開く。
「やぁ、船迫くんじゃないか。退院したんだね、おめでとう」
「……えっと。鳶沢(とびさわ)。こいつ誰?」
「こっ、こいつ?」
 ギラリと俺を(にら)みつけて名前も名乗らないそいつは、鳶沢と俺を交互に見た後、鼻で笑った。
「そんな態度でいいのかな? 船迫 要くん」
 名前のところをゆっくりと強調して言う。
 何となくいけ好かない奴。
「悪いけど、俺、記憶喪失でね。お前が誰なのかわからない」
「おやおや。それじゃあ僕の車に乗って行かないかい? 学校まで色々と教えてやるよ」
 こういう奴って本の中だけだと思ってたけど、本当にいるんだなぁ。一々腹が立つ奴。
 大人気ないけど、思わず言い返してしまう。
「っつーか。お前の車じゃなくて、お前の親の車だろうが」
 俺はそいつを見下ろす様に(車に乗っているから、自然とだけど)(にら)みつけた。
 睨むことなら得意だ。 
「なっ、何だって! これは僕専用で! 僕の…」
 一瞬怯んだあと、慌てたように言ったので最後まで言わせないように口を挟む。
「専用だろうが何だろうが、お前はまだ免許持ってないだろうが。だったらお前の車じゃない」
「要くん…やめた方が…」
 鳶沢が止めるのも聞かずに、俺は歩き出した。鼻で笑ってやるのを忘れずに。
 うん、ちょっと大人気ないかな? でも、まあ今は船迫 要なんでいいかと考えた。
「要くん!」
 鳶沢が慌てて追いかけてくる。
「いいの? 彼と争うと後で面倒だよ」
「あんな奴と一緒にいるほうが面倒だ。なぁ、鳶沢。もしかして、あんな奴ばっかりなのか? 学校は」
「え、ええと。そうでもないけど…」
 車が俺たちを追い越して行ったが、その瞬間に小さく「覚えてろよ」と聞こえた。


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